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僕には、何かを止める力がない。愛は何かを問うたら、それらの全ての答えは欲の内でしかなかった。愛≠欲、愛≒欲、愛=欲。確かに僕には、愛を受け入れる器が無い。至極当然のことだろうと思う。僕には、知らなくてもいいことではある。もうやめよう。そんな無意味な争いは。傷をつけてしまうだけなのを君も知っているはずなのに。背負うものはきっと大きすぎる。だけれど、それを重荷だとは思わないし、思いたくない。残されたのは決して埋まることの無い穴だけなのに、その中には、計り知れないものが詰まっている。もし僕に...
ほろほろあめ。 | 2011.07.22 Fri 20:29
指に着いたトマトの茎の青臭さがとれない。(まるで何も想像がつかない、思い浮かばない頭というものを知っているだろうか) 世界中には綺麗な言葉が蔓延していて、汚い言葉も同じだけ蔓延っている。(指に着いた朱肉に苛立ちを隠せずに、親指を引き出しに仕舞いこんだ) 柔らかな風が吹いていることを僕は知っているのだけれど、その風に乗らない理由も知っている。本当に一人で大丈夫ですか?と何度も聞き返した待合室で、きっと僕でも、大丈夫だから、と答えるだろうと想像するのは容易いことだった。何度も聞き返した理由...
ほろほろあめ。 | 2011.07.19 Tue 15:18
ある朝僕は考えた。空を飛べるといいなと思っていたけれど、もし大空へ飛び立てたとして、僕はひとり優雅に飛び回ることができるのだろうか。もしかすると、雀のように人恋しさに町へ住みついたりしないだろうかと。 考えれば考えるほど、僕の理想はひとり優雅に大空を飛び回ることになってしまう。解き放たれるのは、僕自身の身体ではなく、内にあるなにか、のはずだから。誤魔化し続けることを覚えるのなら、独り歩きを覚えようと、海辺を歩いてみたりもした。 突然の夕立に、ただ茫然と立ち尽くしてそのまま過ぎ去るのを待って...
ほろほろあめ。 | 2011.07.13 Wed 13:36
夜の淵に立って、足を踏み出そうかどうかを迷っている。いや、吸い込まれそうな勢いに負けじと踏みとどまっている、といった方がいいのかもしれない。その先に一歩を踏み出した瞬間、僕はきっと放たれた魂のように、軽やかに、なんの抵抗もできないままするすると吸い込まれていくだろう。――もし吸い込まれたとして、僕はその中でいつごろ失速を始めるのだろう。――もし吸い込まれたとして、その先に着地点はあるのだろうか。 僕の迷いはとても、とても弱虫だ。だから残酷なことも、ときどき平気でしてしまう。いいことだらけ...
ほろほろあめ。 | 2011.07.02 Sat 09:18
とてもよく晴れた日の午後に、ちょうど日陰になった軒下に身を寄せていた。考えていることはちょうど、そう、どこにも置き場のないことで、自分自身に向いても声に出していうことはないこと。口から出す、声という音にすることは、ときどき怖くなる時がある。声は消えてしまうけれど、残ってしまう。耳に。 頬を過ぎた風が、ある人には優しく、わたしにはとても無情に感じられるとき、日陰に立っていることがなんだか後ろめたくなった。こうして時間は過ぎていく。どんどんとタイムリミットに近づいていくのに、それは“いつの間にか...
ほろほろあめ。 | 2011.06.27 Mon 14:12
水面が反射し、天井がゆらゆらと揺れているのをしばらく眺めていた。沼にぼこりと奇妙な音を立てて湧き上がる泡のように、仕舞われていた記憶がくっきりと浮かび上がる。 今日は、穏やかな日だ。なんとなく、そういった内面の機微を冷静に見られるようになってきた。凪の一日を、きちんとつかんで過ごせることなどなかったはずなのに。苛立たしく攻撃的な日々は、後悔とともに過ぎて行って、結局残るのはやはり≪後悔≫だけなのだな、と思う。 扇風機が、静かに、だけど確かに音を立てながら回っている。ラムネの瓶をしげしげ...
ほろほろあめ。 | 2011.06.24 Fri 11:26
目覚まし時計を午前4時に合わせた。ベッドに入ってからはしばらく本を読んでいたけれど、そのままの格好でいつの間にか目を閉じていた。手首の力が抜けて、本が親指を挟んでぱたりと閉じたときに少し目が覚めた。 目覚ましをかけたところで梅雨時期ではあるし、特に今夜などは明け方まで大雨だと予報では言っていたのだから、諦めていても問題はないはずだったけれど、自然に対する少しばかりの期待を胸に眠った。 午前4時の目覚まし音で起きたけれど、ずっと夢を見ていたような怠さがあった。ベッドから抜け出し、階段まで行くと...
ほろほろあめ。 | 2011.06.21 Tue 13:34
春一番という言葉を聞いてなんだかそわそわした。もうその時期を通り過ぎて数カ月が経つが、その風が吹くところを想像すると、胸をつかまれたような感じがする。 そこに立っている女の人は、右手でスプリングコートの胸元を押さえ、左手でコートの裾を押さえている。ベージュのスプリングコートから見えるスカートは、真っ赤なボックスひだで、周囲の色とは全く違う鮮やかな、朱に近い赤だった。彼女がその風に煽られたとき、一緒に何かが吹き飛ばされた。 約束の時間より早く待ち合わせ場所に着くように出かけたことをいい...
ほろほろあめ。 | 2011.06.20 Mon 12:08
本物の≪白≫に出会えないことを知っているのに、やはり知りたいと思うのはなぜだろう。この世で誰一人として≪本物の白≫を知りはしないのに。 彼女は、意識が戻ってから新館の病室へ移されていた。壁は淡すぎるくらいのパステルピンクに塗られていて、天井は白、窓に下げられているカーテンも白だった。「ねえ、天井の白と、カーテンの白、あとこのシーツの白。どれが本物の白だと思う?」 シーツの上に置かれている彼女の手は本当に白くか細い。その手のひらと指でシーツを軽く握りしめていて、視線を落としたままゆっくりと...
ほろほろあめ。 | 2011.06.17 Fri 11:50
新緑の季節、風薫る季節。そんなさわやかな季節のはずなのに、ここ数年は、この新緑の臭いに噎せ返ってしまい、鼻だけは清々しく過ごすことができないでいる。目に見る新緑も、きれいだと思う。だけれどそこは眩しすぎて目を逸らしてしまうのも事実で、ただ好むのは雨のみとなっている。ということはまったくもって清々しくなど過ごせていないということになるのか。 雨はいい。雨上がりよりも、雨の降り始めのほうがなおいい。物陰にひっそりと誰かが佇んでいるような、振り向くと赤い長靴が見え隠れしているような、そんな...
ほろほろあめ。 | 2011.06.15 Wed 17:16
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