JUGEMテーマ:連載
――いつまでこんなことやってるんだろう……。
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
毎日毎日残業で終電で帰って始発で出勤している。デスクの下には寝袋もある。終わらない仕事、終わるはずのない仕事量。いったいなんのためにここまで働いているんだ? 誰かのために生きているわけじゃない。俺には恋人すらいない。そう、これはたまにやってくるんだ。
キーボードを打つ手を止めて時計を見上げる。終電まであと一時間。もう少しやるか? でもなんのために?
褒められたいわけじゃない。ただ終わらないのだ。終わるはずがないのだ。誰もいないオフィス。俺は引き出しからビスケットを取って食べた。空腹は吐き気へと変わっていた。今日も昼飯は食えなかった。ビスケットをとうに冷めたコーヒーで流し込むとため息をついた。
もう、死んじゃおうかな。
俺はかぶりを振ってパソコンを片づけて戸締りをしてから帰路へとついた。明日は休みだ。結局仕事は終わらなかった。休日出勤するようか? でも今月はもう休みを五日仕事で潰している。できればゆっくりしたい。
終電前に帰るのは何ヶ月ぶりだろうか。たまには一杯引っ掛けて帰ろうか。いや、そんな気力もない。俺はなにも考えずに電車に乗り、なにも考えずに座り、なにも考えずに降りる駅を過ごした。
いつの間にか寝ていたようだ。電車は折り返してまた降りる駅に着いていた。駅を出ると俺はその場で立ち止まった。
――なんでここにいるんだろう。
なんでって、家に帰るためじゃないか。なにもおかしいことはない。そうだ、大丈夫だ。なにも問題はない。
歩き出そうとしたとき、目の前のホルモン焼き屋から女性が飛び出てきた。俺の行きつけだ。黒髪を肩のあたりで切りそろえて、パンツスーツの格好だった。彼女も仕事終わりなのだろうか。その女性の背中からは怒鳴り声が聞こえる。声はすぐに彼女のそばまで来て彼女をひっ捕らえた。そこで声の主が店主だと気がついた。
「大江さん、どうしたんですか」
「おう、千葉君か。いや、この女、無銭飲食しやがってよ、これから警察に突き出すところなんだよ」
「……無銭飲食なんてきょうび聞かないですね」
店主と話していると、その女性は必死な声で私は無銭飲食なんてしていない、と言った。
「と、言うと?」
俺は彼女に訊いた。
「ほら、金ならります! いくらでもあります!」
そう言って見せてきたのは見たことのない紙切れとメダルのようなものだった。
「だからウチはゲーセンじゃねえんだぞ! ふざけんな!」
「ふざけてなんかいません! これを見たことはないのですか?」
――え、もしかして、彼女は……。いや、まさかな。アニメの見過ぎか。でも、あの日本人離れした、というよりどこの国にいるのかわからない透き通ったグリーンの瞳、切れ長の目、全体的に端正で、うん、そう、美人だ。歳は二十代前半といったところだろうか。だとすれば俺とは十歳くらい離れている。
店主と彼女のやり取りを聞いていると、だんだんとぼうっとしてきて、意識が薄らいでいった。もう帰ろう。
そこまでが俺の最後の記憶だった。
スマホのアラームで目が覚めた。目を開けてゆっくりと周りを見る。散らかった部屋。昨日の服は脱ぎ捨てられていて、俺は全裸だった。よっぽど疲れていたんだな。でも今日は久しぶりに熟睡できた。目覚めもいい。いい一日になりそう……と、そこまで考えて俺は青ざめた。
俺の横で昨日の美女が寝ていたからだ。しかも全裸で。
お持ち帰りしちゃったのか? いいや、待て待て。思い出せ、昨日の俺出てこい!
頭を抱えていると彼女が起きた。
「おはようございます、早いんですねえ」
「お、おはよう……」
「いやあ、昨日はありがとうございました。助かりましたよ」
「昨日……え?」
「え、って、昨日あっちのお金が使えなかった私の代わりに払ってくれたじゃないですか。私もびっくりしましたよ、本当にあるんですねえ、異世界転生って。でも私の能力はそのまま残ってるから――」
「は? え、君は?」
「はい。私はミサイルマンです!千葉さん、このご恩は忘れません!」
異世界転生? ミサイルマン? なんの冗談だ……。
]]>それにしても、今日も良いお天気、ここ最近雨が降っていないので水不足にならなきゃ良いけどと
ちょっと馬鹿なことを考えながら、連絡通路を渡り本館のロビーに着いた。
そこでは先生が生徒を並ばせ、遅れていない生徒が居ないか確認していた。
私はロビーのソファに座るとテレビのニュースを見ていた。
たまに彼らの様子を見ていたが、これから大都会に帰る事をだるいと思っている生徒が多いようだ。
「カオリちゃん、ようやく静かに寝れるわね」
見送りのために居た仲居のユリさんがうんざりした様子で言った。
どうやら、彼らがうるさくてあまり眠れなかったようだ。私は苦笑いをしながらも今日からはゆっくり眠れますよといった。
今日で団体客はしばらく予約はないので平和な日々が戻ってくる。ようやく平和な日々が戻ってくるのだから嬉しい。
さらに私の場合、あの会うのも嫌な人と離れることができる。私にとってはそれのほうが大きい。
旅館の支配人でもあるお父さんに感謝の言葉とお礼を生徒達が儀礼的に述べると旅館から出て行き始めた。
旅館の傍を走っている道路にはバスが止まっていてそれに乗り始めた
仲居さんたちは見送りのため生徒達と共にバスの傍まで行き、手を振っている。
私も彼らと同じような行動をしたが後ろのほうにいた。
少しずつバスが走り出し、バスが見えなくなるまで見送ると仲居さんたちにお母さんが言った
「さあ、片づけをしましょう。それが終わったら今日はもうお休みよ」
今日は予約客が入っていないため、これでお仕事は終わり。
ただ後片付けが今回のお客は大変だろうというのは大体予想していたことだが。
実際に部屋の後片付けだけで一日をつぶす事になるとはこのとき誰も予想はしていなかった。
私も布団干しを手伝っていたが、忘れ物がかなりあったので後で宅急便で届けないとお母さんが言っていた。
布団干しも楽ではなくかなりの枚数があったので干せる場所を探すのが大変なほどであった。
いつもは草花とネコ達の楽園も今日は布団がいっぱいあり、大人のねこたちは草花と戯れるのではなく、今日は海から吹く風で揺れる布団に背伸びして、布団を掴もうとがんばっていた。
草花達も布団のせいで今日は満足に太陽が当たることはないだろうが、子猫さんたちと戯れていた。
ねこじゃらしはやんちゃな子猫の相手に忙しそうだ。
子猫はなんとかして猫じゃらしを捕まえようとするが、風でゆらゆらと揺れるのを捕まえるのは難しいようだ。
あと何年かして大きくなればねこじゃらしに届くようになるだろうが
こんな和やかな雰囲気もあのときには体験できなかったものだろう。
私には使徒とエヴァと自分のことで精一杯だった。それ以外何も考えることはできなかった
それが今では、子猫と戯れたり他人の事も考えられるくらい余裕ができた。
ただ、今でもあの時、あの場所での惨劇は忘れることは永久にないだろう。
通路の一面にこびりついた血と死体の山。
おびただしい数の人の亡骸に自分は恐怖に陥り暴走、挙句の果てにサードインパクトをおこすという史上最大の犯罪者。
誰も真実を知る者は居ないだろう。なぜ死人が蘇ったのか。なぜサードインパクトが起こったのに、人は滅びなかったのか
そして、最近の気象観測で地軸が戻りつつあることがわかったそうだ。
セカンドインパクトによって地軸が大幅にずれ、日本は1年中夏真っ盛りになったが、来年か再来年にも季節が訪れるそうだ。
人々にとっては祝福すべき出来事。セカンドインパクトによって地軸が大幅にずれた。
日本は1年中夏であったがずれが解消することによって、作物などさまざまな面で大きな影響があるだろう。
そして、動物達にとっても再び住みやすい事になるだろう。
セカンドインパクトによる急激な気象変動によって多くの生物が死滅したが、
最近になって絶滅動物達が戻っているを確認したと。そういう明るいニュースが多い今年はきっと良いことがあるのだろう。
ただ、ひとつだけ、心配事がある
「それにしても、お天気続きで本当に水不足になるかも。タンクの掃除、やったほうがいいかな」
ここ最近天気が良い日が続きっぱなし。雨があまりというかほとんど降っていなかった。
「それは大丈夫でしょ。明日から天気は悪くなるって」
「そう、なら安全ね。早く出てきたらどうですか。ルミナさん」
建物の陰に隠れる場所から一人の女性が出てきた。髪は背中の中ほどまで伸ばし自分と同じように髪が白銀色で紫の瞳をしている
私と同時期に発見されたらしい。ちなみに近所にある小さな家で一人暮らしをしている。
なぜか彼女を自分は知っている気がする。どこかで彼女といたような気が。でもどこで会ったかは思い出せなかった。
彼女に聞いても彼女の答えはいつも同じ
『私はあなたを知っている。あなたは私を知っている。でもあなたは覚めていないからわからない』
そう答えるだけだ
その意味は分からない。でも彼女は言うように私は知っているのかもしれないが思い出していないのであろう
実際、あのときの事もすべてを覚えているわけではない。一部記憶が飛んでいるところもあるのも事実だ
赤い世界に失われた命、そのとき誰かが私の傍にいたように暖かかった。でもそれが誰だったのか。
そして本当にそこに誰かいたのかすら分からない
事実を知る者は私しかいないのだから誰も知らないのだ。
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太陽はそろそろ夕暮れ時、これでようやく平和な日々が訪れる事になるだろう。
今日は予約客が居ないので仲居さんや板前さんたちと楽しくパーティーなのだが、自分は参加はしないことにした。
夜から写真家の男性と少しデート、というか近くの町まで送ってもらって買い物をすることにした。
いつもなら他にも誰か一緒に行くのだが、みんな楽しく盛り上がれるように自分だけで行く事にした。
もっとも、2人で行くのがこれが最初というわけではないので慣れている
行きは写真家の男性が運転をして、帰りは私が運転をする。私も普通免許を取得済みなので問題はない。
ちなみに行き先は第3東京市。そこで必要な日用雑貨等をまとめて買ってくるので結構な量になるし、金額にもなる。
そのため、私が今回大金をあずかることになった。はっきり言って気分は最悪である。
あの街に行くのは嫌いだが、この町から一番近いのは第3新東京市であることは事実だ
「そろそろ、第3に行ってくるね」
ロビーで一応受け付け業務をしている父に言うと、封筒を渡してくれた。
中身はお金と買ってくるもののリストである。
ちょっと今日は厚みが大きいような気がするが、今は気にしないでおこう。
封筒を受け取ると私は旅館の外に出た。空には重そうな雲が漂っていた。
どうやら、昼間にあった彼女の言うとおり雨が降るようだ
道路にはすでに写真家の彼の車が止まっていてこちらに手を振ってくれていた。
「今行きます」
私はそう言うと彼の車に駆け寄り、ドアを開けて助手席に乗込んだ。
4WDの車で4人乗りだが、乗り心地は、あえて言わないでおこう
車はゆっくりと走り出したが振動が・・・・。慣れればそうでもないが慣れていない人にはちょっときつい。
おまけに今日は雨だ。暗い中車1台で走るのは肝試しとさして変わらないだろう。
海沿いの外灯もない道を走り、しばらくすると風景は一転する。今度は山道になる。
いくつもの峠がありそれを通過するため4WDのほうがいいのだ。
また一部整備が遅れていて舗装されていないところもあり、この雨でその場所はぬかるんでいるだろう。ちょうど良かった。
「眠っていても良いよ。帰り、つらいよ」
男性が運転をしながら私を気にかけてくれた。
つらいのは分かっているが、こんな振動がきつければそう簡単には寝れないのも事実だ
外は真っ暗。これでドラマのワンシーンでよくあるような駆け落ちした二人のように見えないこともない。
ただ、今この車にはそんな甘い雰囲気はないが。
愛の逃避行なら最も明るいうちにしたいものだ。こんな暗ければ甘い空気にもなれない。
私はため息をつきイスを少し倒すと眠ろうとした。この車に何度か乗っているし寝つきはいいほうなので大丈夫だろう
人は忘れる事ができる便利の良い生き物。記憶を消す事はできなくても忘れる事はできる。
私には世界中のすべてがインチキに見えるときがある。
ネルフの偽装、政府の偽装、そして世界の偽装。すべてが偽りだらけの世界に真実はあるのか。
マスコミですら偽りの事実に翻弄され、そして世界の人々も偽りの事実に翻弄されているのだ。
本当の意味での偽装のない情報など、この世界には存在しないのかもしれない。
もしそうならこの世界は偽装された情報に翻弄されている
わたしもその一人なのかもしれない。
だって、偽りの世界の中に居るのだから
JUGEMテーマ:連載
]]>翌日、今日も朝から天気は良好で私の部屋に廊下から朝日が差し込んできた。
私は昨日と同じように起きると、近くにある上着を着て部屋を出た。
今日は少し霧が出ていて白い煙が漂っているように見える。さらにそこに太陽の光が当たり幻想的に見えた。
別館を出ると別館と本館の間にある庭に出た。
別館と本館は一応屋根のある通路でつながっていて、その通路の両脇はきれいな花が植えられた庭があった
庭にでると花壇にある猫じゃらしと遊んでいるネコを見つけた。ネコに近づくと逃げると思ったが、逆に私に擦り寄ってきた。
ちなみにこのネコはお母さんが可愛がっているネコで庭の中にはまだ数匹いるだろうが、今私が見る限りこの1匹しかない
私はそのネコを抱っこすると、この子に言った
「一緒に朝ごはんを食べにいこうっか」
するとこのネコは私の言葉が分かったのか、にゃーと鳴き声で返事を返してきた。
私は他のお客さんに迷惑がないように本館を通らないで事務室の裏口に行くと、
その部屋にある棚の置いてあるキャットフードを一つとって缶きりでそれを開けた。
小皿にそれを盛り付けてネコの前に出してあげた。ネコは嬉しそうにそれを食べていた。
私はそれを事務所にあるイスに座りながらのんびりと見て、過ごしていた。
「こういう朝も、いいね」
ちょっとした朝の出来事。それは私にとって綺麗なものだった。
「カオリ、今日の朝食をもってきたよ」
私がネコばかり見ていたのでここに誰は入ってきた事に全然気づかなかった。
驚いて声のするほうに振り返ると、お母さんがお盆にここの朝食の定番メニューであるご飯に味噌汁に卵焼きがあった。
どうしてお母さんに、私がここにいるのが分かったのと聞くとここに入るのを見かけたからよと言われた。
お母さんはそれを机の上に置くと、私の額を触って熱はないわねと真剣な表情で言った
私はあまりのお母さんの心配ように少し苦笑いをしながら大丈夫だよと返した。
一方、一人食事をしているネコさんにつられたのか他のネコさんもここに集まってきた。
私はネコさんたちがえさの取り合いをしないように自分のご飯を食べる前に他のネコさんの分の朝食を用意するとお母さんが
「まるでお母さんね」
そう温かく微笑みながら言った。ネコたちは仲良くえさを食べていた。
彼らはみんな仲良し。けんかをして、時には仲が悪くなる事もあるが、最後はみんな仲直り。
それは小さな子供達と同じ。最後は結局仲直り。私にも彼らとそうありたいがもはや叶わぬこと
すでに人ではない私にそんな事はもはや叶わないし、すでに彼らとは年齢が違う。
お母さんとお父さんとこの場所が平和であり続けるならば今の私にとって他の事はどうでも良い。今この場所だけ
「ねぇ、お母さん」
「なに」
「もし私がこの世界の敵になったら、お母さんはどうする」
私がそんな突拍子もない質問をするとお母さんは驚きの表情を浮かべるが、質問に答える前に私を後ろから抱きしめた
お母さんは何も答えなかったが今の態度でどんな答えだったのか分かった。
きっと、私がどんなに世界の敵になっても、私のことを娘だと思ってくれるという答えを
「それじゃ、私はこれで仕事に戻るけど、カオリ、ちゃんと体調管理しないとだめよ」
お母さんの出て行く前の何気ない一言でも今の自分には最高の言葉に感じる
私はネコさんたちが食べた後の食器を事務所に設置されている簡易キッチンで洗って食器乾燥器に入れた。
今度は自分の食べた後の食器を持って事務所の裏口から出ると、厨房の裏口の置けて食器をおじさんに返した。
今日もいつものようにおいしかったよと言うとおじさんはまたぶっきら棒にそうかと返事をした。
さらに体調には気をつけろと私に言葉をかけてくれた。私はお辞儀をして裏口から出て行った。
私は砂浜には行かないで一日旅館で過ごそうと思った。
たまにはそういう日もいいだろうと言う思いもあったが、彼らに会いたくなかったという理由もあった。
部屋に帰っても特にすることがない自分は久々に部屋の荷物整理でもしようと思い立ち、部屋に出ている小物を整理しだした
ちなみに、私の部屋は部屋がふたつあって、旅館の部屋なので(一応)玄関から直線状に部屋は作られている
玄関から入ってすぐの部屋は少し小さいが奥の部屋はその部屋より広い部屋になっている。
さらにいえば、奥の部屋にあるベランダのような場所からは海が一望できる。
もちろん、ベランダは西向きにあるので、太陽日没時はきれいな光景が見れる。
お客さんはたいてい本館だけなのでこの別館の良さは知らない。別館の2階と1階の私の部屋は職員専用の部屋となっている。
今日は元気いっぱいの高校生が別館の大広間などにいるのでいつもよりうるさい。
私はうるさい彼らに悪態をつきながら部屋の片づけを続けると、本の束一冊のアルバムを見つけた。
これは私がここに来たときに貰ったものでここでの思い出の写真や
写真家の男性があの展望台や砂浜で撮り、私にくれた写真が収められている。
私はその写真の一枚一枚をゆっくりと見ていた。私が笑っているときに撮られた写真はあまりない。
基本的に呼ばれて振り返ったときに撮られた写真が多い
別に笑えないとかそういうことではないが、なぜか笑う気がないのだ。
だから、ここに勤めているみんなで写真をとったものも私は表情は硬い。
あるページで多くの人が集団で写っている写真があった。これを撮ったころはまだ私がここに来て間もない頃だった。
お母さんが記念撮影をしましょうと言い出したのが発端だ。
最初はお父さんは嫌がったがお母さんの勢いに負けてしぶしぶ写真に写っている。
私は写真のちょうど真ん中に写っていて、後ろから私と仲が良い仲居さんが抱き着いている
お母さんとお父さんは私の両脇に居て、あとはばらばらだが、それぞれピースをしていたり自分なりに写っている
その写真以来、この旅館を利用した人に、旅館のどこかで記念撮影をしてもらうというサービスが誕生した。
もちろん、このサービスを考えたのがお母さんであったのことは言うまでもない
部屋の片づけを中断してそのアルバムに魅入られたように見た。
しばらくアルバムをめくっていると、夕日に包まれて私が砂浜に座っている時の写真があった。
これはあの写真家の男性が私にはじめてあったときに撮ったものだ。
彼曰く、ここには世界の美しさが写っているという事だが、私は別にそんな事は思わなかった。
その隣の写真には、仲の良い仲居さんである林ユリさんと私、それと猫の親子が写っている
これはお母さんが飼っているというか旅館に住んでいる猫が子供を出産したのを記念してお母さんが撮った写真、
ちなみにお母さんと私と猫の親子が写っている写真もある。一つ一つに思い出がたくさん詰まったアルバム
それをきれいに本棚に片付けると室内に設置されている小さな冷蔵庫にあるコーヒーをとり、海を見ながら飲んだ。
そのコーヒーはいつもは少し苦いと思うコーヒーの味が今日はさらに苦いように感じられた。
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ここにはじめて来たときは、私はおびえた子ウサギのように仲居さんともあまり話さず無口な女の子だった。
ただ、一人の仲居さんが私に積極的に話してきた。彼女の名前は林ユリ。私がもっとも仲の良い仲居さんだ。
最初は無視していたがそれでも話しかけてきた。私は一度どうしてそんなに私に話しかけるのと聞いた。
すると、彼女は私はあなたと友達になりたいだけと。
どうしてそうなりたいのかと聞くと彼女は分からないけどただ友達になりたいだけだと返すだけだった。
少しずつ、彼女と話すようになり私は心を開いていった。信用しても大丈夫だと思ったから。
ここの人たちは優しかった。自分があれだけ無視し続けたのに私が話しかけるときちんと言葉を返してくれる。
それに元気になったねとおまけ付で。今では、楽しく会話ができるまでになり、暇なときにはよくおしゃべりをしている。
そんな過去のことを思い出しながら歩くと、すぐにロビーに着いたように感じた。
ロビーには誰も居らず皆彼らの相手に忙しいのであろう。
私は一人食堂に向かおうとしたとき、ロビーのソファーでゆっくりと眠っている少女を見つけた。
彼女はもう少しで食事の時間が終わるである事を知らないのであろうし、友達も呼びに来る気配はない。
私はため息をつくと、女の子に近づいた。いくら、この季節が夏だとしてもこのロビーには冷房がかかっている。
こんなところで寝ていれば風邪を引くのは目に見えている。
幸せそうに眠っている彼女を起こすのは起こすのも少々気が引けたが、肩を軽く揺さぶっておこした。
彼女はまだ眠いのか少し眠たそうな目でで私を見た。
どうやら、まだ自分がどうなっているのか理解していないようだったので私は彼女に晩御飯を食べそこねたようだねと言った。
するとようやく、今自分のいる状況と今の時間を大体予想しショックを受けたような顔をした。
どうやら、今日は彼女にとって嬉しい晩御飯だったみたいだ。
私は食堂で少し食べる?と聞くと彼女は頷き、彼女と食堂に向かった。
食堂にはいつものおじさんがようやく一段落したのかイスに座り新聞を読んでいた。
他の厨房の人も同じく自分達のご飯を食べている人もいればゆっくりとテレビを見ている人もいた
私が食堂に顔を出したのに気づくとおじさんは今日は上の連中とメニューは一緒だぞと言い、カウンターを指差した。
そこにはすでに料理が出されていた。私はその料理の量を見てある意味ショックを受けた。
いつもの1.5倍はある。これを全部食べさせるつもりだったのかと思うと今この少女がいたことにものすごく感謝をしている。
あんな量、小食の私が食べれる量じゃないことは彼だって十分わかってはずだ。
どうせ、多く作りすぎたからとりあえずまとめて入れたといったところであろうか。
とりあえず、私は女の子と席に着くとおじさんがそいつはどうしたんだと聞いてきた。
まあ、今頃上でわいわいしているはずの生徒が私と一緒にいたらここに勤めている人から見たら驚くべきことなのであろう。
他人に興味を示さないという事で通っている私が何にも知らない女の子と一緒にいるのだから。
私は、居眠りしてて食べ損ねただけよと事実をそのまま言うと女の子は顔を真っ赤に染めた
恥ずかしいのは当たり前だが、事実を言ったほうが早い。おじさんはそいつはまた珍しいなと言い新聞を再び読み始めた。
私は女の子と一緒に豪華な夕飯を食べ始めた。もちろん、このあたりのことについて聞いてくる女の子の質問を聞きながら。
いつもとは違う楽しい会話をしながらの夕飯になった
食べている途中で空の上にはきれいな月が丸く出ていた。私はそれをみて、普通の人では絶対に言わない呼び方をするときがある
『赤い月』
私がいた頃は月は赤かった。月のすべてが赤かったということはなかったが、赤い色のある月。だから『赤い月』
月の光がこの食堂にも入ってきていて、穏やかな海には月が映っている。
それは美しく神秘的な光景だろう。人を魅了する月。ルナティック
月が人を狂わす、西洋では月が人間を狂気に引き込むと言われた。そう言われている月も穏やかなものだ。
そんな事をぼんやりと思いながら食事を済ませると、彼女を旅館の部屋まで送ることにした。
もう彼女がいなくなったことには気づいているだろうし、事情を説明したほうがいいだろう。
「送っていくよ。みんな、心配しているだろうし」
私がそう言うと彼女は恥ずかしそうにありがとうございますと言った。
彼女と共に本館の廊下を歩いているとおそらく先生であろう女性が彼女の姿を見て駆け寄ってきた。
どこに行ってたの、みんな心配してるわよと少し叱るように話した。
私は女性に、1人でロビーで寝ていて晩御飯を食べ損ねたので私と一緒に食べていたんですと事情を話した。
彼女はそうなんですかと納得してくれた。女性にあとをお願いしますというとその場を離れようとしたとき女の子が言った
「あの、あなたのお名前は」
そういえば、言っていなかった事に気づき言った
「水川、水川カオリ、ちなみに18歳だから」
自分のことを名乗ると本館を後にようと別館への連絡通路の方向に歩き出した。
いつもと違って少しうるさい通路、高校生達が騒いでいたのだろう。先生が説教をしている声が聞こえた。
こんなに平和な世界もあのときには想像もつかなかった。
そして、連絡通路にもう少しというところで後ろから声をかけられた。
「水川さん、すこしお話をしませんか?」
この言葉、いや、この声の主は私が大嫌い人のものだ。私はすぐに分かった。
無視をしても良いがここで下手に疑われたくはない。了承の言葉を出すと本館と別館の間にある庭のほうに歩き出した。
別にどこでも良いが誰もいないとはっきりと分かる場所で話したかった。
どうせ、彼が聞きたいことは大体想像できた。なぜ、自分がこんな容姿をしているのか、もしかしたら・・・
私たちがその場所に着くと彼は話を切り出し始めた
「あなたは、どうしてそんな容姿をしているんですか?」
「そんな事を知らないわ。私がこんな容姿になったかなんて、海で救出されたときにはもうこんな容姿だったそうよ」
別にそう答えれば誰もが疑う事はなかったが、これがいろいろと知っている彼ならば話は別だ。
彼は知っているのだから、この容姿の本当の意味を
「そうですか」
「それだけなら、私はもう戻るから」
そう言うと私はその場から立ち去ろうとしたが彼は私に言った。碇シンジという名に何か心当たりはありませんかと。
私は振り返り、そんなに名前に聞き覚えはないわと答え私はその場を後にした
自分はもう『知らないのだ』
彼がいたことも、かつて使徒が存在していた事も。
自分はもうあの街の人間ではないのだから
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「う・・・ぅん」
今何時なんだろうか。自分は太陽の夕日が部屋に差し込んできたので目が覚めた
この部屋はほぼ真南に海が一望できる窓があり、そこからも夕日が良く見えるが、砂浜からの夕日のほうが美しく見える
私は完全に目が覚めると机の上においてあるお母さんのメッセージを見つけた。
そこには、目が覚めて夕日が綺麗だったら私が散歩に行くであろう事を予想してかかれたものであった
お母さんは抜け目なく、部屋にはきちんと懐中電灯が置いてあり、遅くならないように帰ってくるようにと書いてあった
自分の行動がもう完全に予想されている事に苦笑いをしながら、私はお母さんへのメッセージを別の紙に書いた。
それを机の上に置くとその懐中電灯を手にもち、部屋を後にした
別館の廊下を歩いていると何人かの生徒に会い、私のことを見て驚いた顔をする人などがいた。
しかし、一切気にせず旅館をでると、また海沿いの道を歩いていった。
海岸まで家からだいたい10分ほど、それほど遠くない。
道にはきちんと歩道が整備されていて車線は2つあるが、この時間はほとんど車の通行はないし、
誰かに会うとすれば海に遊びに行っていた生徒や自宅に帰る小学生ぐらいだ。私は誰も気にせず、ただ砂浜に歩いていく。
ちょうど良い時間なのか砂浜が一面太陽の光の色に染まり、そこは一枚の絵画を見ているようだった。
だれもいない、ただ時が止まった世界。
私たちすべての生物の母の海、それらが綺麗に太陽色に染まった世界、私にはその一瞬を見ることが楽しみだった。
道路から砂浜に降りると、写真家の男性がこの風景を写真におさめていた。
何かが足りないのであろうか、また撮り直していた。
私には何となくだがわかったように感じた。彼が撮っている写真に足りないものが。
でもそれが何かを言葉で表現する事はできなかった。
言葉では表現する事はできないこの風景の魅力、綺麗や美しいなどでは到底語ることができない風景がそこにはあるのだ。
私たちを魅了し、それを放そうとしないものが
砂浜に座り込むと、ただその光景を見るだけ。太陽が少しずつ沈んでいく光景を
少しずつ太陽の光は薄くなり一面が真っ暗になっていく。闇のカーテンが下りてきるがこの一瞬もまた好きだ。
太陽がもう少しで沈むか沈まない一瞬が。
太陽が完全に沈む一面真っ暗になると、私は手に持っていた懐中電灯をつけた。これでようやく少し先の視界を確保できる
砂浜の近くを走る道路には電灯はあるがその光はこちらにはあまり届かないのでどうしても暗くなる。
私は懐中電灯の光をさっき男性がカメラで写真を収めていた男性のほうへ向けると
男性も懐中電灯をつけて私のほうに歩いてきた
「こんばんは、カオリちゃん。早く帰らないとお母さんが心配するよ」
途中まで車で送っていこうかといわれたが私は歩いて帰ると言った。
たった10分の距離を車で送ってもらうのは気が引けたし彼の自宅と私の自宅は正反対の位置にある
わざわざ遠回りをして帰ることはないだろうと思って断った
「それじゃ、またね」
私はそう言うと砂浜から道路に上がるとまた来た道を戻り始めた
そこはさっきまでとは別世界だった。一面真っ黒の世界。砂浜付近は電灯があるが自宅と砂浜の間には電灯は少なく暗い
一寸先は闇といった感じだ。私はそんな道を懐中電灯の光をたよりに帰った
自宅に帰ればおそらくまた彼らと会うことになるだろうが無視しようと思った。
もう彼らのことなんてどうでも良い。私は今自分がここに居れるだけでいいのだから
本館から入るとそこには受け付けカウンターにお父さんしかいなかった。
おそらく他の人は今日来た生徒のご飯やいろいろと準備をしているのであろう。
私はお父さんにただいまと言うと、彼は今日は綺麗だったかとぶっきら棒に聞いた。
とっても綺麗だったよというと、お父さんはそうかと返事をした。
あとで夕飯を持って言ってやるから部屋で休んでいろと言い、受付カウンターの奥にある事務所に入っていった
お父さんの彼らに会わそうとしない心遣いに感謝しながら別館にある私の部屋に戻っていった
本館の廊下では誰にも会わず、別館でも同じだった。みんな大広間にでもいるのであろう。
この旅館に宴会をするための大広間と普段職員や静かにご飯が食べたい人のための食堂がある。
食堂からは海が一望でき、その光景も絶景だ。
そのため、風景を楽しみながら食べたいグループは食堂、騒ぎたいグループは大広間と大体決まっている
部屋に戻るとすぐにお父さんが夕飯を持ってきてくれていた。
食べ終わったら部屋の扉の前において置いておけと言うと仕事に戻っていった。
私は持ってきてくれた夕飯を食べると日記を書き始めた
「今日はいやなことが多いな」
私は日記を書きながらそんな事を思っていた。彼らとの再会は最悪だった。それにお父さんとお母さんにも迷惑をかけた。
「明日は良い事あるかな」
そう言うと私は布団に入り眠った。良い明日を願って
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]]>
朝の海岸の町はきれいだ。
山から太陽が少しずつ上がるのがわかり、近くの小学校や中学校に向かっている生徒も多く見れる。
私はそんな光景を見ながら海岸線に沿った道を歩いている。
海は太陽の光をきれいに反射し、まるで大きな鏡があるようだ。
「おっはよう〜!カオリお姉ちゃん!」
昨日夕方に出会った子供が私に元気よく挨拶をしてきた。私もおはようと挨拶をすると子供は私の髪を見て言った
「お姉ちゃんの髪は太陽だね」
私は言われたときはその言葉の意味が分からなかったが、子供が説明してくれた。
「お姉ちゃんの髪はね、太陽さんの色と同じなんだよ。朝はきれいな白色、夕方はオレンジ色、僕はどっちも大好き!」
子供は元気よく私にそういうと嬉しそうな表情をして腰近くまである髪を触った。私は少し嫌そうな表情をしてしまった
すると、その子は、僕、何か悪い事言ったという感じで聞いてきた。
私は別にそんなつもりはなかったが子供は敏感なようだ。
私にとってこの銀色の髪は嫌いだ。多くの罪を犯したがためにこんな髪になってしまった。
それを綺麗と言われても嬉しくなかった。この子が落ち込まないように私は簡単な言い訳をした
「少しこの髪にいやな思い出があってね。それを少し思い出しただけなんだ。ごめんね。誤解をさせて」
私がそう言うと、その子はそうなんだと言い、でも、お姉ちゃんの髪はきれいだし僕は大好き!その子はそう言うと、
遅刻するからと他の友達と少し早く歩きながら学校の方向に向かった。
この海岸の町は家の軒数はそれほど多くない。町としては小規模で田舎だがのどかな光景は好きだ。
都会はみんな忙しそうに動くが、このあたりは誰もがゆっくりと過ごしている。
感じる事ができない時間がここでは大きく感じられる。
お昼ごろには八百屋や漁業で生計を立てている人がゆっくりとした午後のひとときを過ごしている。
そんな光景がみれる場所だ。この町にに林間という形で来る中学生や高校生は多い。
近くには第2東京市・第3新東京市があることから、その地域の学校の生徒がくることは珍しくない。
ただ、第3新東京市にある学校関係の生徒は基本的に外部に出る事がないのであろうか、ここに来た事は一度もない。
それが、今回はじめてくることになった。私はそんな事で両親を心配させたくなかった。
「たしか、今日の昼過ぎには来るんだよね」
私ははっきり言えば会いたくなかった。両親が見せてくれた名簿には良く知った名があったからだ。
でもその時は私は嬉しいと感じてしまった。
『渚カオル』『惣流アスカラングレー』『碇レイ』
この名前を見たとき、私は本当にそう思ってしまった。
でも、しばらくして自分の事を思うと会いたくないという感情が大きくなり、もうそんな事は思わなくなった。
今の私には関係ないもの。『水川カオリ』なのだから、
私はため息をつきながらいつもの散歩コースである町の外れにある海を見渡せる展望台にたどり着いた。
そこに設置されているベンチに座った。この展望台は崖ギリギリの所に設置されている。
そのため、飛び降りようと思えばできるし、下は複雑な海流をしているため落ちればまず遺体は上がらない自殺の名所だ
そんな場所だが眺めは良い。大海原が一望できるこの場所は写真家やその手が好きな人物が良く訪れる。
今日はまだ誰も来ていないがおそらく昼過ぎからは訪れるであろう。
この場所の、この町のすばらしさのあまりこの場所に家を作り住んでいる一人の男性がいるのだから
彼と会う事は良くある。夕日が綺麗な海岸、そしてこの展望台などで。
よくモデルになってくれないかといわれたが私は断った。そんな事ができるほどのヒトは良くないと。
最初はあきらめずに何度か来ていたが、今ではいつか良い返事を期待しているよと声をかけるぐらいだ。
今日は風が強く、私の髪が時々風に流される。
それもまたこの場所の魅力なのかもしれない。自然が生き物のように感じられるこの場所の
人はあの悪魔のような出来事によって、自然という本来お互いに共生しなければならないものを見失った。
それを感じることができる場所はもはや少なくなっている今、そんな場所が残っている場所は数えるくらいしかないだろう。
これからさらに開発が進めばさらに減るであろう。人は傲慢だ
世界を創造し、少し余裕が出てきた今だからこそ分かる世界の感情。世界はまだ悲鳴を上げている。
私はそれを感じることはできるが、それを伝える事はできない。
神がすべてを教えてはならない。人は自立しなければならない。誰かの意思に従ってはいけないのだ
「今日も早いね。それにしてもいつみても綺麗な光景だね。カオリちゃん」
私が深い深い考え事をしていると声をかけられた。
大海原に向けられていた視線を陸地側に向けるとそこにはカメラを持った、20代ぐらいの男性が立っていた
この人物こそが私がさっき話したこの場所をこよなく愛する男性である
「ええ」
私が愛想なく返事をすると、彼は私を見て珍しいねといった。私にはいったい何が珍しいのかが分からなかった。
「いつもは明るい表情で言葉を返すのに今日はものすごく深刻そうな表情で言葉を返してきた来たからだよ」
彼はベンチにカメラの機材を置き、私の横に座った。
「心配な事でもあるの?」
私は別にとまたぶっきらぼうに答えてしまった。不機嫌なときの自分はどうしてもそういう答え方しか出来ない。
もともとあの1年間、『ヒト』とのコミュニケーションなど誰もいないのできるはずもないし、
もともとの性格もあって、人とのコミュニケーションはさらにやりにくくなった。そんな私でも彼はいつも話しかけてくれる
「いろいろと、悩む事もあって」
私はもう行くねと言うと、その展望台を後にした
もう時間はもう少しでお昼過ぎ。
展望台からあの砂浜までの道は前半は横ががけっぷちの道、後半は砂浜が横に広がる道である
太陽さんももう少しで真上に来る時間だけあって、道路のアスファルトから熱が湧き出てくるように感じる。
今日は特にそう感じるのはやっぱりあれの所為なのだろうか
町の中心部まで後半分というところまで歩いたとき、後ろから大型バスが走ってきた。
一応この道は1車線分しかなく途中で行き違いができるように一部広い部分もあるが
砂浜が見えるところまでいかないと1車線が続く。そんなところを大型車が通ればいやでも目に付く。
私がバスに乗っている人を見るとそこには私の良く知る人物達がいた
そして、その人物達は私を見て驚きの表情をしていたように見えたが、何せ一瞬しか見れなかったので詳しい事はわからない。
「別に家で会うんだし。いいか」
私はそう言うと再び歩き出した。この暑く、家まで続いている道を
-------------------------------------------------------------------
私が家に着くと、もう中は生徒でごった返していた。大きな荷物を持った生徒が先生から説明や諸注意を受けていたが
皆、これからのことに気持ちが高ぶっているのかあまり聞いてはいなかった。
「あら、カオリ、おかえり」
お母さんが私を旅館のロビーで見つけて声をかけてきた。
私は今日は暑いし早く帰ってきたのと言うと、お母さんはそうねと温かい笑顔で私の言葉を返した
ロビーにあるイスに座りのんびりとここに設置されているテレビを見ていた。
部屋に帰っても特にすることのない私はこうやって過ごすこともよくあることだった
別に私のことを知っているのは旅館で働いている人と両親しかいない。さらにあのときの仲間とは年が違うのだから。
私はもう戸籍上18歳、身長も普通の女性より少し高めなので特に年齢が低く見られることはない
戸籍を登録した際に私の年齢が分からなかったので、年齢を高くして登録したのだ。
だから安心して過ごせるはずなのだが、今はものすごく不安である。
「あの、少しいいですか」
私が少しずつ悪いほうへ考えが進み始める直前に声をかけられて声が発せられた方向を向くと、そこにはあの3人の仲間がいた。
何とか平常心を最大限に使って冷静になると、かまいませんよと了承の言葉を出した
大丈夫、気づかれないと、必死に自分を落ち着かせようとするがとてもそんなに簡単にはいかない
「はじめまして、渚カオルと言います」
「私は碇レイです」
「私は惣流アスカラングレーです」
3人はそれぞれ自己紹介をするが私はあまり聞いていない。もうなにがなんだかわからなくなりそうであった。
どうして私に話しかけてきたのか。どうして自分の事を見るのか、もう何も考える事ができなくなりそうだった
「カオリ、どうかしたの?」
私の様子に気づいたのかお母さんが声をかけてきてくれた。
私がお母さんのほうを見ると、少し慌てた様子で私に近づき3人に言った
「ごめんなさい。この子、少し熱射病にでもかかったみたいだから、部屋で休ませるわ」
ごめんなさいねと謝ると、カウンターでいろいろと仕事をしていたお父さんを呼んだ。
私をおぶって部屋まで連れて行くように頼んでいた。
お父さんは私の顔色を見て、お母さんに簡単な昼食をもってきてもらうように頼んでいた。
私はとても申し訳ないと思っていた。3人に会っただけでこんな気分になるなんて夢にも思わなかった。
吐き気、頭痛、眩暈、まるでたちの悪い風邪にかかったような気分になった
そう考えている間に私はお父さんのおぶられて別館にある私の部屋に連れて行かれた。
お父さんが布団を引いて私を寝かせてくれた
「カオリ、無理はするな。まだ1年しか経っていないんだ」
お父さんは私に毛布をかけながらいうと、私はありがとうと返すので精一杯だった。本当に気分が悪い。
それに気づいたのか、お父さんは私をおこし、背中をさすってくれた。たったそれだけだが少しは楽になった。
「あなた、カオリは」
お母さんが簡単な昼食を持って部屋に来た。本当に心配してくれたようだった。
お父さんが大丈夫だというとお母さんは安心した表情になったが、私がまだ顔色が悪かったのか、
「やっぱり心配だわ。近くのお医者様に」
そう言ってくれたが、私はそこまでしなくても大丈夫だよと返した。
ただ彼らに会ってあのときの記憶を思い出してしまったのだから。
あの悲惨な赤い世界にいたときの記憶。幾度となく忘れようと思ったが忘れる事ができなかった記憶
その記憶を夢で見ようものならしばらくは寝付けない。怖くて仕方がないのだ。またあのときに戻るんじゃないかと。
「なら、しばらく私がついているわ」
お母さんがそういってくれたが私は大丈夫だよと言い、断った。二人にそんなに迷惑はかけたくなかった。
これは自分の犯した罪の償いのようなものだ。
それに両親を巻き込みたくなかった。だが、お母さんは譲らなかった。
「だめよ。あなたは私の娘なんだから、それにあの子達はこれから海に泳ぎに行くそうよ。仕事は少し時間が空くから」
どう言っても動きそうにもないお母さんに私はそれじゃお願いと言うと、はいとやさしく微笑みながら言った
お父さんは、お母さんにそれじゃカオリを頼むぞと言うと仕事に戻っていった。
部屋を出て行く直前に、体調管理はしっかりとなと言い戻っていった
お母さんは不器用な人ねと言うと、私はお父さんらしいよと返した
彼女は私の頭をひざに置くと子守唄を歌ってくれた。
それは私があの夢を見て寝ることができなくなった時によく歌ってくれた歌
私はこの歌が大好きだし、本当にこの歌を聴くと眠ることができ安心できる。
お母さんの温もりが近くで感じることができるからだろう。家族の温もり。
私にとって、一生で会うことはないと思っていたものだったがこの場所で初めてであった。
あの戦場のような場所であった第3新東京市ではそんな愛情はもらえなかった。ただ、使徒を倒すために生きていた。
今になって考えてみればそんな感じでいたのかもしれない。だが今は自分の時間をゆっくりと過ごしている
そんな事を考えているうちに眠気に襲われた。後は何もわかない
------------------------------------------------------------
「あらあら、本当にこの歌が好きね」
この子がいつも眠れないときに歌ってあげる歌。私も小さいころはこのうたで眠ったことがある
そして今、私は人類を、世界を救ってくれたこの子に、親の愛情など知らぬカオリに私は精一杯の愛情を注いだ。
この子には幸せになる権利がある。いや、どんな人間にもその権利はあるはずなのに。
この子は一番つらい事を経験し、幸せなるどころか、大きな悲しみを背負った
私たちにいろいろと話してくれたが、おそらく私たちが想像できないほどの苦しみや悲しみを経験したのであろう。
あの子がこの話をするときはものすごく悲しい目をしている。
もし、神様がいるなら、この子にどうか幸せを、世界を救ったこの子に。
私たちの娘にどうか幸せを与えてあげてほしい。たった少しの幸せでもいいから。
でもそんなものはいない。この子が一番分かっている。この世界には神様などいないということを。
そしてこの子の話を聞いた私たちも。それでも願いたいというのは私の身勝手なのか。
できれば、あの子たちにはもう会わせたくない。もうこの子が苦しむ顔は見たくない。
たとえ、自分が生んだ子でなくても、今この子は私の、いや私たちの大切な娘なのだから
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]]>「は〜〜〜、今日も青い海にきれいな夕焼け、か」
水平線が一望できる砂浜である女性が浜辺に座り込み独り言を呟いていた
その女性は髪が腰まで伸びていて、顔も美人という部類に入るものであった
綺麗な夕日と浜辺、そして美しい女性が一人浜辺に座っている、まるで一枚に絵画のような風景
時が止まっているように見える光景がしばらく続いていたが、夕日の光が少しずつ弱くなりだすと
女性は立ち上がり、砂を払うと浜辺を後にした。
浜辺から自宅までは海沿いの道をしばらく歩いたところにあり、別に浜辺でなくても家からでもこの光景は見えたが
なぜか、私にとってはあの浜辺から見る夕日が好きだった。自分にはなにもないと思っていたときにあれを見ると
なにかあるんじゃないか。そう思える。
そうやって、今日も見終わって歩きながら帰っていると前から10歳ぐらいの子供が自転車に乗って近づいてきた
その子供は私に話しかけてきた
「あれ、カオリお姉ちゃん、今日も浜辺に居たの?」
子供は髪の毛に塩に匂いがついちゃうよと注意するように言うと、私は少し苦笑いしながら答えた
「でもね、綺麗な夕日を見るとね。元気になれるよ」
子供はそうだけど〜、とやっぱりとおねえちゃんの綺麗な銀色の髪がと私の髪を気にしていた
別に自分の髪が綺麗だなんて思ったことは一度もない。これは罪の色なのだから。
自分が犯したさまざまな罪の罰なのだと
「早く帰らないと、お母さんとお父さんが心配するよ。ほら」
なかなか動かない子供に私はそういうと、その子は自転車をこいで自分に家に帰っていった
もう少しで太陽は沈み、このあたりは暗くなるだろう。
そうすれば、このあたりは一面暗くなる。2年前に起こったサードインパクト、それによってこのあたりは悲惨な光景になった。
それが復興によってようやく海岸の町を取り戻したが、まだまだ完全ではない。街灯は少なく、夜になれば真っ暗だ
夜に出歩く人は少ないし、出歩くなら懐中電灯が必要だ。私は完全に暗くなる前に自宅に着いた。
自宅は私を拾ってくれた両親が旅館をやっていて、離れの部屋を使わせてもらっている。
「ただいま」
「あら、おかえりなさい。また夕日を見に行っていたのね」
困った子ねと母は苦笑いしながらも、早くお風呂に入って塩分を流してきなさいと言った
本当の母親ではないが、私はこの女性が好きだ。見ず知らずの自分を引き取り、わたしを育ててくれる母親を。
私は母親の愛情を受けながらも、人を拒絶した自分がそんなことを思うのはいけないという思いがまだ時たま頭をよぎる
そのときに偽りの器で居る自分が無性にイラつく事がある。自分はあれだけのことをしながら今も生きているのだと
「自分の罪の証、そして・・・・」
私はこの髪を洗いながらそんな事を口走っていた。でも偽りではない。本当のこと。髪と瞳の色は罪の色。
瞳は彼らと同じ赤色。まるでトガビトであることを示すかのように。あのときに犯した罪、私にとって悪魔のような時間、
私以外にとって、あれ以降、喜びに満ち溢れた人も居たのであろう。でも私にとっては一生かかっても返せない罪を背負った
私はそんな事を考えながら、洗い終えるとお風呂につかろうとした。その時、お風呂と更衣場をつなぐ扉が開かれ母が入ってきた
「カオリ、まだいたの。今日はお客さんももう上がって今はお休みよ」
「いつもならもっと遅いのに今日は早いね」
「皆さんお疲れみたいだったから。お早めにお休みになったわ」
だから、私たちも早くあがれたのよと母は嬉しそうに言った。仕事が早く終われることは嬉しい事だとわかるが
ま、接客業だしいろいろと大変なんだろうねと思った。私自身がこの旅館を手伝うという事はない
引き取ってもらってから、いつもこの町をぶらぶらしているか、あの砂浜で私は夕日をただ眺めている
最初は母も心配になって後をついて来ていたらしい。
散歩コースがわかると母はあきらめたように懐中電灯を持たすようになった
もっとも、それが母なりのやさしさであるという事はわかっているが
「ねえ、カオリ、今度、第3新東京市の高校生がこの旅館を使う事になったの」
「・・・そう」
母が話しにくそうにそう話を切り出すが私は愛想なく返事をしてしまった。
あの事件以降、私は他人に興味を持つことは少なくなった。それが私の恐怖の現われなのかどうかは分からないが
「もし、あれだったら、断っても」
「母さん、私にそんなに気をかけなくても良いよ。私はもう大丈夫。何があっても逃げないって決めたから」
私はお風呂からあがると、母に言った
「私は、碇シンジじゃない、私は水川カオリなんだから」
私はそういうと、お風呂を後にし、更衣場で着替えると離れにある自分の部屋に戻っていった
部屋に戻った私はいつものように日記をつける。日記といっても、別に書く事はない。
今日は夕日が綺麗だったや、今日は誰と会ったなど、普通のものだしそれ以外書く事はない
自分がこの部屋に入ってからかったものはあまりない。服やちょっとした小物だけ。
このあたりで生活するにはそれぐらいで十分であった。
自分にとって本当に必要なものは何か考えるが分からない。自分というものが理解できていないのではどうにもならない
「今日も変わらぬ日々。そして何もない日々か」
私はそう漏らした。何もない日々、確かにいつものように夕日や町を見ることが私の日課であり1日の大半をそれで過ごす
この家で一日を過ごす事は少ない。さらにいえばこの家で居るのはこの辺りが暗くなった夜とお昼のご飯のときである
それでも、私を暖かく向かい入れてくれる母や父が好きだ。この家もこの町も、そしてこの世界も
「カオリ、少し良いか?」
廊下から父の声が聞こえてきた。私が扉を開けると父は深刻そうな表情をして立っていた
「お父さん、どうかしたの?」
私がそう聞くと父は言いにくそうに言った
「実はな。第3新東京市の高校生が林間学校でこの旅館を使うんだが、別館も一部使う事になりそうなんだ」
父がなぜ言いにくそうにしていたのかようやく分かった。その言葉で私がとても大事にされているのかがよくわかった
彼は私が彼らと接触したくないのではないかと思って何とか本館だけで言いように部屋割りを考えたのであろう
でも、それが無理であり、わざわざ私にそれを確認しに来たのだ
「いいよ。お父さんはそんなに気にしなくてもいいよ。私は父さんの娘だよ。なにがあっても」
私がそういうと父はそうかと少しうれしそうにしながら部屋を出て行った。
この数時間で私は父と母に本当に大事にされていると確認できた
そのことを日記に書き足しておいたのは言うまでもない。私にとって、それは最高の日になった
---------------------------------------------------------------------
翌日、私の部屋に朝日が差し込んできた
私は基本的には規則正しい生活を送っているので朝起きるのは早い。今日も7時ごろに起きるといつものように着替えて
部屋の中を少し片付ける。まぁ、基本的にこの部屋にいることは少ないからほとんど片付いているが。
本や服が片付いていないので今日は朝から片付ける事になった
「それにしても、今日もきれいな太陽さん。散歩はできそうだね」
私はそんな事を言いながら部屋を片付けると、朝食を食べるために食堂に向かった
この旅館は特に損傷や壊れている所もなく、廊下の脇に花壇が置かれている。
それが朝日にあったってとてもきれいに見える
そんな何気ない事にも私はまだこの世界にいるんだと思う。
「あら、カオリちゃん、おはよう、もう食堂でご飯をお客さんも食べてるから行ったほうが良いわよ」
別館から本館につくと旅館に勤めている女性が布団を運びながら私そう言った
ここで勤めている人はたいてい住み込みの人が多い。また、そういう人は別館に自分の部屋を持っていて彼女は私の隣の人だ
私がここに来たときからいろいろとお世話をしてもらっている人の一人である
「ありがとうございます。今から食堂に行きますから」
女性は今日もお散歩日和よと言うと布団を持って外の布団を干す場所に慌てて進みだした。今日はお客が多いようだ。
少ないならあんなに慌てていくはないが、人手が足りないから一人で何回かしなければならないのだろう
「おはようございます」
私が食堂に着くと厨房の人に挨拶をすると、中からおじさんが私用の全体的に量の少ない料理を出してきた
おじさんは今日もしっかり食べないと途中で倒れるぞと言うと奥に戻っていった。
あれ以降、私は食事というものが嫌いになった
あの赤い世界、何もない地獄、それを長い間見ていた所為で何も食べれない体に変わっていったのであろう。
あんなものを見れば誰でもそんな事になる
ましてや、心を壊され、何も考える事ができなくなった私に食事なんてする余裕はなかった。
ただ、赤い世界を見て一日を過ごす。そんな無意味な事をして過ごしてきた。なにもない。
あの赤き穢れのない世界に私は何も見出す事はできず、最終的には私は1年を過ごしたらしい。
正確な日付は私にも分からない。それを記録しているものもない。
私が1年と判断した理由は太陽の上がった回数を思い出せば、365回上がったと覚えている。
普通の人間なら覚える事はできないであろう
私は人ではなく、神の力を持つ『ヒト』。世界を創造しうる力をもちながらも、それをせず何もしない日々を過ごした
ある時、私はようやく自分に気づき、そして、世界を『創造』した。
「世界は我と共に、そして我は世界を・・・」
そして、世界を創った。元の世界を再びを創り出した。
その際にサードインパクト、セカンドインパクトによって死亡したはずの人がよみがえるということを起こってしまった。
さらに私は自分の性別が男性から女性に代わり、見た目も身長などが少し成長して16歳前後に変わった。
自分にとっては幸運だった。死者の戸籍を作成するために、政府は簡単な審査で戸籍作成を行っていた、
制度をうまく利用して新しい自分を作り出した。ネルフが存続した場合、自分はその調査対象から外れやすい立場における
セカンドインパクト時に亡くなった人を今から調べるすべもなく、私は申請の時にあることを記入し戸籍を作成した
『セカンドインパクトと呼ばれる大災害を知らない』と
それによって私は新しい戸籍が得られ、最初は『神名カオリ』と。
その後、このあたりをぶらぶらしているときに今の両親に引き取られ、養子縁組をし『水川カオリ』となった。
「あら、カオリちゃん、しっかり食べないと、道端で倒れちゃうよ」
また別のこの旅館で勤めている女性からそういわれてしまった。
みんな私のことを心配してくれる。本当に私のことを子供のように思ってくれる。
今、この場所で入れることが私にとって何おり幸せだと感じる。私は大丈夫ですよと返事をすると。
食べ終わった食器を調理場に持って行った
「今日もおいしかったよ。いつもありがとうございます」
そう私がお礼を言うとおじさんは少し顔を赤く染めて「そうか」とぶっきら棒にいった。
私はそのまま厨房にある通用口から外に出るといつもの散歩コースを歩き出した。
父と母は私の本当の名前も知っている。碇シンジであることも、ネルフのパイロットであった事も。
そして失われた英雄である事も、2人は私は私たちの娘だといってくれた。だれが何を言おうと私は水川カオリだと。
その言葉をはじめて聞いたとき、私は本当の家族の愛とはどういうものなのか、何か少し分かったように思った。
今まで私は母や父の愛など受けた事もないし、そんなものを知らなかったのに、本当に嬉しかった
娘だと、私は自分の娘だ取ってくれた二人は私は守ろう。そう決めた。
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