ボスキャラを倒していく日々
チャンスは「人」からしか舞い込んでこない
鈴木おさむ - 今の自分の19歳の弟子なんかを見てると思うけど、彼らに比べると若い頃の僕ってガツガツしてましたね。今ももちろん忙しいんですけど若い頃って、バイトしたり、映画見たり、週に数回だけど仕事ももらってて。あれはあれで、すごく忙しかったな〜と今になって思いますね。
増田セバスチャン - 確かにあのころって、いつ寝てたのかわからない(笑)。そういう意味ではガツガツかもしれないですよね。
鈴木おさむ - とにかく、若い時は、目の前の人に認められたくていつも必死だったんですよね。 こいつを笑わせて、納得させないと前に進めないなっていう状況だったから。ゲームと同じで、次々にボスキャラがどんどん出てきて倒していくみたいな感じで。
どの分野でもそうだと思うんだけど、結局は人からしかチャンスは舞い込んでこないんですよね。宝くじじゃあるまいし。次のチャンスへのステップは絶対に「人」だから、自分自身に興味を持ってもらわないと絶対だめなんですよね。人って、同じ才能を持ってるAとBがいたら、絶対自分とフィーリングのあうやつを選ぶし。単純に元気だから仕事あげちゃおうなんてこともあるから。才能を持ってる人なんていっぱいいるんだから、それを気に入ってもらうためにどんどんアピールした方がいいんだと思います。
自分ができないことをする人は、まず尊敬する
先輩から学んだこと
鈴木おさむ - 先輩とは、ぶつかることも多かったけど、学んだこともやっぱり多かったですね。礼儀のこととか。お前は自信過剰だって。挨拶をきちんとしろっていつも言われてました。自分でもほんとそうだなと思ったんですよね。でもすぐ忘れちゃうんです。だから、教えてもらったことを習字で紙に書いて部屋に貼っていったんです。「敬え」とか。当たり前なんだけど、忘れちゃう大事なことってあるじゃないですか。
こういう業界って、言葉も難しいし、忘れちゃいけないって思った言葉を紙に書いてペタペタペタって貼っていったんです。友達がうちに遊びに来たときは「何事だ!?」ってその習字見てすんごい馬鹿にされたんですけど(笑)。でも「違うんだって!」って、「恥ずかしいけど、書いておいた方がいいんだって!」って言ってたんですけど、今思うと、やっぱりすげえなって思いますよね。当時の自分が(笑)。すごい吸収力だったねって。すんごいスポンジだったねって。(笑)
JUGEMスタッフ - 今でも礼儀を大切にすることや、他人を敬うということは心がけているんですか?
鈴木おさむ - そうですね。それは年下に対しても同じです。自分ができないことをしてる人は誰でも尊敬しろって思います。
たとえば、僕が放送作家になった時に、先輩に、半年間舞台に立てって言われたんですよ。芸人さんの気持ちがわからない放送作家が多いからって。
その経験で分かったのが、お客さんが100人いたら、200個の目が自分を見るわけなんだけど、200個の目が自分を見るってものすごく怖いことなんですよね。だから、若手芸人と話してて、面白くなくても絶対面白くないとは言わない。その舞台に立っていること自体がすごく勇気のあることだと思うから。だから、その舞台に立たせてくれた先輩には今でもすごく感謝しています。そういうこともあって、今でも、自分がやってないことをやってる人に対しては、尊敬の念を表すようにしていますね。
クリエイター志望の次世代に向けて
100%自分の力を注げる場所を作る
増田セバスチャン - おさむさんから、クリエイターを目指している人たちへメッセージをおねがいします。
鈴木おさむ - とにかく自分が何をしたいのかを、はっきりさせることが大切だと思います。お笑いでも、テレビ、ラジオ、舞台、インターネット、DVDってこれだけ表現分野が多いからこそ、はっきりした方がいいと思う。僕は今でこそ色んな分野に手をつけているけど、まずは何をやりたいのかはっきりさせて、100%自分の力を注げる場所を作るのが大切だと思います。
僕はどこに行っても自分は「放送作家」だって言うようにしてるんですね。「放送作家・鈴木おさむ」が書いたドラマの脚本だとか、家をはっきりさせるようにしてる。だって、作詞しても、作詞だけやってる人にはかなわないし、ドラマの脚本もドラマばっか書いてる人にもかなわないですもん。時々、舞台やってて「テレビ的ですね」って言われるんだけど、自分は放送作家だから当たり前だって思ってます。面白ければそれでいいじゃんて。
H.U.G. vol.2「ラフ!」について
舞台をもっとカジュアルに
JUGEMスタッフ - 最後に、今回のH.U.G.のみどころを教えてください。
増田セバスチャン - 意外とアンチお笑いの人って多いんです。アンチまではいかなくても、お笑いの舞台を見に行く人ってすごく少ないですよね。お笑い好きな人ももちろん来てほしいんですが、そういうお笑いの舞台に行ったことのないような人たちに今回は見てもらいたいと思っています。
鈴木おさむ - 映画を見たり、クラブに行ったりとか、そういう軽いノリでお笑いも見てもらいたいですね。原宿に行く予定があったからとか、舞台が始まるまでは買い物でもしてもらってとか、もっとカジュアルに舞台を見に来てほしいんですよね。
増田セバスチャン - お笑いのライブって目当ての芸人さんがいてこそのものだと思うんだけど、H.U.G.でやることによって、これまでお笑いに興味がなかった人にも来てもらいたい。とりあえず、お笑いの舞台を見るきっかけとして来てほしいですね。
JUGEMスタッフ - 出演予定の芸人さんも最近注目されてる方ばかりですよね。
増田セバスチャン - そうですね。エアギターの「ダイノジ」さんなんて特に。「ダイノジ」さんは感覚が若いですよね。若い子たちと同じ目線で何かできるなって思います。
鈴木おさむ - 若いですね、あの二人は。音楽っていう武器があるんで、そこも出してほしいなと。あとは、最近すごく「Bコース」が面白いって話題だから期待してるんです。他にも「えんにち」とか、最近テレビに出ることが多くなった芸人ばかりなので、きっと面白いものになると思います。
取材・写真/jugem デザイン/6%DOKIDOKI
Profile : 鈴木おさむ
「笑っていいとも!」「SMAP×SMAP」「めちゃイケ」などを手掛ける売れっ子放送作家であり、脚本家。妻であるお笑いトリオ「森三中」大島美幸との結婚生活を描いた『ブスの瞳に恋してる』を始め、雑誌での連載も多数。また、お笑いとお芝居の融合をテーマにした、劇団「ザ・おさむショー」を主宰。2008年1月25日に初小説「ハンサム★スーツ」が発売される。次回の"H.U.G. vol.2"は大人気放送作家の鈴木おさむが次世代に送る「原宿」×「お笑い」イベント! 吉本興業全面協力による多彩な若手芸人が総出演!そして貴重な鈴木おさむトークからは何が飛び出す?こうご期待!