ポストペットを生み出した「ペットワークス」の代表でもある八谷和彦が、《視聴覚交換マシン》や《OpenSky》など、夢を形にするメディアアーティストとして語る、モノをつくる喜びとは?
メディアアーティスト八谷和彦
ものを作る喜びは、見てくれる人の面白い反応
JUGEMスタッフ - まず、八谷さんはメディアアーティストとして様々な作品を発表されていますが、「メディアアート」というのはどういうものなのでしょうか?
八谷和彦 - 「メディアアート」とは、コンピュータやエレクトロニクス技術を使った美術表現のことを言います。日本だと岩井俊雄さんが有名なメディアアーティストですね。
JUGEMスタッフ - 八谷さんが、何かを作るときに感じる喜びとは?
八谷和彦 - お客さんの面白い反応をみた時の喜びは大きいですね。自分が作っている最中は、何となくこういう反応がくるんだろうなと思いながら作るんですが、実際にお客さんの前に出すと全く違う反応が帰ってきたりして、予想外の展開がすごく面白いんです。
たとえば視聴覚交換マシンは、実際相手の立場に立ってみることが、どんなに大変なことなのかを体験してほしくてつくったんですね。この装置を公開した展覧会で、そのときは作品体験費としてお客さんから100円いただいていたんですが、「キスをしたら無料」としたんです。そうしたら、結構たくさんの人がキスをしてくれました。男同士とかでも。そのときに付き合って1年以上たつ一組のカップルが、視聴覚交換マシンをつけてキスをしてくれた後、ぼくに「今日はじめて本当にキスをした気がする」って言ってくれたんです。確かに鏡なんかで、自分がキスしている姿を見る感覚とは違う。ぼくは自分の作品である種「特殊な体験」をしてもらいたいと思っているから、そういう反応がかえってきてすごくうれしかったですね。
※視聴覚交換マシン
お互いに見ているもの聴いているものを交換する装置。相手の視点でものがみえ、相手が自分になり、自分が相手になるというコンセプトのもとにつくられた。‘93マルチメディアグランプリ展示映像部門奨励賞 The Prix ArsElectronlca96インタラクティブアート入選作品
あとは、作ってみて初めて味わえる、予想外の「楽しみ」とか「喜び」があります。
ポストペットを作った時、好きな人にメールを送りたくなるように、好きな人への手紙に貼るかわいい切手をイメージして作ったんです。実際作り上げたものをテストしていたら、メールを送った相手先でペットがウンチして帰ってきて笑いましたね。もちろんたくさん食べ物をあげるとウンチをするっていうプログラムは組み込んでいたんですが、向こうについてすぐにしてしまうというのは想定してなかったので、とても驚いた記憶があります。
※PostPet(ポストペット)
かわいらしいペットがメールを配達してくれる電子メールソフト。メールを送るだけでなく、ペットの育成、コミュニケーションができることで爆発的ヒット商品となった。キャラクターのモモはいまやwebを飛び出し、さまざまな商品とコラボレーションしている。
予想外の喜びは、つくっている段階でも味わえますよ。たとえばM-02の場合すごく乗りこなすのが大変そうだと思ってたんですけど、いざ乗ってみると、案外素直な動きをするんですよね。思ったより操縦が簡単だったので驚きました。体重移動で操縦するので、「おれが飛行機を飛ばしてるんだ!」って感覚が味わえてすごく面白かったです。
アートに関わらず、やっぱり何でも実際にやってみなきゃわからないことってありますよね。
※OpenSky
『風の谷のナウシカ』の”メーヴェ”をモチーフに個人的に飛行装置を作るプロジェクトとして発足。ついに先日公開フライトを達成し、今回のH.U.G.vol.4では実物が展示される。