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翡翠の螺旋

JUGEMテーマ:自作小説    遠い何処かから、雷鳴が響いてくる。その場所では、稲妻が世界に傷を刻んでいるだろう。けれどそれは豊満な傷だろうから、世界は恍惚を感じているだろう。  そんなことを考えていた。考えていたのは私ではない。考えていたのは祖母で、それは私が生まれる朝のことだ。生まれた朝ではない。つまり私はこのときまだ生まれてはいない。だからこれは生まれる前の記憶だ。母の胎内から、私はその光景を見つめていたのだった。祖母は中庭に面した縁側に腰掛けている。父と母は病院にいる。二人...

pale asymmetry | 2023.05.01 Mon 22:19

たまには仕事の話でも

JUGEMテーマ:自作小説     スイセン。 学名の「Narcissus」は、ギリシャ神話の美少年ナルキッソスに由来 水面に映った自分の美しさにうっとりし、 この花に姿を変えられたという伝説があるとか ――てことで、花言葉は「自己愛」「うぬぼれ」など   ただ、思うのですが。 確かに清楚ですらりとした美しい花ですが、 身もふたもない話、ほかにも美しい花はいくらでもあります。 というか、花は美しいからこそ花なのでは。   水仙の可憐さと、そのトンチキな伝説...

ハリネズミの幸福 | 2023.05.01 Mon 09:29

惑の獣

JUGEMテーマ:自作小説    その呼吸は、織り込まれた痛みのせいで世界を失おうとしていた。その痛みは快楽を伴うものではないように見えたので、私は立ち止まり膝を折った。  曇天の午後、川端の遊歩道に私以外の人影はなかった。川上から吹いてくる僅かに濁った風が、人影を蹴散らしたのかもしれない。私がここにいられるのは、昨日山風で智恵を貰ったからだろうか。それともその上でも尚、阿呆だからだろうか。私は両腕を伸ばし、その獣に触れる。濡れていた。生温く濡れていた。  それは見知らぬ獣だった。...

pale asymmetry | 2023.04.30 Sun 22:14

本日「3分の2」経過

JUGEMテーマ:自作小説   ここのところ割と頑張ったので、今日のおやつはミニストップの「プリンパェ」です。 香ばしいカラメルソースと、ローストシュガーのじゃりっ、ざくっという食感がたまりません     割とどうでもいいことに気付いてしまいました。 仕事が進まない日(やってもやらなくても差し支えない日)って、 ぼーっと動画見たり、ゲームしたりすることも多いのですが、 「いかんいかん」と切り替えて、とりあえず意識的に仕事をすると、 意外と「今日中に何か1本...

ハリネズミの幸福 | 2023.04.30 Sun 15:52

上弦する螺旋する

JUGEMテーマ:自作小説    瑠璃色の闇が、私を嘲笑っているように感じた。きっと瑠璃式様が踊り出したくてうずうずしているのだろうと思った。私の装束は瑠璃式様のそれで、違っていたのは顔を隠す薄布の代わりに瑠璃色の襷で目隠しされていただけだった。だから私の身体を借りて瑠璃式様は踊り出したかったのだろう。けれどそれは出来ない。正座する私の両手は腰の後ろで束ねて縛られていたから。 「これは儀式ではありません。遊戯です。復唱しなさい」  私の傍らで並んで正座する父が、私の耳元に口を寄せて...

pale asymmetry | 2023.04.28 Fri 22:17

輪のみちゆき

JUGEMテーマ:自作小説    中天から真すぐに降りてくる陽光が、中庭の空気を過剰に乱反射させていた。幼い私はその風景を見つめて、庭というものは刺々しいものなのだなと思ったことを記憶している。陽光をたっぷりと蓄えていたにもかかわらず、中庭の空気はひんやりと冴えていた。だから寒い季節だったのだろう。桜の大樹も眠っていた。夢も見ていない。幼い私はそう感じた。 「甘い匂いだ。甘い匂いがする」  乱反射の隙間から、真朱の塊が顕れた。今思うとそれは全身が真朱色に染まった半裸の偉丈夫だった。...

pale asymmetry | 2023.04.27 Thu 22:02

はむ(あずける)

JUGEMテーマ:自作小説    陰性の雨は黎明の裏側に旅立ってしまっていた。それは秘されたわけではない。貶められたわけでもない。何の理由もなく、目的地もなく、旅を続けるためだけに旅立ったのだろう。そして私は誘われている。そう感じていた。 「偽は真で真は偽。いつから気づいていた?」  私の傍らに船頭が立っていた。その声はいつかの鬼面の少年のものだった。私の血流と鼓動が、昨日の夜よりも川との絆を強めたせいかもしれない。私の螺旋が絆を強める前に、旅立たなければいけないのだろうか。 「...

pale asymmetry | 2023.04.26 Wed 22:04

かかげる(てらう)

JUGEMテーマ:自作小説    それは稲妻だった。流れ星だったかもしれない。いや、稲妻から流れ星へと移ろう現象だった。そういう事象を私は見つけて、それに目を凝らす。誰かが囁いていたのだ。稲妻が流れ星に変化したら……と。  銀朱の炎は渦となって、浮遊する非現実の、その風景の全てを巻き込んだ。私が見つけた稲妻も流れ星も、それが連結する事象も渦に巻き込まれてしまう。その渦はそのまま固定された現実へと召喚された。それが唱えによって召喚されたのか、それとも母の欲望によって召喚され...

pale asymmetry | 2023.04.25 Tue 22:29

ベルとポップコーン

JUGEMテーマ:自作小説     細い鉄パイプを思わせる、主張の強い茎を持つ花 Googleレンズで検索したら、イングリッシュブルーベルに行き当たりました 茎、花の付き方、葉などは確かにそうだけど、そうなのか? 植物の同定的なことはどうも苦手です   近所の「ラジオ講座のテキストくらいしか買わない小さい書店」の前に 打ち捨てられたようにつくられている花壇で咲いていました この花以外は雑草的な葉っぱが優勢です     こちらはブルーベルならぬ、いわ...

ハリネズミの幸福 | 2023.04.25 Tue 18:39

文庫本カバーの謎(※解明はしておりません)

JUGEMテーマ:自作小説     ゆうべこんなものをつくりました 文庫本のブックカバーです 母の遺品の中で、ハンカチとしては(ペラッペラで)いまいちだけれど、 裏地や接着芯をつけて縫ったらブックカバーとしてイケんじゃね?という思いつきでした 中身はカート・ヴォネガットの『死よりも悪い人生』(ハヤカワ文庫) 最終頁の表示は「382ページ」でした   文字通りの「手縫い」なので、縫い目が特にアレな部分を 「タイに乗るむぎちゃん(楽天のマスコットパンダ・おパンの...

ハリネズミの幸福 | 2023.04.25 Tue 09:25

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