男子の新しいファッションをとらえたTUNEの誕生
JUGEMスタッフ - TUNEはどのように生まれたんですか?
青木正一 - 一時期、原宿にぼくがオシャレだと思う子がいなくなっちゃって、写真を撮らなくなっちゃったんですね。ストリートブランドを中心とした裏原系が流行ってきて、それに合わせて若い女の子もシンプルなファッションをするようになって、どんな服着てもかっこいい子しかかっこよくなくなっちゃって・・・『FRUiTS』にとって苦悩の時代でしたね。でもさっき言ったように、「記録する」という目的があるので、違うスタッフに撮ってもらって『FRUiTS』は続けていたんですが、ここ2,3年で、突然男の子のファッションが裏原ばっかりだったものから『TUNE』に出ているような子たちがでてきたんです。
JUGEMスタッフ - 突然TUNEのようなオシャレな男の子たちが現れた?
青木正一 - 『TUNE』の創刊号見てもらえるとわかると思うんですけど、裏原全盛期に、もう10年くらいあの格好していますみたいな完成度でいきなり現れたんですよね。今でも何でだろうってすごく不思議なんですけど。それで、『FRUiTS』を作ったときと同じように、すごい子たちが出てきたって感覚をおぼえて、『TUNE』をつくりました。『TUNE』を発行したことで、裏原全盛期には、はあんな格好して歩いてたら笑われるようなファッションの子が、今は格好いいっていわれるようになってきましたよね。
ファッションは気合だ!?
JUGEMスタッフ - ファッションを楽しむ上で、似合う・似合わないは大事ですか?
青木正一 - 似合う・似合わないってぜったいありますよね。そして似合う、似合わないというのをわかってる子がオシャレな子なんですよね。
JUGEMスタッフ - FRUiTS や TUNE に載ってる子はわかってる子?
青木正一 - 彼ら自身も自分に何が似合うかわかってるし、周りのぼくらから見ても「この子自分に似合うものをわかってるな」って思う子たちですね。 でも、最初は似合わなくても、半年くらい突き通すと不思議と板についてきたりするし、何回か失敗することも大切だと思います。
JUGEMスタッフ - FRUiTS に載っていた子たちも最初から似合っていたわけじゃない?
青木正一 - あの中にはすごい子がいるので、最初から完璧だった子もいますね。でも、確かに、ああ、あの子昔はださかったなって子もいますね。
増田セバスチャン - そういうもんですよね。失敗するのが大事。
青木正一 - でも、よく言うのは、洋服は「気合い」で着るんだって。たとえば雑誌に載っていたものをいきなり買ってきたら最初はおどおどするんですよね。大丈夫かな、似合うかなって。そこをむりやりこれは誰がなんと言っても着るんだ!似合ってるんだ!と思うと似合ってくるんですよ。どうしても着たいっていう「気合い」が説得力になるんです。思い込みが大事なんですよね。
増田セバスチャン - たしかに、自分に置き換えて言うと、反対に服に自分が影響されることも多いかも。あとは、本当に着たい服だったら体型だって変えられますよね。
青木正一 - 多分服にあわせて、髪型とか化粧とか、他のコーディネイトを徐々に変えていくっていうのがあると思うし、自信のある表情というのも大きいですよね。
ファッション人類学者・青木正一
青木正一 - 服とか靴って、新品そのまま着るのって難しかったりしますよね。昔白いスニーカーをかったら砂場行って汚したりして。それは、決めすぎるのがかっこ悪いっていう、江戸文化なのかもしれないけど。
JUGEMスタッフ - 世界の子たちは違う?
青木正一 - ああ、いや、でも、さっきいった「おしゃれレイヤー」の子たちには共通しているかもしれないですね。あえてはずしていくという。
増田セバスチャン - 青木さんの話聞いてると、フォトグラファーや編集者じゃなくて、ファッション人類学という感じがしますね。ファッションの裏側をみているし。きっと中世時代に生まれていても同じようなことしちゃうんじゃないかな。庶民のファッションを記録します!みたいな。
自由なファッションを楽しんでほしい
JUGEMスタッフ - 若者へのメッセージをおねがいします。
青木正一 - 『FRUiTS』の初期のころには、いつも「原宿フリースタイル」と書いていたんですが、それを目指してほしいですね。
JUGEMスタッフ - 原宿フリースタイルとは?
青木正一 - 自由なファッションかな。人のファッションや多様性を受け入れるのも大事。人をすぐ笑ったりとか、そういう恥ずかしい行為を行わないで欲しいですね。
増田セバスチャン - これから原宿はどうなるんでしょうかね?
青木正一 - きっとよくなりますよ。若い子にがんばってもらわなくっちゃ。
増田セバスチャン - ぼくは原宿に24歳で店を開いたんですけど、今は、家賃がすごく高騰しているので、若い子がお店を開ける場所がないんですよね。
JUGEMスタッフ - 若者が入りやすくなるような援助を大人がしていかなきゃということですかね。
増田セバスチャン - 大人が上から押し付けたものではなくて、あくまで若者から発信されるものを援助しなくちゃ。
青木正一 - 原宿だからこそ、それは必ずやらなくちゃいけないですね。
JUGEMスタッフ - 原宿を変えていただけると?
青木正一 - ふふ(笑)
増田セバスチャン - ホールイベントは今回で終了ですが、そのつもりで今後も色々な形で H.U.G. シリーズは続けて行きます!
取材・写真 / jugem, デザイン / 6%DOKIDOKI
撮影場所 / HI.SCORE Kitchen
Profile : 青木正一
ストリート・ファッションに焦点を当て、ロンドンを中心に活動し始めた80年代半ば、雑誌『STREET』を創刊。その後、原宿ファッションが歩行者天国と共に発展する中、97年に『FRUiTS』を創刊し、世界中に原宿(HARAJUKU)ファッションを認知させた。現在は男性版 FRUiTS ともいえる『TUNE』も加わり、3誌共にカリスマ的人気を誇っている。
2007年から5回にわたってお送りしてまいりましたホールスタイルのイベントは、vol.4をもって一旦終了ですが、今後も色々な形で H.U.G.(ハグ)として若者のクリエイティブを応援していきます!
進捗は H.U.G. ブログや増田セバスチャンのブログをチェックしてくださいね。