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鉄コン筋クリート プロデューサー 田中栄子インタビュー

義理と人情とヤクザの街・宝町で生きる少年、クロとシロ。親のない二人は、この街で自由に生きていた。
しかし、謎の男・蛇によって企てられる実体の見えない「子供の城」建設プロジェクト。
いつしか命さえも狙われるクロとシロは、この街で生き延びることが出来るのか?

鉄コン筋クリートは、10年以上も前にビックコミックスピリッツに連載された松本大洋原作の伝説的な作品。今もなお根強い人気を持つこの作品が、ついに、映画化されて12月23日から劇場公開!

JUGEMでは、鉄コン筋クリートのブログテンプレート配布に伴い、本作でアニメーションを担当したSTUDIO4℃の田中栄子プロデューサーにお話を伺いました。


STUDIO4℃ 田中栄子プロデューサー
まず、今回の作品「鉄コン筋クリート」の原作との出会いについて教えてください。
鉄コン筋クリート第一巻 「MEMORIES」(※1)という劇場作品を創っている制作の現場でしたね。ビックコミックスピリッツに連載された第一話です。
そのときの第一印象を教えていただけますか。
最初、電柱の上にクロが立っていたんですね。ものすごく広い空間で、風がビューっと吹いていて、いろんなモノが蠢いている町を少年が腕を組んで見下ろしている。
「うわー、この少年が、これから何をはじめるんだろう」ってワクワクしました。
見た瞬間、映像のイメージは広がったのですか。
広がりましたね。あの一枚の中に映像がありますよね。たぶん、私だけじゃなくて、あれを見た人はみんな、町のニオイとか、風とか、いろいろ感じたと思うんです。
プロデューサーとして鉄コン筋クリートに参加されていますが、具体的にどういった役割だったか教えてください。
まず、Beyond C(※2)では、この企画を立ち上げて、資金調達をして、製作委員会を立ち上げました。
STUDIO4℃では、スタッフを集め、制作をスタートさせて、納品をしました。
納品後は、この作品を様々なメディアに売っていく、ということをしています。

最初から最後まで関わっているわけですね。

特に制作のプロデューサーとしては、スタッフィング、キャスティング、シナリオの編纂、どういう世界観にするか、どういう色彩設定にするか、といった作品イメージの決定に携わっています。
制作チーム全体を、同じ着地点に向かわせるということですね。


舞台である宝町は、原作では「たからちょう」ですが、本作では「たからまち」となっています。理由を教えていただけますか。
「ちょう」っていうのは、区分ですよね。
原作では、地名としての意図で使っていらっしゃったと思うんですが、私たちは「人が住む」ということを考えて、これを「まち」と呼びたいと考えたんですね。
原作者の松本大洋さん(※3)にも相談し、本作では「まち」と呼ばせていただいてい ます。


劇中に登場するテーマパーク、「子供の城」のポスター。ここまでディテールにこだわって制作されている。
地図がとても綿密だったのですが、参考にしたモノはあるのでしょうか。
実は、山手線のラインが川となった構図ををモチーフにしています。

アニメにするには、具体的にしなければいけないので、「シロとクロはここに住んでいて、見つかってはいけないから、裏は工場地帯にしよう」とか、「バスはこのあたりを走っていて・・・」とか、かなり綿密に話をしました。


劇中に出てくる看板も、細かいところまで創り込まれていましたね。
木村さん(※4)が、吉祥寺近辺とか、昭和の写真集とかを参考にしながら、この元気で力強い、おもちゃ箱をひっくり返したような、生命力に溢れる看板を創ってくれたんですね。

実は、「あおい湯」とか「二宮自動車」とか、いっぱい隠し看板が入っていますよ。是非、探してみてください。
今回、メインスタッフは全員、監督か演出を経験したことがある豪華スタッフですが、彼らをまとめるのに大変だったことはありますか。
彼らには、すごいパワーと才能があります。自分達でどんどんクリエイトしていくので、とてもエキサイティングでした。
いろんな意見が出てきて、その全てに意味があるんですね。とても素晴らしい時間でした。
大変だと思ったことはないですよ。
声優については、スムーズにキャスティングできたのでしょうか。
はい。誰にも断られることなく、全員イメージ通りにキャスティングできました。

岡田さん(※5)は、自分から「やりたい!」と、手を挙げてくれたんですね。実は、すでに配役がほとんど決まっていて、まだ配役が決まっていないのはバニラしかなかったんですけど、ピッタリでしたね。
本当、運命のようでした。
原作のコアなファンへのアプローチと、本作ではじめて鉄コン筋クリートに触れる方へのアプローチのバランスはどのように考えましたか。
もちろん、原作のファンの期待を裏切らないように、ポイントを押さえてきちっと表現することは心がけました。同時に、本作で鉄コン筋クリートにはじめて触れる方のことを考え、出来る限りわかりやすさを重視しています。

原作では、じっくり読みながら理解していくことができますが、映画ではサクッと進んでしまいます。

どうすれば、テーマを伝えられるのか、ずーっと考えていました。
たとえば、鈴木の一言の台詞を考え出すのに、一ヶ月かかったこともあります。
アニメを一本創るっていうことは、相当な覚悟がいると思いますが、創り出すことの醍醐味を教えていただけますか。
自分達の細胞一つ一つの中に、何かを創りだしたいっていう願望があって、自分が存在しているっていう意識があるんです。

何かを創るってことは、きっと、人にとって基本的な欲望であり、可能性であり、そこに喜びを感じるんでしょうね。

実は、そんなに特別なことではなくて、とてもフツウのことだと感じます。


鉄コン筋クリートは、STUDIO4℃にとって、どんな作品になりましたか。
この作品は、企画がいろんなところから出ても具体的に動くことがなかったハードルの高い作品だったんです。
その作品を、どうすればエンターテイメントとして、きちっと世界中の人に観てもらえるか、とても真剣に考えたんですね。

プロデューサーという役割以上に、この世界の中にどっぷり浸かって。STUDIO4℃のスタッフ全員が、力を出し切って。

私達の存在全てを証明する作品になったと思っています。

STUDIO4℃の、集大成ですね。