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2人だけの勉強会は穏やかに進み、一時間ほどたった頃。「陽くんのバカ!」 突然の大声に、湊と漣は顔を見合わせた。「美羽?」「帰ってきたみたいだな」 急いで部屋を出て、階段を降りていく。階下では陽生と美羽が口論していた。「落ち着けよ、美羽」「ごまかさないで!」「だから、オレと湊はそんなじゃないって」 自分が話題に上っているとわかり、階段の途中で足が止まる。横に並んだ漣を見ると、ゆっくりと首を振った。 そのまま様子をうかがうことにする。「いつもいつも、お姉ちゃんのことばっかり話すじゃない」「それ...
TOWELL-CROSS | 2008.11.09 Sun 08:43
「同じ青なら、空の方が好きなんです」 答えになっていない言葉に、漣は納得がいかない様子で眉を寄せる。「まぁ確かに、空の青もきれいだけどな」 見透かすような漣の眼差に、体がこわばる。「そ、それにしても、本当にここで勉強していいんですか?」 話題を変えるための一言。 しかし漣の返答に、やめれば良かったと後悔した。「俺は別にかまわない。陽生たちを見ていてつらそうなのは、あんただからな」 たった半日、それもわずかな時間しか共有していない漣に、気づかれるとは思っていなかった。「どうして……」「見ていれば...
TOWELL-CROSS | 2008.11.05 Wed 14:25
漣の部屋は階段を登ってすぐだった。2階といっても屋根裏に近い構造のようで、扉は一つだけ。 湊はためらいがちにノックする。 コン コン ゆっくりと2回。 緊張する間もなく、漣から「入って」と返される。「おじゃまします」 部屋の中は、想像通りきれいだった。 きちんと整理整頓されているという意味だけでなく、センスの良さを感じさせる内装。全体をブルー系でまとめている辺りに、漣の性格がよく表れている。その一方で、木目の壁が素朴で温かく、クールすぎる印象をほどよく和らげ包みこむような安心感をかもし...
TOWELL-CROSS | 2008.10.24 Fri 23:47
正午になっても漣は帰らず、仕方なく3人で昼食を済ませた。 口数の少ない湊に対して、陽生たちは元気づけるようににぎやかに振舞った。気を使ってくれているのはわかったが、かえって湊の気持ちは沈んだ。「私、何やってるんだろ」 1人きりになりたくて、食器洗いを引き受けた。 陽生たちは近くの川へ遊びに出かけ、別荘内は静まりかえっていた。聞こえるのは鳥のさえずりだけ。慣れない孤独感に暗くなる思考を、必死に持ち直して作業を続ける。 クーラーから吹きつける風が少し肌寒い。そう思った瞬間、反射的に身震いしコッ...
TOWELL-CROSS | 2008.10.19 Sun 21:53
朝食の片づけが終わった頃、漣が2階から降りてきた。 挨拶もなしに洗面所へ向かい、そのままキッチンへ移動してしまう。コポコポという音を耳にしながら、湊たちは黙って様子をうかがった。「……もう起きてたのか」 コーヒー片手に現れた漣は、昨日と変わらず無愛想だった。「おっす! 朝食は?」「いらない」 陽生の声に間髪入れずに答え、 そのままイスに座る。それに続くように陽生、美羽が腰かけていく。 空いているのは漣の横だけになってしまい、湊はしばらく迷った。しかし、ずっと立っているわけにもいかず、ゆっ...
TOWELL-CROSS | 2008.10.13 Mon 15:21
「湊と漣って似てるな」 しばらく続いた沈黙を、陽生の唐突な言葉が破った。「そう?」「あぁ。マイペースというか、真面目というか。とにかく似てるよ」 漣の涼やかな視線を思い出す。 ――私はあの人ほど、他人を突き放した言い方はしないけど。 湊の無言を肯定と取ったのか、陽生はさらに続ける。「2人とも勉強好きだし」「好きで勉強してるわけじゃないわよ。陽生がやらなさすぎるの」「オレだってやってるぜ?」「ふーん。放課後の教室でノロケることを勉強というのなら、そうかもね」 陽生が大げさなくらい目を丸くする。「...
TOWELL-CROSS | 2008.10.06 Mon 07:49
小鳥の澄んださえずりで湊は目を覚ました。カーテンを透かす朝日が目にまぶしい。 「今日も晴れかな」 二度寝する気にはなれず、起き上がって着替え始めた。 久々の遠出で予想以上に疲れ、昨夜は食後の片付けもそこそこに寝てしまったらしい。夢を見ないくらい深く眠ったため、頭も体もすっきりとしていた。 ひと通りの支度を手早く済ませて、隣に寝ている美羽を見る。起きる気配はまったくない。 湊は静かに部屋を出て、そのまま洗面台へ向かった。顔を洗いさっぱりしたところで、ふと窓の外に目をやる。 予想通り...
TOWELL-CROSS | 2008.09.28 Sun 07:18
「そういや、漣はもう帰ってきたのか?」 ほぼ完成したカレーをのぞきこみながら、陽生がふと呟いた。 まさかこのタイミングで聞かれるとは思わず、少し言葉につまる。 「あんた達が買出し中に帰ってきたわよ」 「じゃあ、アイツの分も用意するか」 少し大きめの皿を4枚、陽生は棚から取り出し始める。それを手伝いながら、美羽は首をかしげた。 「漣さんにあいさつしなくて良かったかな?」 「大丈夫だろ。オレたちが帰ってきたのは気づいているだろうし、一人で過ごすのが好きなヤツだから」 「マイペースな人なんだ...
TOWELL-CROSS | 2008.09.21 Sun 07:32
陽生と美羽が帰ってきたのは、それから1時間後のことだった。 山のようなお菓子を誇らしげに広げる2人をあしらい、野菜や飲み物を冷蔵庫に入れていく。未開封のドレッシングやマーガリンなどが置いてあることに驚き、思わず賞味期限を確かめてしまった。刻まれた日付は、まだずっと先のものだ。 その後、陽生が持ってきたトランプをしながら、夕食までの時間を過ごした。 大富豪ゲームに夢中の2人はもちろん、先ほど出会った漣のことが気になっている湊も、勉強のことはすっかり忘れている。 あれから一度も、漣は湊...
TOWELL-CROSS | 2008.09.21 Sun 05:57
友人の八城惺架が描いてくれたイラストです! 彼女のHP(CROWN)は→にリンクしてあるので、ぜひ行ってみてください♪
TOWELL-CROSS | 2008.09.21 Sun 05:44
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