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JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−3 弾丸は実体化した肉体をえぐり、貴婦人の体が跳ねるように後ろへ飛ばされた。 だが床に倒れた体は、あるない向きに曲がった手をついて、すぐにもぞりと動き出す。 そのとき、コツンと床で音が鳴った。 フィンレイに手によって、鏡から大粒の紅玉がこぼれ落ちたのだ。 体を起こした貴婦人が、血を吐くような叫びを上げ、酷くにごった声でわめきたてる。 < 許さない・・・カエッテきたノ・・・他の誰にも渡さない ・・・私はアノ人に・・・触れられもしなかったのに!なにもかも捧げて ...
たいむかぷせる。 | 2010.04.26 Mon 11:14
JUGEMテーマ:気になる本 ☆7−6 「ならば・・・ならば・・・わたしはどうしたらよいのです?今のままでは、わたしは王とは親子に・・・本当の親子にはなれないのに・・・。あなたの血を引くかのン、そのカノンの夫になることでわたしと王は、本当の親子になることが出来るのです。・・・なのに、どうして・・・っ。カノンを失ったら、もうわたしの望みは叶わない。わたしはただ、あなたを“父上”と呼びたかった。あなたの息子だと思われたかったのです・・・」 そう叫んでルキアはその場に膝をついた。 そして、顔を覆った両...
たいむかぷせる。 | 2010.04.25 Sun 11:15
JUGEMテーマ:気になる本 ☆6−2 歩道の上で、わたしの足が止まった。ああ、なんてことだろう。その場から、もう僅かも動けなかった。まるで兄の声が磁石で、わたしの身体はそれに吸い寄せられる針やピンのようだった。その先も聞かないと――でも、もし立ち聞きしているのを見つかったらどうしよう? 何かポケットの中のものを探しているふりをしながら、通りの端から端へ目を走らせる。ミルク・メイドがミルクを配っているのと、馬車が一、二台行くのを除けば、辺りはひっそり静まっている。こういうところが、ロンドンのお...
たいむかぷせる。 | 2010.04.25 Sun 11:13
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−2 「あの男たちは、俺が王室に納める姿身を作っていると知ってました。奴らは、飾り枠に使う宝石をすり替えろといってきて・・・もちろん俺は断りました。ですがあいつらは妹の、ソニアの名前を口にしたんです。これで、通報しても意味はないと俺は諦めたんです・・・」 フィンレイは雇い主に報告をするどころか、宝石をすり替えた姿見が無事王室に入ったのを見届けられなければ、ソニアの命はないと脅されたも同然だった。 「『大暗室』は手段を選ばないと聞いています。彼らは何処にでも...
たいむかぷせる。 | 2010.04.25 Sun 11:10
JUGEMテーマ:気になる本 ☆6−1 情けないけど、喘ぎ声が漏れた。恐怖と憧れ――世間で有名な兄に接する時、わたしの胸には、必ずこの二つの感情が湧いてくる。目鼻立ちの鋭い顔も、わたしの目には英国一の美男子に映るし、灰色の瞳はこの上ない才気にあふれている。もしこういう状況で出会ったのでなかったら……。 だけど今は、そんなばかげた空想をしているときじゃなかった。危険な状況であることは十二分に承知していたし、すぐにもそこを逃げ出す気でいた。ところが、壁のすぐ傍で奇妙な花たちを観察していたために、後退り...
たいむかぷせる。 | 2010.04.24 Sat 13:15
JUGEMテーマ:気になる本 ☆7−5 「な・・・っ!?」 「き・・・消えたぞっ!!」 「どこへ逃げた!」 兵士達は驚き、他の場所を探すために急いで祭壇を離れた。 すると、残されたドレスの間から、瞳の大きな白いサルの頭が、ひょっこりと飛び出した。 「リオっ!!」 「カノンちゃんっ・・・」 あたしの胸の中に、リオのふわふわと柔らかい小さな身体が飛び込んでくる。 「リオ、身代わりご苦労様」 あたしがそう言って笑うと、リオは頭をかきかきため息をついた。 「・・・カノンちゃんの言う事なら、な...
たいむかぷせる。 | 2010.04.24 Sat 13:14
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−1 翌日の昼下がりに、グレンはローズグレイブホールに現れた。 その横顔には疲れたような陰がある。応接室へ案内されたグレンは、ミリセントと向き合うとテーブルの上に平たい木箱を差し出した。 「フィンレイの遺作のひとつだ」 箱を受け取ったミリセントは、アンセルの用意してくれたお茶をすすめる。 「グレン、顔色が悪いけど大丈夫? フィンレイの妹さんにはもうお会いした?」 いくら雇い主とはいえ、家族を無くしたばかりの遺族に状況を説明し、詳細を聞き出すのは大変だった...
たいむかぷせる。 | 2010.04.24 Sat 13:08
JUGEMテーマ:気になる本 ☆7−4 「・・・フリだとはいえ、あのルキア王子の花嫁役なんて、ぞっとしませんねぇ。リオのやつ、最後まで泣きそうになってましたからね。あー、あそこにいるのが僕じゃなくて、本当に良かった。 ううっ、本当にごめんね、リオ。 祭壇の前では、大勢の招待客の中、あたしとルキアの結婚式は、いま、まさにクライマックスを迎えようとしていた。 恰幅のいいシャリファ神教の司教様が、厳かに口を開く。 「――愛と薔薇の女神、シャリファの名において、汝、永遠の愛を捧げる事を誓うか」 恭し...
たいむかぷせる。 | 2010.04.23 Fri 11:19
JUGEMテーマ:気になる本 ☆4−8 問いかけに、グレンはぐっと言葉に詰まる。 この姿見を引き取りに来たとき、ディンセル公爵に話を通しておいてくれたのは、ほかならぬリーアン自身だったのだ。 「僕も気に入った姿見を取り返したいからねぇ。公爵の店は評判がいいし、ほんとなら自分で確かめたいところなんだが」 「鑑定を務めているのは、リーアン様と同い年の少女でした」 「へぇ! 女の子」 「まぁ、成り行き上いろいろありまして・・・私は直接彼女の屋敷を訪ねたんですが・・・彼女が姿見を鑑定したことで、首飾...
たいむかぷせる。 | 2010.04.23 Fri 11:17
JUGEMテーマ:気になる本 ☆4−7 「やぁ、グレン。待たせたな・・・ん? なんだ、お前がひとりで笑ってるとは珍事だな。そんなに楽しいなら、もう少し一人にしておいてやろうか?」 開け放たれた扉からあらわれたのは、この国の第一王子リーアンだ。 まばゆい艶を放つ巻き髪は、蜂蜜に似た深い色で柔らかく流れ、明るい象牙色の肌に、輝きに満ちたサファイアの瞳がなにより人目を惹く。 げれんは椅子から立ち上がって礼をとろうとしたが、リーアンに「いまは無用だ」と視線で制された。互いが幼い頃から知った仲でもあるせ...
たいむかぷせる。 | 2010.04.22 Thu 12:01
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