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どんなにシンクロしても、君にはなれない。それを理解したときがっくりと膝から崩れてしまった。当たり前だと頭では分かっていたのに、それはとても軽いものだったという事実にも項垂れた。君は僕の代弁者でもなく、僕は君の代弁者でもない。君は君で僕は僕で、そう、いろいろなことが無理だったんだ。 公園のベンチで缶コーヒーを手に空を眺めていると、隣に座った男が電話に向かって話し始めた。とても早口で、なんだかとても悔しそうだった。この男の心情を頭の中で想像してみたけれど、抽象的な図柄が出来上がっただ...
ほろほろあめ。 | 2011.10.07 Fri 13:35
暗い穴ぼこに落ちてから、うろうろしっぱなしだ。上には落ちた穴が大きく見えるのに、どうしても登れないものだから穴の中を壁伝いに歩いている。(ほぼ、円)。 君を助ける義理なんて僕の中のどこを探してもないんだよ。 そう言って鼻歌を歌いながら遠のいた君はあれから一度も穴を覘いてはくれない。 のどが渇いたとか、お腹が空いたとか、トイレに行きたいとか、いろいろあるけれど一番ましなのは眠りたいという願望だけは苦も無く叶うこと。(もちろん最初は眠れなかった)。 そうか、僕はこのままここで死んでしまうんだ...
ほろほろあめ。 | 2011.09.30 Fri 16:26
書いては消して、作っては崩して。 そんな繰り返しを続けているけれど、僕の記憶からは消えない。このことが僕の……何番目かの悩み。 書きたくて、書きたくて言葉を選んでも、隣に寄り添う言葉を見つけられない。このことも、僕の何番目かの悩み。 僕の出来損ないぶりに、いつも苦笑いを浮かべている君。僕は君の眼を深く知りたくて、次こそは覗き込もうと意気込むけれど、なかなかそこには辿り着けない。 歩き始めてからすぐに座り込んだ。そこがやわらかかったのか、かたかったのかも思い出せない。ただ白詰草を引きち...
ほろほろあめ。 | 2011.09.26 Mon 16:55
とても簡単な言葉で励まされた。簡単であり且つ軽い言葉である。 綺麗な熟れた桃色をしたまるで女の子のようなぷるんとした唇から零れたのだから、僕は君の唇を糸で縫いつけてしまいたかった。 花を落として湖面に広がる波紋には、歪んだ言葉が揺蕩っている。綺麗な花を選ばず、敢て人差し指と親指で厭々抓み上げるような、しんなりと雨を吸い上げて腐敗に進んでいる花を選んだ。その理由を代弁していた君は、僕のことは何でも手に取るようにわかるのだと豪語していた。 すぐ頭上では数少なくなった蝉が啼いている。見上げても姿...
ほろほろあめ。 | 2011.09.20 Tue 16:59
四肢を投げ出して、そのままゆらりと現実から引き離され異世界へと引き込まれていく。これが、理想の睡眠。ただ、ゆったりと眠りたいだけなのに、そうはいかない現実に苛立ちとともに小さな溜息をついた。 雨上がりに、ゆっくりを雲を動かしながら太陽の光を焦らしている風は、独特の匂いを広がせながら君のもとへと移動をする。ありがとう、その一言がこんなにも切なく、こんなにも悲しい響きだったなんて、今までどうして気が付かなかったのだろう。温かさの染み入った言葉だと散々耳にしていたはずが、本当は、もっと...
ほろほろあめ。 | 2011.09.06 Tue 22:44
川縁にしゃがみ込んで流れる水に手をつけている。田舎の水は綺麗で冷たい、と言うので、ここは上流だから、とだけ答えた。橙色に染まった世界に伸びる影が想像以上に長くて、なんだか切なくなったあの日を思い出した。君がおもむろに立ち上がったので、僕はその動作を確認した後によたよたと立ち上がった。君の背中はいつの間にやら丸くなった感じがする。残りわずかな蜩がかなかなと啼いていて、君の左手から重たそうな荷物を引き受けたら、僕は泣きそうになった。 わたし、もう無理かもしれない。君が最後に呟いたのはそん...
ほろほろあめ。 | 2011.08.25 Thu 14:56
今日はいつもとは違うお月様ね。そう君が言ったのは青白い月が浮かんでいる晩のことだった。そうして、あなたの顔はいつみてもちぐはぐなのね、と続けた。 コオロギとスズムシが一斉に鳴いている夜に、十五夜はやってきた。その晩僕は木の上で、ちぐはぐな顔についてを考えていた。なんだか、いつも僕は涙を流している。悲しいことがあったわけでもないし。寂しい思いをしたわけでもない。それなのに、ただただ涙が流れてしまう。それはもしかすると、もう涙ではないのかもしれない。ちぐはぐな顔とは一体どんな顔なのかを考...
ほろほろあめ。 | 2011.08.15 Mon 14:37
拝啓 残暑厳しい折ですがお変わりなくお過ごしでしょうか。立秋が過ぎたと申しましても、節気というだけで蝉もうるさく酷暑には何ら変わりはありません。 さてこの度は、ご丁寧にお手紙を頂戴いたしまして有難うございました。早速読ませていただきました。いつも丁寧さと柔らかさとが含まれており、戴く度に温まるようなほっとした気持ちになります。 私はと言いますと、毎日が同じようでいて実はそうではなく、過ぎてしまう時をどうすることもできず、ただこの一瞬が受け止める前に過去へと押し流されていく寂しさだけが胸に残...
ほろほろあめ。 | 2011.08.10 Wed 15:11
やわらかな風が吹いている。いつも以上にそう感じるのは、単に心の持ちようと言ってしまえば、本当にそれだけのことだろう。街路樹にも野花にも君の影が潜んでいるようで、つい目で追ってしまうのは、きっと寂しさよりも懐かしさが溢れたから。 僕の薄っぺらい感情をいつも捲っては剥がそうとしていた君だけれど、現実に君にもそれは無理だった。だけれど今こうして何もかもを剥がされている僕は、誰にも見えないけれど、確かに内には深く深く広がっている何かがある。今の君なら、きっと感じ取ることが出来るのだろう。それ...
ほろほろあめ。 | 2011.08.02 Tue 13:12
流れ星にお願い事をしたら、きっと叶うよね? そういった君の横顔を思い出すと、少し苦しくなってしまう。 君は隣りの僕に顔を向けることはなかった。夜の道は、横を流れる小川の音と、早くも啼き始めた秋の虫の音で満ちていた。 君の願い事がなんなのか、僕は聞かない。きっと聞いても君は言わないだろう。半歩前を歩く君の後ろ姿は、手を伸ばせば掴める肩の距離なのに、きっと心は届かない。そう思うと伸ばしかけた手を、ゆらりと落としてしまった。 僕はなんのために、手を伸ばしかけたのだろう。 夏はとても短かった。コン...
ほろほろあめ。 | 2011.07.26 Tue 17:25
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