Amazonの最大の特徴は強力なレコメンデーション機能にある。現在のところAmazonはレコメンデーションの実用レベルの最先端を走っているという見方が支配的だ。技術の向上にも余念が無い。実際、近い将来には顧客の宗教や思想まで含めて営業活動に反映させることが可能となるといわれる。技術的には既に開発済みで、米国で特許を申請している。また、パーソナライゼーション技術の解説記事においても、Amazon.comは一つの成功例として語られることが多い。一方、レコメンデーション自体は個人の趣味嗜好、場合によっては思想信条、性的な関心といったきわめてグローズドな情報を収集する過程を含む。このためプライバシーの観点からの問題提起が出されることも多い。
Amazon.comのレコメンデーション機能は、A9といわれるエンジンによって行われている。この場合のレコメンデーション機能とは、過去の購入履歴等から顧客一人一人の趣味や読書傾向を探り出し、それに合致すると思われる商品をメール、ホームページ上で重点的に顧客一人一人に推奨する機能のことである。例えばAmazon.co.jpの「トップページ」や「おすすめ商品」では、そのユーザーが過去に購入したり閲覧した商品と似た属性を持つ商品のリストが自動的に提示されるが、それはレコメンデーション機能の一部である。シリーズ物の漫画等の購入をレコメンドする場合にはちょうど新刊が出たころに推奨し、似たような傾向の作品をも推薦する。以上の意味で、Amazonのレコメンデーション機能はコラボラティブ・フィルタリングに分類されると考えてよいだろう。
Amazon.co.jpの機能はAmazon.comにおいても装備されている。Amazon.co.jp、Amazon.comのポータルサイトのユーザーインターフェースは、言語を除きほとんど同じであるため、以降は動作の説明を要する場合には、Amazon.co.jpのポータルサイトの操作方法に準拠して説明する。
Amazonのレコメンデーションの精度は「普通の商品」に対しては良いという意見が多数を占める。顧客が関心を持ちそうな商品を適切に推奨してくれると見る向きが多い。しかし、学術書のように専門やニーズが細分化されている分野の場合、的外れな結果が出ることも多い。実際に試してみれば分かることだ。学術書には分野が同じでもレベルや性格(読み物的なものから辞書的なものまで)に大きな隔たりがある。しかし、それらは十把一絡げに扱われて推奨される。
Amazonは収益面でもレコメンデーションの導入に成功しているという見方が一般的である。そのため、多くのシステムインテグレーション企業がこれと類似したシステムの開発にしのぎを削っている。早晩同様の機能を持つサイトは増えるだろうと思われる。実際マイクロソフト、Yahoo!、Googleは、独自のパーソナライゼーション方式を開発・強化し、自らのサイトに組み込むことを公言している。
Amazonのレコメンデーションは先進的であるがゆえに、プライバシーの観点からもいろいろな話題を呼ぶ。話題の大半は、一企業が思想信条、自分の調査している内容、趣味、性的嗜好など個人に迫った情報を濃厚に含む読書傾向を管理することに危険性や不快感を持つといったものである。これらの指摘はプライバシー関係の市民団体に加え、プライバシーの専門家やインターネットセキュリティーの専門家などからしばしば出される。場合によっては訴訟にまで至る。
その他、現時点ではパーソナライゼーション自体をやめさせることがきないことを、選択権やプライバシーなどの観点から問題視する意見がある。実際、現状では過去の購入、評価履歴に基づくお薦め商品の提示、およびその根拠となる情報の収集・分析を根本的なレベルではやめさせることはできない。例えば「マイページ」や「おすすめの商品があります-おすすめの理由は」と書かれた商品の画像、何を購入したから推奨するのかを伴った宣伝をやめさせることができない。また、個人と嗜好の関連付けを行うこともやめさせられない。
ただし、非常に複雑な手段を講じるなら、過去に購入や評価などを行った個々の商品に対してパーソナライゼーションに反映するか否かを設定することができるし、事実上パーソナライゼーションに反映させたくない商品をお薦め商品の選定基準から外すことだけは可能である。そのためには過去に購入、または評価、クリックした商品一つ一つについて一つ一つ設定を行うという膨大な時間と手間を掛けることになる。
また、ユーザーが最近クリックしたサイト内の商品の履歴を表示させる「チェックした商品の履歴」や、それに基づいたお薦め商品の提示を行う「マイページ」は、少々複雑な操作を行えばレコメンデーションを止めることができる。また、「チェックした商品の履歴」自体は、2、3日で自然に消えるものである。
ここで言う「複雑」とは、パーソナライゼーション関係の設定がアカウントサービスの上から行えず、体系的でないということを意味している。
参考:フリー百科事典「ウィキぺディア(Wikipedia) http://ja.wikipedia.org/wiki/Amazon.com