[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
喋りたくて、いや、一方的に話しかけたくて、100円ショップで小さな球体関節人形を買った。頭部さえも球体で出来ているもので、流行の着飾った人形ではない。 泣きたくなったわけではない。怒りたくなったわけでもない。ただ、漠然とした《なにか》を、ほんの少しずつなら、話せるような気がしたから。誰かに聞いて欲しいわけではないけれど、僅かでも空に届くといいと淡い期待を持っている。もし届かなくても、それはそれでいい。 この《なにか》を、今はそのままにしておこうと思う。ぎゅっと握り締めている手から、無理やり指...
ほろほろあめ。 | 2011.06.14 Tue 19:48
夏はすぐそこ、のはずだけれどいつの年の記憶にも、殆ど夏は存在していない。 夏は、あまり好きじゃないの、と君が言ったのは知り合って初めての梅雨明け宣言の日。――みんなが一斉にはしゃいでいるようにみえるのよ…… と、何も思わなければそれがどうした?というような一言だけれど、その奥にはいろいろなものが埋まっているのだろうと思った。それは、君だから、なのだけれども。 何もかもが雑多に入り混じっている店内で、テーブルの上だけは小奇麗にしてある喫茶店。珈琲、紅茶、マンゴォジュース、柚子ティー、ビール。メニ...
ほろほろあめ。 | 2011.06.13 Mon 21:40
国境にさしかかった僕は一旦足を止め、見えない白線を乗り越える勇気を今一度自分自身に問いかけてみた。答えは出ていたはずなのに、と小さな自分を悔しく思った。 孤独に纏わる寂しさや悲しみ、もちろん楽しみもそこには含まれている。生きている以上抱えておかなければならない数々の感情と記憶を、僕はこの国境を越えることによってどうしたいのだろう。超える前に一息つこうと腰を下ろした。この弱さが僕なのだと少し笑えたけれど、きっと君も《らしい》と笑うだろう。国境に咲く花を、いつか君に届けられるといい。
ほろほろあめ。 | 2011.06.09 Thu 16:57
手にはチョコレートを握っていることを、伝えられないでいました。 雨が降ると予報では言っていたけれど、そんな気配はまったくせず、雨の匂いも今はまだしない。背負籠の中からひとつを選び、細々と確認をしてからまた戻す。その作業を繰り返しながらじっと俯いたまま歩いていました。 「綺麗な花には棘がある」 君がそう呟いていたのは昨日のことです。綺麗なものへの憧れではなくて、綺麗だと言われるものを綺麗だと思いたくない意固地な部分が君の特徴かもしれないですね。そういうと、傾いた顔に見え隠れする口角が一...
ほろほろあめ。 | 2011.06.07 Tue 15:34
まず始めに、端の方から順番に言葉の意味が落ちていき、そして言葉そのものが零れていき、今残されているのはほんの僅かな言葉達です。それでも辛うじてこうしてお話しをすることが出来ています。 端から失っていっていたはずの言葉は、次第に歯抜けのようにも抜け落ちていき、とうとう最後に残されたものは表情だけになりました。 意味を求めると矛盾が生じ、矛盾を解こうとすると混乱が生じ、優しさを覚えることを忘れていました。 君が『ぼくは……』と唇を動かすたびに、僕は萌え出した若葉を思い出して、瑞々しさと蒼さに少し...
ほろほろあめ。 | 2011.06.03 Fri 11:51
お風呂へ入って、シャワーを浴びながら、思わず両手で顔を覆ってしまった。《過去》を思い出す時あなたは『時間が遡って行く』と言うけれど、わたしにとっては『時間が止まってしまう』という感覚が一番近い。シャワーを浴びても、雨に打たれても、何一つ汚れは流れ落ちてくれないけれど、もしかすると流れ落ちないようにぎゅうっと大事に抱えているのはわたし自身なのかもしれない。 ベッドへ潜り込んでそっと目を閉じても、胸騒ぎが修まることはない。その原因に目を向けることは吝かではないけれど、もう少し時間が欲しいと少し...
ほろほろあめ。 | 2011.05.27 Fri 14:05
足下を流れる水は、くるぶしの高さで滑らかな歪みをつくり、青のインクを零したような鮮やかな水の色に、君の涙がぽたりと落ちれば僕は全身が身震いを起こす。 僕にはどうしても抜け出せない世界がある。君に抜け出せない世界があるように。ときどき世界に入り浸ると、僕はもう君のことも、……そう、君のことも忘れてしまう。きっと、君は傷つくのだろう。世界から戻ってくると、僕の胸ははち切れそうに苦しくなっていく。君がやさしいから、 罪悪感の塊というほどに、懺悔などなんの価値も見出せないほどに。
ほろほろあめ。 | 2011.05.26 Thu 17:10
わたしには見つけられなかったものを、もしかするとあなたが見つけるのかもしれない、そう思うとなんだかとても嬉しいのです。でもね、もし見つけられなくても、わたしはがっかりなんてしません。 ときどきは、宇宙の果てに行ってきたの、なんていう気分の時があってもいいと思うのですよ。そんな気分の時だけ見つかる言葉があると思うのです。 苺を摘むようにそうっとやさしく、ゆっくり丁寧に拾い集めている言葉を、どんな色に染めるのでしょう。苺のように赤い色なのか、それともまだ熟れていない緑なのか、はたまたもっと慎重...
ほろほろあめ。 | 2011.05.25 Wed 14:29
日常を切り取る。今日一日を思い返して、どの瞬間を切り取って、さらにそのうちのどの部分を切り取るのか。ドラマで目撃者の証言の場合刑事:「何か思い出すことはありませんか?なんでもいいんです。どんな小さなことでも……」目撃者:「……そういえばあの時……たしか〜〜」「思い出すことなど自分には出来ないだろうと思うのだけれど、もしかすると、ほんの些細な瞬間が、とても大きなキーワードになったりすることもあるのでしょうか」(でも全部を覚えていることは出来ないし……)真知子が真剣な眼差しで学校一番の美人教師に...
ほろほろあめ。 | 2011.05.14 Sat 10:45
水銀灯が……一番眩しい夜だなあ。月までは遠いなあ。そんな言葉でお終いだなんて、あんまりだと思いませんか。でも、あんまりだと思いながら、遠い月が一番身近に思えるようになりました。見上げた月は、本当に偶然、スーパームーンだったのですよ。やっぱり月には行けませんけどね。遠くから見るからいいのかも、と思うのですけど……どう思いますか?
ほろほろあめ。 | 2011.04.07 Thu 11:46
全40件中 31 - 40 件表示 (4/4 ページ)