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JUGEMテーマ:気になる本 ☆11−1 馬車に揺られながら、頭の中で作戦を練る。多くの新聞社が集まる街に出撃するにあたっては、二つの目的があった――まずは「Deadly nightshade(死の宵闇)、Thank yew」のメッセージを新聞に載せた人物の、身元までは無理としても、人相なり特徴なりを聞き出すこと。それともうひとつ、ヤドリギを引き合いに出して「会いたい」というメッセージを新聞に載せたのが、本当にママなのかどうかを確かめること。 まずは悪意の花束を贈った人物のほうが先だ。何しろワトスン博士の身が危険にさ...
たいむかぷせる。 | 2010.05.06 Thu 09:51
JUGEMテーマ:気になる本 ちょっと前が読みたい…でも面倒だなぁ ということで目次を作りました 【俯瞰風景 /】 【俯瞰風景 Thanatos.】 【/0】 ・ 【/1】 ・ 【/2】 【俯瞰風景 /】 【?】 ・ 【?】 ・ 【?】 ・ 【?】 【俯瞰風景】 【/3】 ・ 【/4*?】 ・ 【/4*?】 【俯瞰風景/】 【了】 6/1
たいむかぷせる。 | 2010.05.05 Wed 14:45
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ /2 八月も終わりにさしかかった夜、散歩をする事にした。 夏の終わりにしては外気は肌寒い。終電はとっくに過ぎていて、街は静まり返っていた。 静かで、寒くて、廃れきった、見知らぬ死街のようでもある。人通りも温かみもないその光景は写真みたいに人工的で、不治の病を連想させた。 ―――病い、病気、病的。 何もかも、明かりのない家も明かりのあるコンビニも、気を許せば咳き込んで崩れ落ちるような感じ。 そんな中、月光は青々と夜を浮き彫りにする。 全てが麻酔された...
たいむかぷせる。 | 2010.05.05 Wed 09:07
JUGEMテーマ:気になる本 ☆10−3 そこで女主人がいきなり怒鳴り出した。 「あいつ、今度は何をやらかしたんだ?」 えっ、何々、どうしたの? 「どなたのことをおっしゃってるんですか?」 「いや別に」 いつもの笑みがすっかり消えて、女主人の顔が険しくなった。そのとたん、骨太の逞しい印象が一気に強くなり、こっちは思わず後退りそうになるのを、必死に耐えた。母親のような温かみが、今は敵意に変わっている。 「ちょっとあんた、何を探ろうってんだい?」 ロンドン訛りがどんどん強くなって...
たいむかぷせる。 | 2010.05.05 Wed 09:04
JUGEMテーマ:気になる本 ☆10−2 どう考えたってそんな名前が本名であるわけがない。それで相手も、ちょっとぎこちない感じの笑みを漏らしたんだと、そのときのわたしはそう思っていた。 こちらは推測を重ねて、さらに聞いてみる。 「もしかして、ご主人は俳優さんか何かだったんですか? それでこういうご商売をするようになったとか?」 「いいえ、そんなんじゃありません」 女主人の口調に、どことなく答えをしぶるような感じが出てきた。 「ひょっとしてご主人はもう亡くなられたのですか?」 店...
たいむかぷせる。 | 2010.05.04 Tue 10:15
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ /1 八月になったばかりの夜、事前に連絡もなく幹也がやってきた。 「こんばんは。相変わらず気怠そうだね、式」 突然の来訪者は玄関口に立って、笑顔でつまらない挨拶をする。 「実はね、ここに来る前に事故に出くわしたんだ。ビルの屋上からさ、女の子が飛び降り自殺。最近多いって聞いてたけど実物に遭遇するとは思わなかったな。―――はいこれ、冷蔵庫」 玄関でブーツの紐をほどきながら、手に持ったコンビニのビニール袋を投げてよこす。中にはハーゲンダッツのストロベリー...
たいむかぷせる。 | 2010.05.04 Tue 09:58
JUGEMテーマ:気になる本 ☆10−1 ペルテローテの店にわたしが入っていっても、大皿のような顔を女主人は、ぽかんとするでもなく、素っ頓狂な声もあげなかった。たいしたものだ。ただ目をみはり、小声でこう呟くに留めた。 「まあ、これは驚いた。なんと素敵に変身なさったこと。お見事ですよ、ミス……ええと、エヴァソー」 つまり相手は、わたしがここでカツラと付けぼくろを買ったことも、もとは冴えない外見だったことも覚えていた。おまけに名刺に刷った名前まで。 「ありがとうございます」 わたしはにっこ...
たいむかぷせる。 | 2010.05.03 Mon 16:46
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 1/0 その日、帰り道に大通りを選んだ。 自分にしては珍しい、ほんの気紛れである。 見飽きたビル街を呆と歩いていると、ほどなくして人が落ちてきた。 あまり聞く機会のない、ぐしゃりという音。 人がビルから墜ちて死んだのは明白だった。 アスファルトには朱色が流れていく。 原形を留めているのは長い黒髪と。 細く、白を連想させる脆い手足。 そして貌の亡い、潰れた顔。 その一連の映像は、古びた頁に挟まれ、書に取り込まれて平面となった押し花を幻想させた。 ―――おそらくは。 ...
たいむかぷせる。 | 2010.05.03 Mon 16:45
JUGEMテーマ:気になる本 ☆9−2 その夜はほんのわずかしか眠らなかった。温かくて、すっぽり身を隠せる黒い衣装をミセス・タッパーの下宿に全部置いてきていなかったら、きっと寝るなんてことは考えもしなかっただろう。自分よりも恵まれない人々を探して夜の街をうろつき、食べ物とわずかなお金をあげて、自分の悩みなんてたいしたことはないと考えていたはずだ。夜になるとあれこれぐじぐじ悩むのは、ほとんどわたしの癖と言ってよかった。 なのにヴィオラ・エヴァソーに扮していては、夜中に外に出ることもできないのが悔...
たいむかぷせる。 | 2010.05.02 Sun 07:11
JUGEMテーマ:気になる本 ☆9−1 できるだけ人目につかない道を選んで監視用の下宿に急いで戻り、ベルを鳴らしてお湯を持って来てくれるよう頼んだ。身体を洗い終えると、清潔な服に着替え、濡らしたスポンジでスカートの泥汚れを拭い取り、髪を整え直しながら――つまり、カツラを外して櫛でとかし、あちこちピンでとめて、これならまずまずというスタイルにしながら――じっくり考えようとした。 けれどいくら真剣に考えようとしても、頭に浮かぶのは、鼻のない男の話。どういうわけで鼻を失ったんだろう。確かルネッサンスの時...
たいむかぷせる。 | 2010.05.01 Sat 10:14
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