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掌編。超短編。など、名前は様々。
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花は散るもの枯れるもの

JUGEMテーマ:ショート・ショート    駅前の花壇の縁に君は腰掛けている。両手に紙のカップを持っている。そして夜空を見つめている。何かを探している横顔に見えたりもするし、何かと見つめ合っている横顔にも見えたりする。無言で愛を伝え合っているようにも見えたりして、僕はザワザワした気持ちになったりもする。君が僕に気づきカップを掲げる。僕も軽く手を上げ君に近づく。風はなく、どこかふんわりとした夜だ。月も星も見えないけれど、街路灯がレトロな銀河を想起させる。レトロな銀河というのがなんなのか、...

pale asymmetry | 2024.03.18 Mon 18:20

beautiful number

JUGEMテーマ:ショート・ショート    リビングの丸いテーブルの真ん中に、アップルパイがのっかっていた。それはテーブルの正確な中心にあるように見えた。リビングの部屋中にアップルパイの良い匂いが漂っていた。テーブルの前では彼女がクッションに半身を沈ませている。そして彼女が僕を見上げて言った。 「3.14と3.16は、どちらが美しいと思う」  僕は彼女の隣に腰を下ろして、考えてみる。これは「ただいま」を言うより重要なことだろう。だから彼女も「おかえり」の前に尋ねたのだろう。 「うーん、ど...

pale asymmetry | 2024.03.14 Thu 20:43

blue and velvet

JUGEMテーマ:ショート・ショート    青い光で目が覚めた。彼女がベッドに腰掛けていた。カーテンが開いていて、朝の日差しに斜めに差し込んでいる。その日差しと僕の間で彼女が青いグラスを翳している。青く彩色された光が僕の顔に落ちている。青いフィルターで僕を変換しようとしているようだった。 「何を飲んでるの?」  渇ききった喉に、僕の声が引っかかる。そんな僕を見つめて彼女が小さく笑う。 「おはよう。ミネラルウォーターよ」  彼女がグラスに口を付け、そのまま僕に口づけする。冷たい水...

pale asymmetry | 2024.03.11 Mon 18:54

walls

JUGEMテーマ:ショート・ショート    彼女はリビングでタブレットじっと見つめていた。とても真剣な表情で、世界の行く末を思案しているようだった。 「ただいま」  僕は鞄とジャケットを放り出し、彼女の隣に腰を下ろした。彼女はソファーに背中をあずけ、床に腰掛けていた。フローリングの床は冷たく、少し湿っているように感じた。外では細かな雨が降り続いていて、部屋の湿度も高かったのだ。 「おかえり」  タブレットを見つめたまま、彼女が応える。 「何を見てるの?」  尋ねると、彼女が...

pale asymmetry | 2024.03.07 Thu 18:25

angel skull

JUGEMテーマ:ショート・ショート    小袋を持って、僕は歩いていた。海沿いの道、午後の遅く。隣には甥っ子がいる。彼はリュックを背負っている。中には水筒が納まっていて、水筒には紅茶が満たされている。僕の小袋にはビスケット。僕らは近所の小さなビーチに向かって歩いている。傾く太陽を眺めながらティータイムを過ごそうとしていた。甥っ子の提案だ。今日みたいに少し雲の多い午後には、そういうことが必要なんだと彼は力説した。 「そういうのはね、世界の駒なんだよ」  甥っ子は何故か胸を張ってそう...

pale asymmetry | 2024.02.28 Wed 18:57

土曜日の素描

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「その塔は、砂漠の真ん中にあるんだ」  あなたは窓を開け、ひんやりとした風を受け入れる。 「とても広大な砂漠だ。だから塔から脱出することは困難を要する」 「じゃあ皆どうやって塔にやって来たの?」  私が問うとあなたは頷き、窓を閉めた。私に頷いたのか、風に頷いたのかよく解らなかった。そのまま、あなたは私の隣に腰を下ろす。私たちはリビングのソファーにもたれて、並んで床にお尻を付ける。ひんやりと固い床は、心地良かった。エアコンの暖房が強すぎる...

pale asymmetry | 2024.02.24 Sat 18:48

Owl\'s smile

JUGEMテーマ:ショート・ショート    ソファーに寝そべり、彼女がスマホを覗き込んでいる。いつからそうしているのか、リビングはもう薄暗くなっているのに照明が灯っていない。 「ただいま」  鞄を下ろして、僕は部屋の明かりをつける。一瞬無数の煌めきが弾け、天国が翻って消える。 「おかえり」  彼女は寝そべったまま、スマホをじっと見つめている。よく見ると右耳に何かが突き刺さっていた。そろりと近づきスマホを覗くと、彼女の外耳が映し出されていた。カメラ機能のついた耳かき棒のようだ。 ...

pale asymmetry | 2024.02.17 Sat 18:52

浮遊する、キスをする

JUGEMテーマ:ショート・ショート    冷えたノイズはあったけれど、そこに言語はない。いや、冷えたノイズよりも歌の方が強かったはず。とても情熱的な歌。けれどその歌も言語によって構築されてはいない。あるいは、それは私が見知らぬ言語なのだろうか。いいえ、きっと違うはず。それは言語よりももっと高度なインフォメーション。歌というフレームに無理矢理落とし込んでいるのは、私のエゴなのかも知れない。だから揺らいでしまうのだろうか。それともそれは生命の宿命なのだろうか。私は確かに揺らいでいる。歌が...

pale asymmetry | 2024.02.12 Mon 19:19

metal owl

JUGEMテーマ:ショート・ショート    ゴーストの様な雪が、世界の音を霞ませている朝に甥っ子がやって来た。 「この子も雪にやられてしまったみたい」  分厚い手袋で覆われた両手には、金属製のフクロウが抱えられている。そこにも薄らと雪が積もっている。 「大丈夫? 寒くない?」  甥っ子の頭の上にも、コートを纏った両肩にも雪が積もっていた。 「うん、大丈夫。雪は楽しいものだから」  甥っ子は笑い、身体を揺さぶって雪を払う。上手くいかなかった分は僕が手で払い落とした。そしてスト...

pale asymmetry | 2024.02.06 Tue 18:25

ash gray talk

JUGEMテーマ:ショート・ショート    午後の空は全面アッシュグレーだった。午前中の青空はどこにも見当たらなかった。その空は何だか世界を狭くしているような感じがした。私たちの気持ちを窮屈にしているような気もした。 「くだらないな」  彼が呟いた。長い坂道を上りながら。風は南から吹いていて、坂道は急傾斜で、私たちは急ぎ足で、曖昧な時間はだらだらと停滞している。 「もうどうしようもない」  彼がまた呟く。微かに笑っていたけれど、たぶん怒っているのだろうと思った。そういう気配を感...

pale asymmetry | 2024.01.30 Tue 20:52

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