やると決めたら、大人の根性でつくりあげる
JUGEMスタッフ - 思い描いたものを、最後まで作り上げるコツ・力の源はなんでしょうか?
八谷和彦 - 段階を踏んでつくることでしょうか。OpenSkyもいきなりこんなに大きなものができたわけじゃなくて、まずは模型から作って、いくつか段階を経て、やっとエンジン付き機にまでたどりついたわけで。とにかく今できることをこなしていくことが大切だと思います。
あとはとにかく気合ですね。はじめに実現可能か不可能かは考えますが、やろうと決めたらとにかく達成しようとがんばる。ミッションインポッシブルというか、使命を果たすような感じで、大人の根性みたいなものかな。
増田セバスチャン - でも大人になって、根性どころか就職=夢をあきらめることだ、と思っている人も多いですよね。未来に希望を持ってない大人が多いからかもしれないけど。
八谷和彦 - 決してそんなことはないんですけどね。実際働いてみると、みんな意外と学生と大して変わらない。
JUGEMスタッフ - 八谷さんご自身が就職して得るものがありましたか?
八谷和彦 - 取引先との接し方とか、請求書の書き方とか細かいことを学べたのは就職してからだし、今のように、“このプロジェクトをやるとしたら期間と予算は?”ってことをある程度計算できるようになったのは社会に出て働いてみたからだと思いますね。
でも、別に会社だから、社会人だからすごいものがつくれるとも限らないとも思いますよ。 たとえば鳥人間コンテストなんかで、人件費なんか考えずにものすごいものを作り上げてしまう学生のパワーはすごいですよね。学園祭でとんでもないもの作っちゃったりしますし。
こんなものを作っちゃう大人がいるんだよ
JUGEMスタッフ - H.U.G.vol.4ではどんな問題提起をしているのでしょうか?OpenSkyを展示されるそうですが、見に来た人には何を感じてもらいたいですか?
八谷和彦 - OpenSkyを始めたきっかけは2003年のイラク戦争で、イラクへの自衛隊派遣というある種の戦争への参加を政府が決めたという状況で。そのとき、ぼくは「この状況はなんか見たことある」と思って、それは「風の谷のナウシカ」だったんですよね。大国の戦争に巻き込まれていやおうなしに自分たちも戦争に参加する状況が。そしてそのとき、僕は「なにか希望や平和を連想する作品を作りたい」と強く思って。メーヴェを実際につくってみたいっていうのは実はずっと昔から思っていましたけど、本気で「つくろう」と決めたのは、あのときのそういう時代背景があったからだと思います。
H.U.G.vol.4で見せたいのは大げさに言えば「人間に不可能はない」みたいなことかな。「やってやれないことは本当は少ないんだよ」みたいなことを伝えたいのかもしれません。特に「やっぱり何かを諦めなきゃダメなのかな」とか思いかけている若い子たちになんかちょっとしたことでも感じてもらえれば、と思います。
増田セバスチャン - 是非この八谷さんの大人の根性をみてもらいたいですね。
八谷和彦 - そうですね。気合でやり続ければいつか実現できるということは見てほしいです。たとえば僕たちが若い時に、飴屋法水さんとかヤノベケンジさんとか村上隆さんとか、ちょっと年上の世代の人たちがすごい試みをやっているところを見せてもらったっていうのはすごく大きかったんですよね。
原宿や表参道にいる子とは、目指すジャンルは違うとは思うんですが、ちょっと年上のぼくらみたいないい大人が、一見アホなことかもしれないけど、でも本気、みたいなところを見てもらえたらうれしいです。
他にもたくさんのOpenSkyの動画がこちらに公開中です。
DVDも発売中!! [monocolle]Opensky2.0
日本科学未来館の常設展示「メディアラボ」は、先端情報技術やそれらを利用し た表現の可能性を紹介する展示を年に3回行っています。その第2弾「魔法かもし れない」と題した展示において、八谷和彦さんが「視覚」をテーマにして発表し てきた作品群を展示しています。身近な技術を用いて普段の私たちの生活では、 見ることができない世界を表現しています。その驚きは、ちょっとした魔法のよ うであり、私たちに新たな疑問や好奇心を抱かせます。
展示作品:
Profile : 八谷和彦
メディアアーティスト。作品には《視聴覚交換マシン》など特殊コミュニケーション・ツール・シリーズやパーソナルフライトシステム《OpenSky》など夢や愛があるものが多い。メールソフト《ポストペット》の開発者でもあり、ポストペット関連のソフトウェア開発とディレクションを行なう会社「ペットワークス」の代表でもある。メディアアーティスト・八谷和彦氏がプレゼンターとなり、"自分の欲しい飛行機を作り、空飛ぶ事をゴールにするプロジェクト"「OpenSky」の最新展示を開催。12月5日(金)、6(土)は、ロボットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』のスコープドッグを原寸大で制作したことでも有名な鉄鋼アーテイストの倉田光吾郎氏や、「パラサイト・イヴ」の作者としても知られる作家の瀬名秀明氏らのゲストを招いてのスペシャルトークイベントを開催!