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青年は船着場ぎりぎりまで小舟を近づけると、メイドにもやい綱をふわりと投げて寄越した。 メイドはやっとこそれを受け取り、ボラートにもやい綱を括って小舟が勝手にどこかへ行かないように、危なっかしい手つきでぎゅっと綱を締めた。 青年はそれを見届けてから、もやい綱伝いに接岸させ小舟を固定させる。そしてそのまま陸に上がった。 「ご苦労さまです!」 メイドが元気よく敬礼する。 「いやいやこちらこそ毎度のお出迎え悪いね」 ハハハッと快活に笑いながら青年が答える。 海の男らしい短髪で筋肉質な青年だった。冬を...
ADDと東京国のウォー | 2016.01.25 Mon 01:22
孤島の船着場にて 「ヨーソロー!」 威勢のいい男の声が波のまにまに木霊する。 メイドは急いで屋敷から走り出て、孤島の船着場で大きく手を振った。 「ジャンさーん!!!」 潮風が冷たく吹きすぎていく。 「おおーい」 ジャンと呼ばれた恰幅のいい青年は小舟を漕ぐのやめて、メイドに手を振り返した。 小舟には大量の食材が積み込まれていた。肉、魚、野菜などが山盛りに。
ADDと東京国のウォー | 2016.01.17 Sun 22:15
キッチンにて 「8人分のディナーですか。これは大ごとだ」 紙を見下げて苦笑いをしながら、老執事は目線をいつもの位置に持ち上げた。 「百夜さまがお友だちを招くなんてこと、あるんですね!」 両手で口を隠しながらメイドが言う。 老執事は「こんなことははじめてです」と嬉しそうに笑う。「坊ちゃんも昔のままではないということでしょう」 「百夜さまとディナーよ!!」 ジェノサイダー翔が叫ぶ。 「なんと珍しいことでしょうか……おっと、こうしてはいられません。さっそく準備をしなければ。ちょうど...
ADDと東京国のウォー | 2016.01.14 Thu 23:41
「ブッフォー!!! 百夜さまが私とディナーを食べたいなんてっ」 ジェノサイダー翔の奇声が部屋に響く。 「お前のためじゃない! 勘違いするな!」 白夜が心底嫌そうな顔で反論する。 「ヤダ、百夜さまツンデレ」 「うるさい!」 「はいはい、喧嘩ならよそでやって頂戴。私は今から招待状を送らなくちゃならないんだから」 「居場所はすでに割れているというわけか」 「もちろん。私の情報収集能力をなめないでよね」 「あとどのくらいかかる」 「10分でいいわ」 「ならばここで待たせてもらおう」 白夜は近くにあっ...
ADDと東京国のウォー | 2016.01.06 Wed 11:18
オーディオルームにて 内心、百夜の焦りは相当なものだった。 この屋敷は一見普通の洋館に見えるが実はそうではない。レンガの外壁をたたいて壊せば鋼鉄の壁が出てくるし、窓はダイナマイトの爆発でさえびくともしない強化ガラス。内部には秘密の部屋があり、鍵は外側からは絶対に開けられないつくりになっている。 しかもスイッチを押せば屋根から大砲が登場する、まさに武装屋敷だったのだ。立地は地図にない孤島の崖の上、屋敷の50メートル先に荒れ狂う海がある。 とはいったものの、この屋敷には弱点がある。それは監視...
ADDと東京国のウォー | 2015.12.29 Tue 07:55
廊下にて 「隠れてないで出ておいで、出ないと目玉をほじくるぞぅ☆」 ケタケタ笑いをしたジェノサイダー翔が十神家の屋敷を闊歩する。 広い廊下が決め込んだかのようにだんまりし、ジェノサイダー翔の笑い声と足音だけが木霊する。 よく切れそうなハサミを左右一つずつ手に持ち、まるで身体の一部であるがごとく自在に操っている。 左右の長い三つ編みはひどく乱れ、黒縁眼鏡の奥の瞳が怪しく赤く光る。 ジェノサイダーは踊っているようにもタコが海中を散歩しているようにも見える不気味な動きで白夜がいる場所を探っていた...
ADDと東京国のウォー | 2015.12.24 Thu 21:52
キッチンにて 「はあ・・・」 メイドは大きくため息をついた。 タケルと呼ばれた少年が風邪薬を飲んだコップを丁寧に洗いながら、眉間にしわを寄せて考えごとをしている。 蛇口の水が勢いよく音を立てて流れていく。 老執事がメイドのそばへ来て、そっと声をかけた。 「ミオさん。どうかなさいましたか?」 メイドは突然話しかけられたことに驚いて、ちょっと目を丸くしながら声のするほうを向いた。 「あ、ハオランさんでしたか。いいえ、その」 メイドはためらうように言葉を止めて老執事から目をそらした。 老執事は優し...
ADDと東京国のウォー | 2015.10.15 Thu 22:53
オーディオルームにて 「まったく」 白夜はため息をついて、広いソファの真ん中に腰を下ろした。 ソファの前には大きなスクリーンがあり、大型のプロジェクタがテーブルの上にある。 窓はスクリーンの左右に大きく広がっていて、そこから青空と離れの赤い屋根が窺える。 「寒いな」 白夜は備え付けの暖炉に目をやる。 季節は秋から冬にかけてで、外の気温もだいぶ寒くなっているが、屋敷にある部屋にはすべて暖炉が備え付けてあり、老執事が常にすべての暖炉に火をつけているはずであった。 例外に漏れず、このオーディオル...
ADDと東京国のウォー | 2015.10.11 Sun 23:38
「も、申し訳ございません! でもタケルくんが」 メイドが慌てて言い訳をする。 「ひとのせいにするな、メイドのくせに!」 少年が叫ぶ。メイドが知らんぷりしてそっぽを向く。 白夜が深くため息をついて二人を睨み据える。 「誰にかくまってもらっているのかわからんのか。おれが助けなければ二人とも絶望に殺されていたかもしれないんだぞ」 「はい、感謝しています」 体をすぼめてメイドが小声で言う。 白夜は無言のままの少年に狙いを定めてじっと睨む。 「すいません」 少年は落ち込んだふうに言う。 「なら二度とド...
ADDと東京国のウォー | 2015.10.08 Thu 21:31
リビングにて やっと静かになったか、と白夜はため息をつく。 屋敷に戻ってからというもの、静かに読書をしている暇もない。 屋敷には絶望から逃げてきた人間が何人か住み着いてしまっている。 しかもそのうちの一人は白夜の苦手な…… 「こらー! 待ちなさいっ」 先ほどのメイドが今度は大声で叫びながら走る音がする。 「やだね! 誰が待ってやるもんか!」 少年の声が答える。 「お風邪がひどくなったらどうするのっ。ダメよ、走っちゃ!」 「やーい、ここまでおいでー」 少年が舌を出してメイドを挑発...
ADDと東京国のウォー | 2015.10.05 Mon 22:44
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