JUGEMテーマ:活字中毒〜読書記録〜
「異端のチェアマン 村井満、Jリーグ再建の真実」 宇都宮徹壱 著 集英社インターナショナル 発行 集英社 発売
2月12日に読み始め、2月23日に読了。
第5代チェアマンは異端の人だった。
どこが異端だったのか。
今までのチェアマンはサッカー界の中、あるいはクラブ関係者から選ばれていた。
だが村井チェアマンは元リクルートの重役というビジネス界の出身。
さらにいえば生粋の浦和レッズサポという初のサポーター出身のチェアマンということもできる。
その村井が最初に直面した難局が、レッズサポの起こした「JAPANESE ONLY」の問題というのは、この先の危機を暗示しているようでもある。
8年の任期の間に、危機的な状況が2度あった。
まず、就任直後の財政面での危機。
これは時代に逆行するような2ステージ制にすることで、一息つく。
ただサポーターの反発が大きかった。
この危機を救ったのがDAZNとの契約と言っていいだろう。
2ステージ制導入の直前のリーグの経常収益規模が120億円台。
2ステージ制の2シーズンはどちらも130億円台。
それがDAZN元年では270億円台に。
DAZNとの交渉では、村井がリクルートの香港法人の社長だった経験がいきた。
3期6年の任期を終えて勇退できるものと思っていた2020年、村井はもう1期2年チェアマンを続けることになる。
待っていたのはコロナという危機だった。
健康の問題と、クラブの財政の問題はまったなし。
どうすればリーグ戦を行えるのか。
ここでも村井は積極的に動く。
そして今まででは考えられなかった日本野球機構(NPB)との連携に踏み出す。
仲介の労を取った人物がいるが、それも村井という人物を当てにしてのことだった。
それにしても、任期中にまたも無観客試合を開催することになるとは。
大きな危機を2つ挙げたが、これ以外にもいろいろと問題はあった。
そういった問題は、村井が選んだ人物の手で解決が図られた。
リクルートの人事担当重役だった人物の目は確かだった。
著者の宇都宮徹壱の本は今まで何冊も読んでいる。
といってもJリーグ入りを目指す、あるいは地域に定着するサッカークラブを取り上げた「サッカー おくのほそ道」のような内容のものが多かった。
今回の本は著者の新しい試みと言えるのかもしれない。
さらにビジネス書的な読み方も可能だ。
本の腰巻きの岡田武史による推薦文も、サッカーと言うよりリーダーシップに焦点を当てたものになっている。
岡田も経営者だし、共感できるところも多かったのではないか。
また実際、先日閉店したと書いた書楽阿佐ヶ谷店でもビジネス書のコーナーに並んでいて驚いた覚えがある。
スポーツ本、サッカー本売り場ではなかった。
2023年、不祥事が続いた日本バドミントン協会は、新しい会長に村井満氏を選んでいる。
有事の村井という異名が着いてしまうかも。
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「頬に哀しみを刻め」 S・A・コスビー著 加賀山卓朗 訳 ハーパーBOOKS
2月11日に読み始め、2月17日に読了。
昨年「黒き荒野の果て」を読んだS・A・コスビーの日本での最新作にして、2024年版『このミス海外部門』の1位に輝いた犯罪小説。
主人公は、造園会社を経営する黒人のアイク。
舞台となるヴァージニア州リッチモンドでは、いまだ黒人への差別が見られる。
意識下の黒人への差別は前作でも見られたが、今回の作品ではさらにLGBTQプラスへの偏見も作品の中に取り込んでいる。
アイクのジャーナリストの息子と、白人のバディ・リーの息子のカップルが銃撃に遭い殺された。
父親二人には、警察が捜査に本腰を入れていないように感じられた。
さらに二人の墓が破壊されることまで起こってしまう。
警察に任せるつもりだったが、墓まで壊されたことで二人は捜査を、さらに復讐を開始することを決意する。
そうそう二人とも犯罪の履歴があり、特にアイクは、今では造園会社の経営者に収まっているものの、過去には殺人を犯したことまである。
基本的なストーリーは手に汗握り、二人の父親に感情移入もしてしまうほど読ませる。
ただストーリーを進める鍵となるある謎の真相が、私にはわりと早い段階で推測できてしまった。
詳しく書くとネタバレになってしまいそうなので、詳しくは書かないが、いろいろと難しいんだろうなとは思う。
こんなふうに読むこと自体が反則なのかもしれないという気もする。
他の方は気がつくのだろうか、ちょっと気になっている。
逆に、そうだったのか、やられたと思った箇所が2つある。
そう来るか。
トータルで見て、評価が別れる作品なのかなあという気がしている。
面白いのはもちろんだが、ちょっと引っかかるところがある。
昨年の『文春ミステリー』の1位である「卒業生には向かない真実」も評価が別れる小説だと思った。
ここ数年、ホロヴィッツ作品がずっと1位だったこともあるが、『このミス』と『文春ミステリー』は1位が同じ作品が続いていた。
昨年は久しぶりに別の作品になった。
どちらの作品も、一部の人にはあまり評価されない部分があるからではないかというのが私の勝手な推測だ。
原題は「Razorblade Tears」。
剃刀の刃の涙とでも訳すことができるだろうか。
刃にえぐられたような痛みが読む方に伝わってくる小説だった。
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「奇人と異才の中国史」 井波律子 著 岩波新書
2月7日に読み始め、2月11日に読了。
今年の1月末日に、JR中央線阿佐ヶ谷駅前にあった書店の書楽阿佐ヶ谷店が閉店した。
当初は1月8日に閉店と発表されていたが、その後ある交渉が進んでいて、1月末日の閉店と変更された。
ある交渉とは、同じ場所に書店が入る交渉であり、それは2月10日に同じ場所に八重洲ブックセンターが開店することが発表されて明らかとなった。
書楽は、今の部屋に引っ越してきてから2番めに多く利用した書店だった。
名残惜しく、1月31日にこの店を訪れた。
記念というわけではないものの、せっかくだから1冊なにか買おうとして選んだのが、この「奇人と異才の中国史」である。
なぜこの本を選んだか。
まず岩波書店の本は原則返品できないので、書楽の在庫を少しでも減らしたいと思い、岩波新書か岩波文庫から探そうとした。
そこで著者の名前を見て選んだのがこの本となる。
著者は中国文学者で著作や翻訳も多い。
2年半前には「水滸縦横談」という本を読んでいて、このブログでも取り上げた。
この人の訳した「水滸伝」をいつかは読みたいと思っているが、いまのところは老後の楽しみと考えているといったことを書いた。
さらにこの人の中国の歴史や歴史小説に関わるエッセイも読みたいと書いた。
やっとその言葉を実践することになった。
内容はというと、春秋時代から近代に至るまでの約2500年で、56人の異色の人材を年代順に取り上げるというもの。
人物でいえば、孔子から始まり魯迅までを取り上げている。
世界史の教科書に出てきた名前が多いが、56人もいると初めて聞く名前も多い。
読んでいて一番印象に残ったのは明代末の文章家・張岱(ちょうたい)だ。
生まれは現在の浙江省。
墓誌銘の文章を自ら考え、墓に刻んでいる。
その中の一説に『茶淫橘謔』とある。
解説では『お茶マニアの蜜柑狂い』と訳している。
この人は静岡県民かと思ってしまった。
そういえば静岡県は浙江省と友好提携の協定を結んでいる。
浙江省もお茶とみかんで知られる土地なのだろうか。
ともかくこの人物に親しみがわいた。
もう一人上げるなら、有名どころから唐代の詩人・白楽天だ。
枕草子でも引用されている『香炉峰の雪は簾をかかげて看る』の一節が有名だが、人物としては常識人であり気骨があった。
張岱が奇人代表、白楽天を異才代表とするのはやや乱暴すぎるか。
ここで題名に話は戻るのだが、「奇人」と「異才」は、先に「異才」が来て後に「奇人」が来る方が据わりがいいと思うのだが。
マイナスのイメージがある語より、プラスのイメージがある語を先にするほうが一般的ではないだろうか。
読んだ限りでは、奇人のほうが多いわけでもないように思うし。
あえてフックを効かせる語を頭に持ってきたのだろうか。
岩波新書っぽくない題名だと思った。
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「文庫版 塗仏の宴 宴の支度」 京極夏彦 著 講談社文庫
2月2日に読み始めて、2月10日に読了。
今年の前半は、毎月のように京極夏彦の『百鬼夜行』シリーズを読もうと思っている。
昨年のミステリランキングで、このシリーズの最新作「鵺の碑」が上位にランクインした。
そこでこの作品を読むことにしたが、最新作を読む前に、今まで読んでいないシリーズ作品を読もうといういつもながらの私の習性が頭をもたげた。
コンプリートしたがっちゃうんですよね。
ちなみに「鵺の碑」は、番外編的な作品を除けば、17年ぶりの新作で9作目の長篇にあたる。
でシリーズ6作目が今回読んだ「塗仏の宴」となる。
ややこしい話になるが、この長篇は「支度」と「始末」のいわば上下本に相当する構成となっている。
またノベルス版を文庫化するにあたって、正式な題名の前に「文庫版」という文字が入っている。
カバーを見る限り、ほかの文庫本にもすべて付いている。
今までの5作はノベルス版で読んでいたはずで、その題名には「ノベルス版」なんて入っていなかったのにと不思議に思った。
色々と考えた末に、こういった理由ではないかというものが見つかった。
京極作品は、一文はページをまたがないという著者独特のこだわりがある。
サイズの違う本として出しなおすと、このこだわりを維持するためには細かい修正・改稿がかなり必要になる。
そのために最初の版と違う大きさの本を出す場合、「文庫版」だったり、あるのかどうかわからないが「ノベルス版」という文字を入れているのではないだろうか。
でまず「宴の支度」だが、全部で6つの章にわかれていて、それぞれ化け物が章題になっている。
『ぬっぺらぼう』『うわん』『ひょうすべ』『わいら』『しょうけら』『おとろし』。
一応各章の前に化け物の絵のイラストがあるのだが、『ぬっぺらぼう(のっぺらぼう)』くらいしかピンとこない。
またこれはぜひ書いておきたいが、静岡県内が舞台になっていることが多かった。
主に伊豆や沼津など東部地方が多いが、富士山の出てくる言い伝え・民話なども登場する。
参考までに昭和28年のこと。
また章の頭とお終いにインタールードのような格好で、書き手と思われる人物の言葉が挿入されている。
まだ読んではいないものの「宴の始末」では、章の題名はなく、1から順に数字が割り振られている。
この構成の違いから、単に「上・下」とするのではなく「支度」と「始末」として分けたのかなと思った。
口に出して読むと、座りのいい対語になっているし。
さらに詳しい内容等は「宴の始末」の記事のときにまた改めてと思っている。
正直言って、長い長い小説で頭の整理ができていない。
「宴の支度」のノンブルは981まで振られている。
参考までに「宴の始末」は1000ページを越えている。
「宴の支度」では、約半分を東京ー鹿児島中央間の新幹線の車中で読んだ。
「宴の始末」では、東京ー熊本間でやはり半分くらい読むのではないかと思っている。
帰りは気分良く読めればこのブログでもいい内容の記事が書けそうだが、さてどうなりますか。
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「考えて、考えて、考える」 藤井聡太 丹羽宇一郎 著 講談社文庫
1月29日に読み始め、2月2日に読了。
2月8日、将棋の藤井聡太八冠が王将戦のタイトル防衛を果たし、タイトル戦20連覇という前人未到の偉業を達成した。
今までは58年前のもので、大山康晴十五世の19連覇が連続防衛の最多記録だった。
藤井七冠が八冠目を獲得すべくタイトル戦を戦っている最中に出たのが、ノーベル賞受賞者山中伸弥教授との対談本「前人未到」だった。
今回読んだ本は八冠獲得の2日後の奥付となっている「考えて、考えて、考える」だ。
「全人未踏」を読んだときにも書いたが、八冠獲得時に本が店頭に並ぶようなタイミングを図っていたのだろう。
今回も対談本で、相手は伊藤忠商事の元社長の丹羽宇一郎氏。
読書家としても知られ、著作も多い。
私も「死ぬほど読書」という幻冬舎新書の本を読んだ覚えがある。
詳しい内容までは覚えていないが、読み込んでいる人だなあと思った気がする。
これは蛇足だが、丹羽氏が社長になる前、セゾングループからファミリーマートを買収する直接の担当者だったことが書かれていた。
買収金額まで書かれていて、これを言っちゃっていいのかと心配してしまった。
丹羽氏は愛知県名古屋市出身で名古屋大学卒。
藤井八冠と共通点があるような、そうでもないような。
それでも一番歳の離れた友人と藤井八冠を呼んでいる。
この対談では、山中教授のときよりも話の引き出し方がうまいと思った。
全5章からなり、章題は以下の通り。
第1章 「強くなる」ために何をするか
第2章 「勝つこと」がいちばんじゃない
第3章 学びの本質
第4章 自主自立の生き方
第5章 AIとこれからの世界
一番印象に残っているのは第3章。
なぜかというと、私と藤井八冠とは得意な科目が同じだとわかったからだ。
中学の時は数学と地理、高校では数学と世界史。
さらにいえば鉄道好きなところも共通している。
私も将棋に打ち込んでいれば…
まあ、ありえないな。
最後に、読み込んでいくうちに藤井八冠の口ぐせのようなものが何度も目に残るようになった。
『〜だと思います。』となりそうなところが、『〜かなと思います。』となっていることが多かった。
そういえば、映像でもインタビューに答えるときはそんな語尾だったような気がしてきた。
全体的に印象を柔らかくすることで、やっかみの声を抑える効果があるのかなと思います。
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「一九八四年[新訳版]」 ジョージ・オーウェル著 高橋和久 訳 ハヤカワepi文庫
1月26日に読み始め、2月1日に読了。
「動物農場」と並ぶジョージ・オーウェルの代表作。
私がこの題名の本の存在を知ったのは、1984年、ある音楽雑誌を読んだときだった。
今年ジョージ・オーウェルの「1984」からインスパイヤーされたアルバムが出ると予想したが、それがヴァン・ヘイレンだとは思わなかった、といった内容だったと記憶している。
当時の私は「1984」も、ヴァン・ヘイレンも知らなかった。
その時から40年が経ち、別に40周年記念なんてな意味は全く持たせてはいないが、読むには頃合いかなと思って読んでみた。
なお以前ハヤカワ文庫NVで刊行されたときの題名は「1984年」で、この[新訳版]では題名の表記が漢数字となっている。
どういった意図があって変えたのかはよくわからない。
私の持っている48刷の本の腰巻き、それも裏側のものの文言をあげてみる。
『一九八四年』の舞台オセアニアの制度
歴史を改ざん、政治家の失言を議事録に記録しないなど政府に都合の悪い事実を消す真理省、
人々の言動をあらゆるところで監視するテレスクリーン、
言葉を単純化して反政府的な発言をしにくくさせるニュースピーク…
この本の中のオセアニアとは、世界の超大国のうちの一つ。
イギリスとアメリカ大陸が勢力圏。
ほかにヨーロッパが勢力圏のユーラシアと、東アジアが勢力圏のイースタシアという超大国がある。
歴史の改ざんや監視社会も怖いが、私が一番怖いと思ったのはニュースピークだ。
ニュースピークはオセアニアの公用語だが、もとからある単語の単純化、規則化を進めている。
不規則動詞も、原型+edが過去形と過去分詞形と規則化された。
形容詞や副詞の比較級・最上級も、good gooder goodestといったように全て+erと+estに統一される。
こういった規則化は何をもたらすのか。
思考自体の単純化、さらに硬直化をもたらすのではないだろうか。
これも一種の言葉狩りだと思った。
この小説が発表されたのが1949年。
テレスクリーンは、そのまま監視カメラと置き換えることができるだろう。
著者の先見性や想像力には驚かされる。
上でさらりと48刷であることを書いたが、刊行して13年がたち、平均して年3回以上増刷がかかっていることになる。
かなりのロングセラーと言っていいだろう。
この本を読むことのできる社会は、まだマシなのかとも考えさせられた。
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「馬場・猪木をもっと語ろう!」 小佐野景浩 二宮清純 著 廣済堂新書
1月22日に読み始め、1月28日に読了。
昨年の秋、アントニオ猪木の一周忌のタイミングで猪木関連の本が何点か出版されたといったことを書いた覚えがある。
この本も昨年11月の刊行で、そういった類の一冊だと言っていいだろう。
あまり深くは考えずに、『はじめに』を読んだ。
すると、この本は「昭和プロレスを語ろう!」の続編としての位置づけになるといったことが書かれていた。
先に読むべき本があった!
だから「もっと」が題名に付いているんだ。
私は、続編だけ読んでも面白いと言われる作品でも、前の作品を読んでからでないと気がすまないタチだというのに。
『はじめに』を読み始めたからには仕方ないと、今回は続編をまず読むことにした。
内容は、著者の二人の対談本。
二宮清純は、名の通ったスポーツライターといっていいだろう。
もう一人の小佐野景浩は知らなかった。
本のカバーにある略歴によると、元「週刊ゴング」の編集長だった。
もともとは猪木のファンだったようだが、記者としては全日本プロレス関係の取材が多かったようだ。
その意味では馬場も猪木も語れる人物と言っていいだろう。
またふたりとも私の5歳位上の年齢である。
この私との年齢差がなかなか絶妙で、初めて聞く話がバンバン出てきて大変興味深く読み進むことができた。
だいたい年代順の流れで、日本プロレス末期から新日・全日の設立までの流れがよく理解できた。
よく理解できたと書いたが、そこはプロレス的に闇に隠されたままのところもある。
本も終わりの方に来て、これは本当なのかと思わずにはいられない箇所があった。
おもてでは、馬場を挑発する猪木と、それを柳に風と流す馬場という図式が常に見られていた。
新日と全日という会社でいえば、選手の引き抜き合戦もあるライバル関係だ。
だが裏では弁護士立ち会いのもと協定を結んでいたという。
そんなことが本当にあったのか、この本を読んでもまだ信じられない。
馬場と猪木の形容は、対比の形となることがよくある。
保守的な馬場、革新的な猪木というのがよくあるイメージだろう。
この本では『規格外の馬場!想定外の猪木!』とカバーに書かれている。
ほかにも『信頼の馬場、疑心の猪木』も出てくる。
熟読すれば、ほかにいくらでも見つかりそうだ。
このわかりやすい対比があったから、プロレスは記憶に残るストーリーを生み出し続けたのではないだろうか。
天国の二人にカンパイ!
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「可燃物」 米澤穂信 著 文藝春秋
1月21日に読み始め、1月23日に読了。
2023年の国内ミステリで、3冠を獲得した短編集。
私が持っている2刷の本の腰巻きにも、大きく『3冠!』と書かれていてアピールしている。
オヤっと思ったのは、3冠のうち『このミス』が一番大きな文字で書かれていて、「週刊文春」「このミステリが読みたい!」がやや小さな扱いになっていること。
週刊文春は言うまでもなく文藝春秋から出ている週刊誌。
今までであれば、「週刊文春」が一番権威があるとばかりに大きな文字にし、「このミス」はもっと小さな扱いになっていたと思う。
身内ボメはやめようといったような流れがあったのだろうか。
内容はというと、群馬県警捜査一課の葛(かつら)警部が陣頭指揮を取って5つの事件を解決していく。
本自体のタイトルにもなっている短編「可燃物」は、群馬県太田市内で連続して放火事件が起こった。
ところがあるタイミングで放火は止まった。
なぜ止まったのか、それがわかれば犯人像が浮かぶはずだが。
葛警部は真相にたどり着けるのか。
この「可燃物」に限らず、どの短編も真相の意外性には唸らされた。
凶器や動機、さらに真犯人まで。
もちろんミステリなのだから意外性があるのは当たり前だが、こちらの予想を上回る意外性のものばかりだった。
また5編の題はすべて三文字で統一されている。
なにか理由があるのかなと考えてみた。
そういえばと思ったのは、昨年亡くなった原?描くところの探偵沢崎シリースのタイトルがすべて七文字だったこと。
さらに探偵沢崎同様、葛警部も下の名前が明かされていない。
勝手な想像だが、原?へのオマージュの意図があるのではないだろうか。
葛警部はパソコン画面に描かれている資料を、一度プリントアウトし、ペーパーで読むことを常にしている。
この方法でないと内容が頭に入ってこないという。
おお、私といっしょではないか。
融通の利かなさそうなこのキャラクターに親近感を覚えた私がいる。
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「GIFTED」小野伸二 著 幻冬舎
1月13日に読み始め、1月21日に読了。
昨年をもって選手生活にピリオドを打った天才・小野伸二の、自伝といっていいだろう。
読んだのは今年になってからだが、購入したのは昨年の12月17日。
この日を中村俊輔の引退試合があった日と記憶している人も多いだろう。
この試合にシンジも参加しているが、午前中は草薙陸上競技場で試合をしている。
第6回駿河屋サッカー教室の目玉として、シンジ率いるSHINJI FRIENDS vs ラモス瑠偉率いる SHIZUOKA AMIGOS の試合が行われたのだ。
そしてその会場の外でこの本を売るというアナウンスがあった。
それも特別なブックカバーだと。
その特別なカバーを本を買おうと思いでかけたところ、特別なカバーとはレッズとコンサドーレのユニをまとったシンジのカバーだった。
たぶん出版社の社員が出張販売に来ていたのではないかと思うが、最初に特別カバー分を渡された。
私は拒否して通常版のものを入手した。
販売の人は不思議がっていたが、出張販売に来るならエスパルスバージョンも作っておけよと心のなかで毒づいていた。
全体を通して読んで、素直に内容が受け入れることができた。
もちろんリライトをしているだろうが、いい内容だなと偉そうに思ってしまった。
いくつか印象に残っていることを書き連ねる。
1998フランスW杯のジャマイカ戦、股抜きの後左足でシュートを放った。
だがあの場面、左サイドで中山がフリーだった。
シンジもパスを出さなかったことを後悔したとこの本にある。
通常モードだと思っていたが、さすがのシンジもW杯初出場で視野が狭くなっていたようだ。
時は遡るが、清商3年時、当時の大滝監督はシンジがエスパルスに行くことに反対していたような記憶がある。
だがこの本では、言葉には出さないもののエスパルスに行ってほしかったようなことが書かれていた。
真相はどうなんだろう。
その清商時代、シンジは日本閣という旅館に下宿していた。
どうでもいい話だが、その主人の娘さんと私は高校の同級生。
後から知った話ではあるが、もっと仲良くしておくんだったと後悔した。
これも私の話だが、シンジのJ初ゴールも、大怪我を負ったフィリピン戦もどちらも生観戦している。
自慢というわけではないが、それだけ昔からシンジが好きだったということは改めて書いておきたい。
最後に、おうやっぱりか、と思ったところがある。
シンジは、自分にアシストがつくパスよりも、アシストのアシストのパスが好きだという。
これ、すんごく納得する。
非公式のアシストランクで、シンジは思ったよりアシストが多くないと思ったことがある。
なんでかなと思ってみてみると、アシストがつく選手へのパスが多いことがわかったのだ。
代表的なところでいえば、フェイエノールトのデビュー戦、オーバーラップした右SBエマートンへのパスがそれにあたる。
あのパスでいっきに信頼を得たに違いない。
あらためて、現役生活25年、お疲れ様でした。
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「暗殺者の屈辱(上・下)」 マーク・グリーニー著 伏見威蕃 訳 ハヤカワ文庫NV
1月7日に読み始め、1月20日に読了。
目立たない男『グレイマン』シリーズもこの作品で12作目。
今回戦う相手はロシア。
ロシア・ウクライナ戦争が起こったことと密接に関わっている展開となっている。
題名に使われている『屈辱』だが、これは渡してはいけないデータをロシアの諜報機関に奪われたことから来ているのだろう。
こんなことは今までの作品では書かれたことがなかった。
たしかに屈辱だ。
奪われた場所はカリブ海の島。
ここからグレイマンは、イタリアとスイスの間の鉄道トンネル内、さらにニューヨークとその周辺と、活躍の舞台を広げていく。
特に鉄道トンネル内のアクションシーンを、私は手に汗握って読み続けた。
訳者はこの場面から007シリーズの映画を連想したとある。
私は伊坂幸太郎の『殺し屋』シリーズの、「マリアビートル」を連想した。
といっても派手さは段違いだと思うけど。
下巻の腰巻きに『シリーズの転換点となる傑作』とある。
転換点ということは、シリーズはまだ続くんだ。
なぜこんなことを書いたかというと、この作品でシリーズが完結してもおかしくないエンディングだと思ったからだ。
ではこの先はどんな展開が予想できるだろうか。
やはり今後は対ロシアを中心にシリーズは動いていくのではないだろうか。
そうなるとグレイマンの『恋人』、ロシア人のゾーヤがどう関わってくるのかを想像するのもなかな興味深い。
一作おきにシリーズに登場しているが、今後はグレイマンとペアで出続けるのではないかと予想する。
ただゾーヤは美女という設定なので、目立たないグレイマンと表舞台で行動をともにするのは難しいかもしれない。
作者のお手並み拝見といったところだ。
それにしてもグレイマンはモテる。
前作を読んだときも、グレイマンがモテるという設定はおかしいのではないかということを書いたが、今回もまた書かせてもらう。
この作品では、ゾーヤとCIAの職員の女性との間で見えない火花が散った場面があった。
まあある意味スリリングではあったけど。
グレイマンとゾーヤ、グレイマンとCIA、さらにゾーヤとロシアの諜報機関との関係はどうなっていくのか。
確かに振り返ってみれば、この作品が転換点だったと言えるようになる要素は多いといえるだろう。
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