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オスカーは剣術と共に読書を愛好していた。なにしろ、本は彼の疑問と好奇心を黙って受け止め、真摯に答えてくれる。 オスカーにも悩みや戸惑いはある。しかし、そのどれもが悩むには早過ぎ、気軽に話すには深刻過ぎた。 12の頃だったろうか、一度、「人は何故、己という魂を持って生まれるのか」と、誰かと話してみたくて堪らなく思った事があった。しかし、それはすぐに諦めた。何故なら、医務室で聞くに耐えない問答を聞かされたからだ。 オスカーは剣の模擬戦で無茶をして、酷い打ち身を負った。その手当てが終...
叛逆は英雄の特権 | 2010.03.05 Fri 08:36
オスカーとアマーリエの関係は続いていた。 それは、あの濡れたジャケットにアマーリエが忍ばせた1枚のパスが繋ぐ間柄だった。オスカーは気が向けば金曜の夜に、オペラ座‥‥帝国歌劇場‥‥へ行きさえすればよかった。 パスを提示すると、燕尾服を着た使いの者が現れて、オスカーに恭しく挨拶し、貴賓席へと案内した。そこはボックスシートで外側からの視線はカーテンで程良く遮られており、中には当然、アマーリエが待っている。 互いに気配を感じ視線を合わせると、前奏曲が奏でられる暗がりの中で、オスカーは彼女と挨拶以...
叛逆は英雄の特権 | 2010.03.02 Tue 17:24
シュヴァルツ(黒色)・ランツェンレイター 発見!!!!!!!!!! ↑ビッテン隊とミッターマイヤー隊の試合w 拍手は無しで。 書き込みはコメント欄へよろしくです。
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.18 Thu 16:55
ヒルデガルドは秋に染まりゆく菩提樹を眺めていた。色付く葉が日の光を透かし、重なり、風に揺れては散っていく。 子供達の声も聞こえる。その笑い声は懐かしい鈴の音のようで、ヒルデガルドの心を暖める。だが、それだけだ。全ては遠くガラス越しで、彼女には直に触れる暇さえ無いのだから。 亡き夫に創世期を任された妻として、ヒルデガルドの前に摂政の責務が立ちはだかる。ただの母親ではいられない。そして、それを悲しむ余裕も無い。 議会招集、法整備、軍縮、刷新、存続、断罪、改革、解放、…。 どれだけ...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.17 Wed 13:43
2 〜 ナイトハルト・ミュラー 外伝 〜「もう来ないで欲しいの…」 女はただそう言って、ミュラーを部屋に入れなかった。 それは余りに唐突な申し出だったので、ミュラーは脆くも我を忘れ、取り乱してしまった。 「何故だ!!」 喰い下がるミュラーの瞳から涙が落ち、それを女の手が優しく拭う。 その温もりに震えた彼の頬が、ついに女の重い口を開かせた。 「帰ってくるの。死んだはずの夫が。生きて。捕虜解放で…。だから……」 最後は声にならず、吐息だけで「ごめんなさい」と言うと、女もまた、涙をこぼ...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.15 Mon 14:44
この国では9歳になると進路を選択し、10歳で次に進まなければならない。 オスカーの希望は幼年学校。そこに行きさえすれば、滅多に会えなくなってしまった騎士のハンスに、もっと近づけるような気がした。それに、剣術についても、より高度な技術を求めていた。 理由を抜きに希望だけ告げると、執事のハンスはいささか苦い顔をして 「旦那様とお話ししなければならないでしょう」と言う。 執事は屋敷の主人と、オスカーの進学先ついて話し合いを持ったばかりだった。それはギムナジウム入学を前提に進められ、もはや...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.14 Sun 19:03
オスカーは、執事のハンスに庇われて自室へ引き取ると、真っ直ぐ洗面台へ向かった。 鏡を見れば、インクはあちらこちらへ飛び跳ねていて、手の付けようもない。特に、額の右側から首筋にかけて、黒い筋がべっとりと流れ落ち、まったく酷い有り様だ。 ひとめ見て、洗面台では用が足らないと知ると、風呂でシャワーを浴びる事にした。ついでに、駄目になった制服もごみ箱へ投げ捨てた。 黒いインクはお湯の流れに導かれ、オスカーの足へと絡み着き、とぐろを巻きながら排水口へと消えて行く。 思わず顔を拭った手には、指...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.14 Sun 19:02
オスカーは9歳になると、幼年学校に新しい行き先を求めた。そうすることで、今はもう滅多に会えなくなってしまった騎士のハンスを、足早に追いかけてしまいたかったし、剣術についても、より高い技術を求めていた。 理由を抜きに希望だけ告げると、執事のハンスはいささか苦い顔をして 「旦那様とお話ししなければならないでしょう」と言う。 執事は屋敷の主人と、オスカーの進学先ついて話し合いを持ったばかりだった。それはギムナジウムへ入学を中心に進められていて、もはや決定事項のように扱われていた。 家...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.14 Sun 18:52
騎士の誓いは、オスカーがギムナジウムに行くまで守られた。 しかし、ハンス・ヴェルナーが士官学校で学年を進めるにつれ、週に1度が隔週になり、やがて、月に2度になり、と、その回数を徐々に減らしていった。 彼は学校で学業と共に、高度な白兵戦術を学んではいたが、それを決してオスカーには教えなかった。ハンス・ヴェルナーは疲れていたのだ。士官学校で行われる講義は、どれも血の匂いがする。だから、せめてオスカーに会う時は『騎士のハンス』でいたかった。 そして、今は遥か夢の様になってしまった騎士道的な剣術を...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.13 Sat 19:49
怒りに煌めくオスカーの双色の瞳を、ハンス・ヴェルナーは凝視した。かち合った視線は固定され、お互いに譲らないままだ。 しかし、睨む者の手の小ささに気付き、少年の心がゆるむ。すると、こいつは実はこんな顔が出来るのかと、驚きと共に喜びが湧き、剣を構えたままのオスカーをハンス・ヴェルナーは抱き締め、かかえ上げた。 「オスカー!」 彼は幼い生徒の背を軽く叩きながら、その名を口にする。 オスカーは、そんな風に扱われた事に驚き、思わず剣を手離した。 呼ばれた名前も何故だかむずがゆく、オスカ...
叛逆は英雄の特権 | 2010.02.13 Sat 19:47
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