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今日は夏目漱石の【それから】を紹介します。これは漱石の三部作『三四郎』『それから』『門』の中の、二番目の作品です。ただし三作品はそれぞれ完全に独立した物語ですから、どれから読み始めてもまったく問題なく読めますよ。「それから」という小説は、モラトリアム人間である長井代助が主人公です。すでに30歳を迎えとうに働くべき年齢でありながら、まだ社会的義務を猶予されている状態の男。親の資産に余裕があるので働かずにただ理想的な仕事を探しているだけという状態の若者が、この小説の主人公です。代助には理想がある...
明かりの本 | 2011.11.16 Wed 08:38
今日は夏目漱石が書き残した『正岡子規』という短いエッセーを紹介します。下の方に掲載した写真はかなり昔、松山に行ったときに撮った愚陀佛庵(ぐだぶつあん)です。愚駄仏庵は漱石の住処で、ここにほんの短いあいだ、正岡子規と夏目漱石が一緒に住んでいました。2階が漱石の住処で、1階に子規が居て、子規の俳句仲間がよく集まっていました。森鴎外や高浜虚子などもここを訪れました。漱石に文学者になるように勧めたのは米山保三郎という学生時代の親友ですが、文学の魅力や文学の実際を伝えたのは正岡子規です。正岡子規は俳句や...
明かりの本 | 2011.11.14 Mon 23:09
今日は岡本かの子の『家霊』という掌編小説を紹介します。これは、岡本かの子の代表作といわれるものです。なんだか福田平八郎の日本画のような、どこかで確かにこんな絵を見たことがあったような気がする、記憶の中へと入りこんでゆく物語です。情景がありありと思い浮かび、いつまでも消えない印象がのこるというのがこの小説の魅力のように思います。ほんのすこしだけあらすじを書きますと、主人公はつい最近、母親のかわりに“どじょう屋”につとめはじめた娘のくめ子です。食事代を払えないほど貧しい、老いた彫金師が、どじょう汁...
明かりの本 | 2011.11.10 Thu 00:03
今日は夏目漱石の『道楽と職業』という講演録を紹介します。夏目漱石には、代表的な講演録が3つほどあります。『私の個人主義』と『現代日本の開化』と『道楽と職業』です。夏目漱石が学生さんや一般の方々にちょっとした授業をしたような雰囲気の講演録です。これからこの3つの講演を1つづつ紹介してゆく予定です。夏目漱石の小説をまずはじめに楽しみたいのなら『坊っちゃん』や『三四郎』がお薦めです。『草枕』なども明かりの本で読めますよ。『道楽と職業』は1911年の明治四十四年に行われた講演の記録です。明治四十四年...
明かりの本 | 2011.11.03 Thu 20:07
今日は実語教を紹介します。これは江戸時代の寺子屋で、かつて実際に使われていた児童教訓書です。鎌倉時代に成立した書物で、作者は不詳です。江戸時代には児童にまずこれを教えたんです。現代で言えば、小学校でこれを教えたわけですね。儒教的な内容で、一説によれば、弘法大師空海が書いたとも言われています。空海は十代の頃エリート官僚になろうと思っていて大学で学んでいたのですが、ある日出会ったお坊さんの教えに感動して仏教に目覚め、山の中で一人修行してから空と海を眺めて、その自然界のありさまに感動し、それから僧...
明かりの本 | 2011.10.27 Thu 14:42
今日は夏目漱石の三四郎を公開します。前回紹介したのですが、どんな本なのかをまったく記していなかったので、改めて紹介し直してみようと思います。これは夏目漱石の、かなり代表的な小説です。漱石の教養小説の中ではいちばん念入りに書かれていて、読みものとしてもっとも面白い本だと思います。今、学生さんをやっている人には、なによりも一番お薦めできる小説だと思います。ちょうどそういう状況に当てはまる、というかたは、ぜひ読んでみてください。おそらく漱石の文章は、どのような講義よりも魅力的な内容であると思います...
明かりの本 | 2011.10.24 Mon 11:09
今日はニコライ・ゴーゴリの『外套』を紹介します。『外套』はロシアの文学のなかでもっとも有名な中編小説ではないでしょうか。ドストエフスキーがこの『外套』のことについて「我々は皆、外套の中から出てきた」と述べていていて、自身の「貧しき人びと」という小説の原点のように捉えているのです。アメリカで言うと『ハックルベリフィンの冒険』が同じように文学者たちによって高い評価を受けています。これは寒さや貧困といった自然な感覚と、不自然な大組織との対比が見事に描かれている小説です。アカーキイ・アカーキエウィッ...
明かりの本 | 2011.10.19 Wed 15:30
今日はヴィクトル・ユゴーの『死刑囚最後の日』を紹介します。僕は死刑囚というと、冤罪事件のことを思い浮かべます。あるいは永山則夫のことを描こうとした、新藤兼人監督の映画『裸の十九歳』について思い出します。死刑制度には犯罪抑止力が無い、というのが通説です。死刑判決が増えたあとにも、むしろ凶悪犯罪は増えています。じゃあどうすれば良いのかというと僕には判らないのですが、死刑囚になるような犯罪をする時に、別の道があるのなら誰も死刑囚になどなろうとはしないはずだ、と思います。けっきょく別の道があるように...
明かりの本 | 2011.10.13 Thu 01:06
今日は岡本かの子の「娘」を紹介します。ついこのあいだノーベル平和賞が発表されて、民主化が遅れる地域で女性の地位向上に尽力したとして3人の女性がこれを受賞しました。なにかこう、理想的な活動をしている人の気持ちというのはどういうものなのだろうか、などと思います。人によって仕事の理想はかなり違いますよね。ある人にとっては喜んでもらってなんぼだとか。ある人にとっては楽でお金が入るタイプが良いんだとか。ある人にとっては汗水垂らして体を動かして対価とやりがいを得ないと理想的な仕事とは言えないとか。ぼくの...
明かりの本 | 2011.10.08 Sat 01:33
今日はエドガー・アラン・ポーの『黒猫』を紹介します。これは加害の恐怖について描いた、かなり恐ろしい怪談です。恐怖ものが苦手な方は読み飛ばしていただいた方がよろしいかと思います。恐怖に関する物語には、主に2種類があると思います。被害者が感じる恐怖を描いたものと、加害者が実感する恐怖を描いたものです。「殺される」という恐怖を描くもの。それと「自分はいったいなにをしたのか」という恐怖を描くもの。この2つの恐怖が主であるかと思います。アメリカの作家は特に、加害ということについてものすごく念入りに描い...
明かりの本 | 2011.10.02 Sun 19:25
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