『ネパール王制解体 ― 国王と民衆の確執が生んだマオイスト』
評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
国王夫妻を含む王族10人が犠牲となり、世界を震撼させた2001年のナラヤンヒティ王宮事件、マオイストの武装闘争による治安の悪化、多数のカトマンズ市民が街頭に繰り出してギャネンドラ国王の絶対王政を終わらせた2006年の「四月革命」……。ネパールではここ数年、政…
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評価 ★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
国王夫妻を含む王族10人が犠牲となり、世界を震撼させた2001年のナラヤンヒティ王宮事件、マオイストの武装闘争による治安の悪化、多数のカトマンズ市民が街頭に繰り出してギャネンドラ国王の絶対王政を終わらせた2006年の「四月革命」……。ネパールではここ数年、政治的な激動が続いてきました。
この本では、2006年11月のネパール政府とマオイストとの平和合意成立までのネパールの政治状況の推移が、王族側とマオイスト側、それぞれの動きに焦点を当ててまとめられています。
著者の小倉清子氏はネパール在住のジャーナリストで、「マオイストの首都」である、西ネパールのラプティ県ロルパ郡にあるタバン村など、マオイストの拠点に何度も足を運び、幹部にも直接インタビューしたりと、精力的な取材を続けてきました。
ネパールの、特に山岳地帯の農村に住む人たちは、長いあいだ、二つの武装勢力のあいだにはさまれて苦しんできた。それは、国王が最高司令官を務める王室ネパール軍と、ネパール共産党毛沢東主義派ことマオイストが抱える人民解放軍である。国王とマオイスト。世界のほとんどの国ではすでに過去の産物とみなされている二つの勢力が、ネパールでは二一世紀に入って国家の土台を揺るがす存在にまで力をもった。一見して、二極の両端にあるような二つの勢力が、この時代にヒマラヤの小さな王国でいかにして同時に力を獲得したのか。その背景には、一九九〇年に複数政党制民主主義の復活というかたちで実現した政治的近代化の失敗と、民主化後、経済的近代化がうまくいかずに、都市部と農村部に住む人たちのあいだで経済格差、生活格差がますます拡大する結果になったことがある。世界最貧国の一つに数えられる国に、世界的にも裕福な国王がいるという矛盾。こうした事実を見ただけでも、この国がいかに経済的にバランスのとれていない国であるかがわかる。
ネパールの山岳地帯で昔ながらの生活を送っている人々が、いまどんな状況におかれているのか、そしてマオイストと呼ばれる人々がどんなことを考え、何を目指そうとしているのかは、新聞の報道からだけではなかなか伝わってきません。その意味では、この本は現在のネパールについて理解するうえでの貴重な資料だと思います。
ただ、この本では、量的にも内容的にもややマオイスト側に傾いた記述になっているように感じます。
また、隣のインドと中国という大国の存在、そして冷戦後の世界の動きが、ネパールの内政にも巨大な影響を与えていることは確かですが、ここ数年のネパールの政治状況に、それらがどのような役割を演じていたのか、南アジア全体の動きを鳥瞰するような視点からの解説をもっと読みたかったと思いました。
今年4月の制憲議会選挙でマオイストは第一党になり、現在、王制廃止は確実な状況になっていますが、今後、マオイストや他の政党が、新憲法制定を含めた数多くの難題をうまく乗り越えていけるのかは、予断を許さない状況のようです。
日本人にとっては、旅人として、あるいはボランティアなどの援助活動を通じてかかわりをもたない限り、ネパールという国に関心が向かうことはなかなかないのかもしれませんが、縁あってネパールに興味をもたれた方は、こうした本にも目を通してみてはいかがでしょうか。
本の評価基準
以下の基準を目安に、私の主観で判断しています。
★★★★★ 座右の書として、何度も読み返したい本です
★★★★☆ 一度は読んでおきたい、素晴らしい本です
★★★☆☆ 読むだけの価値はあります
★★☆☆☆ よかったら暇な時に読んでみてください
★☆☆☆☆ 人によっては得るところがあるかも?
☆☆☆☆☆ ここでは紹介しないことにします
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