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―――ブルルゥゥゥン 「車……じゃない。バイク?」 静かな山奥には不似合いなエンジン音に、湊は周囲を見渡した。腹に響く振動が進行方向から近づいてきている。 立ち止まって目を凝らしていると、曲がりくねった道の先に一台のバイクが現れた。黒光りしている車体には、ヘルメットをした2人組がまたがっている。 少し先にあった民家の前でバイクは止まった。湊は思わず身を隠し、そっと様子をうかがう。 「きれいな人……」 後部座席にいた人物が、降りてヘルメットを外した。長い髪を耳にかける仕草がとても自然で似合っ...
TOWELL-CROSS | 2008.09.20 Sat 23:29
ひと通り整理を終えると、暇になってしまった。勉強する気にもなれず、畳の上にごろんと横になる。 近くに小川があるらしく、さらさらという音が心地良い。窓からは真っ青な空が見渡せる。 「散歩しようかな……」 ゆっくりと起き上がり、玄関へ向かう。履き慣れた紺色のスニーカーを突っかけて、少し重い扉を開けた。 「んー、いい気持ち!」 ぐっと伸びをして、新鮮な空気を胸いっぱいに吸いこむ。日差しはきついが、森林が多いためか暑苦しさはない。 「静かだなぁ」 誰もいない気楽さに促され、肩の力を抜いて歩き...
TOWELL-CROSS | 2008.09.20 Sat 22:38
別荘というよりペンションに近い建物の前で、湊たちの乗った車は止まった。 丸太小屋のような外観を3人で並んで見上げていると、駐車し終えた杉本父がやって来て、荷物を中へ運ぶよう指示される。 湊の予想に反して、内部は近代的な設備がそろっていた。自分たちで料理をしなければならないと言われていたので、家と変わらないキッチンに一安心する。 「わぁ、かわいい!」 「おばさんの趣味だよ。庭で育てた花を使ってるんだってさ」 壁に飾られたドライフラワーのリース。棚やテーブルに描かれたトールペイント。レー...
TOWELL-CROSS | 2008.09.20 Sat 22:28
「親父、こんなにスピードをだして大丈夫か?」 「まかせろ! 学生時代に鍛えた腕を見せてやるぞ!」 「見せなくていいから!」 杉本親子の会話をBGMに、車でゆられること3時間。窓の外には、絵に描いたような田舎景色が広がっていた。 「はぁ……」 青々と茂った田んぼを横目で追い越しながら、湊は深くため息をついた。 夏休みに入り、塾と自宅の往復しかしていなかった身には、じゃり道の細かいゆれが意外と堪える。 「お姉ちゃん、だいじょうぶ?」 横からのぞきこんできた美羽に、視線を移す。 「大丈夫。...
TOWELL-CROSS | 2008.09.20 Sat 21:53
「オレ、美羽とつきあうことになった」 3学期最後の下校途中。 照れ笑いで告げられた事実に、湊の頭は真っ白になった―― 「昨日の部活帰りに、美羽と2人きりになってさ。チャンスと思って告白したら、OKしてもらえたんだ」 頬と耳をかすかに赤くした、こんな陽生は今まで見たことがなかった。 少し遅れてやってきた衝撃に、言葉がうまく出てこない。 「どうして……」 「美羽がさ、『お姉ちゃんには恥ずかしくて話せない』って言うんだよ。だから、オレから報告したってわけ」 そうじゃない! 叫びた...
TOWELL-CROSS | 2008.09.20 Sat 21:49
陽生と美羽が帰ってきたのは、それから1時間後のことだった。 山のようなお菓子を誇らしげに広げる2人をあしらい、野菜や飲み物を冷蔵庫に入れていく。未開封のドレッシングやマーガリンなどが置いてあることに驚き、思わず賞味期限を確かめてしまった。刻まれた日付は、まだずっと先のものだ。 その後、陽生が持ってきたトランプをしながら、夕食までの時間を過ごした。 大富豪ゲームに夢中の2人はもちろん、先ほど出会った漣のことが気になっている湊も、勉強のことはすっかり忘れている。 あれから一度も、漣は湊...
TOWELL-CROSS | 2008.09.07 Sun 21:49
前回が約1ヶ月の放置で、今回は1ヶ月以上の放置…… バイトに追われていたとはいえ、本当にすみません! こんなグータラな私に喝を入れるべく、大学の相棒が素敵なイラストを描いてくれました〜 作者の八城惺架(やしろせいか)さんは、大学生活の傍ら色々なお仕事をこなしているプロのイラストレーターなのです! プロに挿絵を描いてもらえるなんて、ほんっと私は幸せ者ですね♪ けっこう注文をつけてしまった成果か、私のイメージどおりの湊&漣になってます! とくに漣さんがカッコイイ!! 「湊の表情を一目ぼれにし...
TOWELL-CROSS | 2008.09.07 Sun 21:47
―――ブルルゥゥゥン 「車……じゃない。バイク?」 静かな山奥には不似合いなエンジン音に、湊は周囲を見渡した。腹に響く振動が進行方向から近づいてきている。 立ち止まって目を凝らしていると、曲がりくねった道の先に一台のバイクが現れた。黒光りしている車体には、ヘルメットをした2人組がまたがっている。 少し先にあった民家の前でバイクは止まった。湊は思わず身を隠し、そっと様子をうかがう。 「きれいな人……」 後部座席にいた人物が、降りてヘルメットを外した。長い髪を耳にかける仕草がとても自然で似合っ...
TOWELL-CROSS | 2008.09.07 Sun 21:45
ひと通り整理を終えると、暇になってしまった。勉強する気にもなれず、畳の上にごろんと横になる。 近くに小川があるらしく、さらさらという音が心地良い。窓からは真っ青な空が見渡せる。 「散歩しようかな……」 ゆっくりと起き上がり、玄関へ向かう。履き慣れた紺色のスニーカーを突っかけて、少し重い扉を開けた。 「んー、いい気持ち!」 ぐっと伸びをして、新鮮な空気を胸いっぱいに吸いこむ。日差しはきついが、森林が多いためか暑苦しさはない。 「静かだなぁ」 誰もいない気楽さに促され、肩の力を抜いて歩き...
TOWELL-CROSS | 2008.09.07 Sun 21:43
別荘というよりペンションに近い建物の前で、湊たちの乗った車は止まった。 丸太小屋のような外観を3人で並んで見上げていると、駐車し終えた杉本父がやって来て、荷物を中へ運ぶよう指示される。 湊の予想に反して、内部は近代的な設備がそろっていた。自分たちで料理をしなければならないと言われていたので、家と変わらないキッチンに一安心する。 「わぁ、かわいい!」 「おばさんの趣味だよ。庭で育てた花を使ってるんだってさ」 壁に飾られたドライフラワーのリース。棚やテーブルに描かれたトールペイント。レー...
TOWELL-CROSS | 2008.09.07 Sun 21:39
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