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JUGEMテーマ:ショート・ショート フラスコの中では二匹の金魚が泳いでいる。けれどその金魚は実体を有していない。それはホログラムだった。だからフラスコも本物のそれではなく、内部にホログラムを映し出す装置で、フラスコのような見た目をしているだけだった。二匹の金魚は金と銀と朱と黒の色彩を纏い、それを錦の紋様と呼んで良いのかはよく解らなかったけれど、綺麗だった。僅かに煌めいて見えるのはホログラムの性質ではなく、窓から差し込むやわらかい陽光のせいだった。それは決して強くない日差しだった...
pale asymmetry | 2026.03.03 Tue 18:10
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それは本当にささやかな事象で、些末な事象なんだ」 僕は強い日差しを眼差しで追いかけながら口にした。 「つまりは小さな事象ね」 彼女は水平線に目を向けて、まるで啓示のように言う。「小さな」という表現が適切なのかどうかは僕には解らなかった。けれど彼女がそう言うのなら、それはそうなのだろうと思った。僕は「小さな」事象について語っていたのだろう。 「失われたとしても、世界が傷つくことはない」 言いながら、僕は足先を軽く跳ね上げる。裸足...
pale asymmetry | 2026.02.24 Tue 18:00
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「風が南に変わったよ」 彼女が僕を揺さぶり耳元で言う。僕はまだ毛布に包まっていたかったけれど、彼女はそれを許してはくれなかった。毛布を捲り、窓を開け放つ。早朝の風は南風であっても冷たかった。 「深呼吸を促されているのかも」 彼女がベッドにダイブして、僕の傍らに寝そべる。僕は汗を掻いて少しべたついていたけれど、彼女はお構いなしに躰を擦り寄せてくる。その躰もヒンヤリとしていた。 「儀式が必要かな?」 少しはしゃいだ声で囁き、彼女が僕...
pale asymmetry | 2026.02.23 Mon 20:22
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「例えば私たちは花になることが出来る」 彼女はそう言って、街路樹の足元を指差す。 「仄かに紅い花になって約束することが出来る」 確かに少し先の街路樹の足元には花が咲いていた。けれどその花は、鮮やかな黄色だった。もちろん例えばの話なのだから、色が一致していなくても良いだろう。重要なのは花の色ではなく、約束の部分なのだから。 「例えば私たちは蝶になることも出来る」 彼女が斜めの宙を指差す。 「淑やかな白い蝶になって、攪拌することだ...
pale asymmetry | 2026.02.16 Mon 15:33
JUGEMテーマ:ショート・ショート 朝とも夜とも呼べないような時刻、僕らはそういう時刻を漂流する時刻と呼んでいる。空が澄んでいて、冷気が地面から立ち上っていくような日は、とくに濃厚な漂流する時刻と呼んでいる。今日がそんな日だった。彼女に揺り起こされ、僕らは近所の小さな港まで散歩に出かけた。たっぷりと着込んで、ポットに温かな紅茶を入れて。 「月が、滴ってるよ」 彼女が東の空を指差す。中天にはまだ遠い位置に、痩身の月が龍のように立ち上がっている。僕には上昇しているように見えた...
pale asymmetry | 2026.02.13 Fri 18:13
JUGEMテーマ:ショート・ショート 風は真南から吹いていて、心地良い違和感があった。やって来る遙かな向こうにも、吹き抜けていく遙かな向こうにも、その違和感はあった。そこには時間が織り込まれていて、未来と過去と現在が綯い交ぜになっているような気持ちの良さだった。つまりその風は、時間なんて本質的に存在しないのだと感じさせるような風だった。 「僕らはどこにも生きていない」 僕は思わず呟いた。声は霧雨に濡れそぼって、地面に落ちた。 「生きてるよ。今ここに」 彼女が地面近くの...
pale asymmetry | 2026.02.06 Fri 18:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート 彼女がカップアイスを買って帰ってきたので、リビングで並んで食べる。濃厚なバニラ味のアイスはとても美味しかった。積乱雲を食べているような気分になった。高空まで舞い上がれる鳥ならば、こんな感覚を得ることができるのかなと、ふと思った。 「このアイスを買うのに寄ったコンビニでね」 隣の彼女がカップを見つめたまま話し出す。 「レジの店員さんが浮き上がった声をしていたの」 そう言ってスプーンを口に運び、彼女は穏やかに笑う。 「浮き上がる声?...
pale asymmetry | 2026.01.30 Fri 18:00
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「時間って、どんな触り心地だと思う?」 僕らはリビングの窓辺でプリンを食べていた。窓は開け放っていて、北風が流れ込んでいる。その風はヒンヤリとしていたけれど、風速はとても穏やかで、心地良い感じだった。もちろん今日の日差しが強く鋭かったからというのもある。だから僕らは比較的薄着で、窓辺に半ば寝そべりながら落ち着いていた。 「時間には触れられないね」 僕は空を眺めながら長閑に答える。パステルカラーのブルーに色づいた空は平面的だった。そこで...
pale asymmetry | 2026.01.25 Sun 19:27
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「寒いね」 彼女がコートの襟を立て、桜を見上げる。 「大寒だからね」 僕もジャケットの襟を立て、首を竦めて桜を見つめる。 「寒いときはね、何処かの宮殿で猩猩が踊っているんだって」 「猩猩? 赤毛の猿みたいなあれ?」 「そう、その猩猩。その猩猩が、宮殿の秘蔵のお酒を飲んで、良い気分になって踊っているんだって」 北からの風が吹き抜ける。僕らは躰を寄せ合う。 「猩猩が踊ると、どうして寒くなるの?」 「知らない。それとも逆だった...
pale asymmetry | 2026.01.20 Tue 18:26
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「今日ね、春に出会ったよ。季節の春」 家に帰って来るとすぐに彼女はそう話し出す。少し上気しているような表情で、ソファーに寝そべる僕に歩み寄る。僕の手からタブレットを丁寧な動作で取り上げると、ソファーの前に腰を下ろした。 「今日は心地良い陽気だったから?」 僕が尋ねると、彼女は首を振る。一瞬黙り込んで、明後日の方に眼差しを向ける。自分のなかにあるイメージを、どのように言語化すれば良いのかを考えているようだった。 「仕事の帰りにコンビニ...
pale asymmetry | 2026.01.14 Wed 18:15
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