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郷土のラーメン
歴史と風土が地域ごとに育んできた個性豊かな食文化は、いま危機的な情況にある。食べものが無国籍で「世界どこでも同じ味」でも、おかしいとは思わなくなった、わたしたちの舌。ラーメン一杯のなかの食糧自給率はわずか７％なのだ！ その地域で育まれてきた、その地域に固有のラーメンは、次第に東京風の店に押されている。それでも郷土のラーメンは生き残っている。「インパクトのある」ラーメンはいっとき流行りはするけれど、やがて地元のラーメンに帰ってくる。その土地には、その土地のスタンダードなラーメンがある。まさに、ラーメンは郷土料理なのだ。 この列島には、地域ごとにその風土と食文化を背景とするラーメンがある。これをここでは「郷土のラーメン」と呼ぶことにしよう。 ラーメンの美味い不味いの尺度は一様ではない。土地に根ざした食文化を背景に、土地ごとの尺度がある。このテーマでは、「郷土のラーメン」を見つめなおしていこうと思う。
郷土料理
その土地には固有の風土と、その風土が育んだ食の文化がある。気候などの自然条件が食材の恵みをもたらしたというだけではなく、この食材を活かす知恵を幾百年もかけて伝えてきたということじたいが、ひとつの文化であろう。 「身土不二」という言葉がある。人というものは、風土と分かちがたく結びついている。人もまた、土地が育てたものの一部であれば、その風土が生んだ食べ物を、その風土に固有の方法でいただくのが、もっとも理に適っている。そういう意味では、人間の躰こそは風土がつくりあげた最たるものだ。 郷土料理には季節がある。それをいただくのに相応しい祭りや行事があることも多い。その土地の旬の食べ物を､その旬にいただくことを､われわれは作法とともに伝えてきた。 ここでは､郷土料理を食文化という観点から取り上げることとする。
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