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メルヘン・ヒットメーカー タケヤマ・ノリヤ インタービュー

Vol.3 メルヘン・ヒットメーカー タケヤマ・ノリヤ インタービュー

リカちゃんのパパを生み出し、宇宙百貨で「なつカワキャラ」を描き続け、こえだちゃんのリバイバル「コエダリアン」を大ヒットさせたメルヘンヒットメーカー・タケヤマ・ノリヤが語る「カワイイ論」「キャラクター文化論」とは??

メルヘン・ヒットメーカー タケヤマ・ノリヤ
「“カワイイ” に目覚めたきっかけ」

タケヤマさんの作品たち

メルヘン・ヒットメーカー タケヤマ・ノリヤ

“カワイイ” に目覚めたきっかけ

JUGEMスタッフ - ご自分の肩書を “メルヘンヒットメーカー” にしているタケヤマさん。宇宙百貨の「パンダ」にこえだちゃんシリーズから生まれた「ドクッキノ」などなど、数々のキャラクターを生み出しながら、カワイイ論について研究されていますよね、タケヤマさんはどうして “カワイイ” ものについて興味をもたれたんでしょうか。

タケヤマ・ノリヤ - もともとタカラ(現タカラトミー)で働いていた時に、リカちゃん課に配属されたのがきっかけです。

JUGEMスタッフ - リカちゃん課!?

タケヤマ・ノリヤ - はい。リカちゃんについての商品をつくる部署ですね。僕自身は、はじめは全くリカちゃんに興味はなかったんです。やっぱり男ですから、「リカちゃん」なんていうお人形を触るには抵抗がありましたね。ただ、そこで、当時大ブームだったジェニーに比べてすっかり人気が落ちていた、「リカちゃん」の売り上げを立て直すという「ミッション」を果たしていくうちに、なぜリカちゃんがカワイイと思われているのか、なぜ人にカワイイという気持ちが必要なのか?考えるようになりました。それがきっかけですね。


「想い出のリカちゃん」

タケヤマ・ノリヤ 著 : 「想い出のリカちゃん

JUGEMスタッフ - リカちゃんはなぜカワイイと思われるのでしょうか。

タケヤマ・ノリヤ - まず「キャラクター」には世界観が大切な要素だと思いました。「キャラクターとして」女の子の憧れの存在・・・セレブな暮らしや、素敵な家族がいるという設定こそが、リカちゃんの「カワイイ」を形作る一つの要因だと知ったんです。そこで当時のスタッフはたくさんの会議を経て、もともと設定にあったリカちゃんの「パパ」を初めて商品化したんです。「パパ」というサブキャラクターの登場によって、ますます「リカちゃん」という主人公が輝きだしたんです。

(リカちゃんはフランス人のパパと日本人のママのハーフであり、東京に住むリカちゃんは、何らかの事情で祖国に帰ってしまったパパとは一度も会ったことがないという設定だったそうです。つまり、パパは「人形」としてはそれまで存在しませんでした。)

詳しくは ⇒ タケヤマさん著:「想い出のリカちゃん

「パパ」登場によって「リカちゃん」は復活しました。大きな「リカちゃんハウス」のような商品先行から、世界観を大事にすることで「リカちゃん」の「カワイイ」が再び輝きだした瞬間を目撃しました。

JUGEMスタッフ - キャラクターの世界観を広げることによって、リカちゃんは復活を果たしたわけですね。

タケヤマ・ノリヤ - あくまで世界観や設定はメーカーや作者側の一方的なメッセージです。次に大切なのもの・・・もしかしたら一番大切なものかもしれません。その世界観や設定を「カワイイ」と思って手にしていただいた女の子、メーカー的にはお客様といえます・・・が、リカちゃんに初めて触れた瞬間や誕生日に買ってもらった思い出、のようにその人だけにある嬉しさや感動がプラスされる、更に「カワイイ」存在になるのではと思います。


日本人特有のカワイイ

アニミズムにみるカワイイの原点

JUGEMスタッフ - 日本の「カワイイ」は英語でいう cute や beautiful よりも、もっと広く多く使われますよね。日本人が「カワイイ」を多用したり、「カワイイ」ものにひかれたりするのはなぜなんでしょうか。

タケヤマ・ノリヤ - それも「想い」が関係してると思いますね。たとえば日本人は瞬時に こういうもの(ドクッキノを指して) を見るとこのキャラクターが何を考えているのか、どういう子なのかっていうことを考えると思うんですよ。

増田セバスチャン - キャラクターに込める想いっていうのは日本人特有だよね。

タケヤマ・ノリヤ - 言ってしまえばプラスチックの石油の塊なんですよね。おもしろくもなんともない。でも、その「もの」に想いをこめるんですね。

これは日本の古代宗教思想「アニミズム」に由来すると思います。山にも、川にも、海にも、生活の中にもたくさんの神がいて、何にでも魂が宿るという考えがあります。それがアニメーションなどの語源にもつながる「アニミズム」なんです。つまりは、自然や動物、妖精なんかも、そういうものがすべて人間と同じ心の動きをもつという感覚があります。日本で「カワイイ」という言葉が生まれ、その感覚からクリエィテブがされるのも、もともとのそういう日本の文化に根ざしていたんじゃないかと思います。

JUGEMスタッフ - カワイイの原点はすごく昔からあったということですね。

タケヤマ・ノリヤ - ボクは、昔から言い伝えられてきた神様や妖怪も、今でいうカワイイキャラクターと同じものだったんじゃないかと思ってるんですよね。当時の人たちは、こういう悪いことをしたらこういう妖怪がでてきてとか、こういう神様が怒ってとか、いましめや教訓をキャラクターを作って説明しているんですよね。「恐怖」がともなうモノノケなのですが、「カワイイ」が生まれる根本と発想は同じだと思います。

増田セバスチャン - 鳥獣戯画なんかもそうですよね。

タケヤマ・ノリヤ - そうですね。絵などのビジュアルを通じでメッセージを発してるんですね。そういう言葉や伝聞を・・・「言霊(ことだま)」を広めるために、キャラクターを作っていった。それが原点だと思っています。


「キャラクターたちが日本人の心を癒して、励ましてきた」
新しい日本の文化としてのキャラクター

こえだちゃんのリバイバル版「コエダリアン」

キャラクター文化

新しい日本の文化としてのキャラクター

JUGEMスタッフ - キャラクターには、そんな古い起源があり、歴史があるわけですね。

タケヤマ・ノリヤ - そうですね。
戦後リセットされた日本文化・社会で、マンガやテレビのキャラクターたちが日本人の心を癒して、励ましてきたんです。そして、今まではウルトラマンが終わったら全く違う新しいキャラクターを!、というふうに次々とキャラを消費してきたけど、これからは、過去の「想い出の中」でイキイキと生きている「こえだちゃん」があって、現在のコエダリアンがあるみたいな、先輩の功績や歴史を切り捨てるのではなく、「歴史を踏まえ受け継いだたうえで、新しいものを創らせていただく」というひとつの「文化」になってきているのではないかと思います。

ボク自身も、決して自分が新しいものをつくっているという認識はないです。これまでに先輩方が作ってきたものを大変僭越ですが受け継がせていただきながら、キャラクター文化の中で、自分の作品を生み出すことに従事させていただいてると思っています。キャラクター史というのはまだ本当に未熟で、誰も整理していないから、何を受け継ぐべきか受け継いでいるのか、手探りな方も多いかと思います。そうゆう意味でも、こうゆう話をまとめたり、探訪させていただきたいなあーと思ってます。


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