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JUGEMテーマ:ファンタジー小説※※※ がらんどうの砂の城。風が泣くわけがわかる気がした。彼らは泣いている。いかないでと泣いている。シェーダは走った。大きな孤独の奈落に突き落とされたような不安に駆られて、それでもだからなんだと走り続けた。 「エヴィン! どこなの……!!」 自分の呼び声がまるで途方に暮れた子供のようなそれであることにシェーダは舌打ちしていた。部隊に命令は下した。あとはセルティがうまくやるだろう。表では既に配下と黒装束達の交戦が始まっている。風の泣き声に乗って剣戟と怒号...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.11 Thu 09:01
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 かつて人の肉体だったものは次々形と色を変え、一つに繋がりわかれては蠢き、そしてまたぶくぶくと膨らんで浅ましくのたうち、おどろおどろしく蔓延った。そして異形の生物を形作っていく。老人の姿をしていた時は背だった場所からは真っ黒にべたついた翼が粘液をまき散らしながら広がり、不気味に脈打つ黒い管が無数の蛇が如く床を這う。老人の顔はそのままなのが何よりおぞましかった。 そこから異様に長く黒い首が伸び、先端で老人の顔が気狂いのような哄笑をあげた。一頭の竜のような形状、そ...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.10 Wed 09:33
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 夢だったのかそれとも幻なのか、光に満ちた空の中で小さな君と遊んだ記憶がある。夢の中の自分の姿はとても幼く見慣れない姿をしていて、それでもそれが自分だと理解出来たのはその子供が金色の髪と青い瞳をしていたから。そして君は銀色の髪と緑色の瞳をしていた。二人はとてもそっくりで、まるで一対の双子のようだった。その時自分は君が女の子だなんて思っていなかったし、自分が男であるということも意識のうちにはなかった。ただ一緒にいるのが楽しくて二人でいたそこは多分楽園だった...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.09 Tue 13:16
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「ローゼ……!」 そしてエヴィンは誰にともなく叫んでいた。 「どうして……どうして昇天させてやらない! ローゼはずっと、ずっと焦がれる太陽を見られないまま、暗黒の闇夜で一人眠っている…… 彼女は一人きりだ! 地下の暗闇で、ずっとずっと一人きりだ! 百年も……百年間も……!!」「……その通り。ですから、太陽をさし上げたいと思った」 エヴィンはビクッと顔を上げた。どす黒い怨念が如きなめらかな声が、暗闇から静かに轟いてきた。 「馬鹿な……」「だから私は、今までその為だけに生きてきた。...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.05 Fri 00:12
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 何処かで夢見ていた。手を携え、ローゼと共に首都に凱旋し。日に日に健康になる彼女を妹のように慈しみ、馬車に乗せて街のあらゆる場所に案内し、欲しいものがあったら買ってやり。 メイド頭のマキラが育てた庭の花を見せたら彼女はどんなに喜ぶだろう。そうして学校に通うようになれば、友達も出来、いつか出逢った誰かと恋をして……。 蒼き瞳に涙が溢れた。 頬の涙のつたった跡が熱かった。 どこにでもある当たり前の幸せ。 友と語らい、共に歩き、どこへでも行ける足を持ち、明日を夢見、...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.04 Thu 09:34
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 ※※※ エヴィンはしばしその場に立ち尽くした。一切の言葉が胸に浮かばなかった。何もかもが真っ白に吹き飛んだ荒野に独り取り残されたようだった。 去来した衝撃の正体は驚愕でも恐怖でもなかった。 言葉を交わし、手を繋いだ。彼女は口づけてくれたし、抱きしめてもくれた。全身で自分を愛してくれたあの少女の暖かさは、全て虚像だったのか。 ローゼ。ローゼ……。 その名を心で呼び続ける。砂礫都市のすべての花が枯れた理由がわかるような気がした。目の前の古びた小さな...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.03 Wed 14:30
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「エヴィン様はどうやって……何処からここに入ったんですか?」「上からだな。ルーヴェンスは空から降り注ぐものには無警戒だったたらしいなあ」「……上? ……エヴィン様には背中に羽根でもおありになるのですか?」「あったら苦労はしなかったがな! ……で、ここは一体なんなんだ。お前の名は?」 エヴィンの言葉に男は強い瞳で頷くと「こちらへ」と少年騎士を誘った(いざなった)。エヴィンは素直にそれについて歩きついた先に、草に埋もれた地下への入り口があるのを見つけた。わだかまる闇に怖気が...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.02 Tue 08:08
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 自分が生まれてきてよかったのか、そんなことを真剣に考えている時がある。自分がここにいることは本当に正しいのか、時期や場所を間違えてはいまいか。それとも自分の存在そのものが罪なのではないか……。 どうしてそんなことを思うのかはよくわからない。ただ自分が存在しなければ笑顔でいられた人がいる、その事実が何より狂おしく、どうしたら取り返しがつけられるのかと、いつもそんなことばかり考えてきた気がする。だから力が欲しかった。誰かのために戦える力が。そうしなければ自分がこの...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.10.01 Mon 12:08
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 老人の哀れな悲鳴が響いた。きつく水の流れにまかれ呻いている老人の姿を、ティルラドは瞳をすっと細めて見咎めた。具現した竜の咆吼が地鳴りとなって尖塔を揺らす。ティルラドは満足げに笑い、体の動きを束縛されて床に倒れ込むしかない老人の頭を思い切りブーツのかかとで踏みつけていた。 「……俺の背後をとろうとしたね。そのような真似は許さないよ。あの世で自らの不敬をわびるがいい。ああそれとも、お前にはこの現世(うつしよ)こそがあの世の地獄に等しいか、哀れで愚かな化け物よ!」 ...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.09.21 Fri 12:44
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 男は夢から覚めたような声で、 「……倒して、下さる? あなたが? あの化け物を? 本当に?」 と、語りかけてきた。 ティルラドは頷いて返す。 「約束するよ。だから教えて。ルーヴェンスはどこ? 闇雲にこの広い城を探し回っていては朝になってしまう……その前に!」 セルティが部屋から消えたこと。それもルーヴェンスの仕業には違いない。その上で厄介なことだが、ルーヴェンスの気配はティルラドにすら感じ取ることが出来ない。意識もしていなかったが、いつもそうだった。奴の存在は...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.09.20 Thu 16:44
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