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フランスの作家であり、郵便輸送の飛行機パイロットでもあったサン=テグジュペリは、様々な挫折を経て、この美しい物語を遺書とするように、第二次世界大戦時に空軍少佐としての飛行任務のさなか、忽然と消息を絶ちます。どこかに墜落でもしたのでしょうか? 捜索は行われましたが、自軍、敵軍とも、彼のその後を明らかにすることはできませんでした。44歳でのことです。美しい伝説だけを残すように...。 彼は、この童話の形態を借りた物語の献辞で、子どもたちにではなく、大人である”この世で最も大切な、ぼくの友だち、レオン...
'ものがたり'散策 | 2016.10.23 Sun 18:34
人はたいそう昔から、伝達手段を発達させてきました。しかしそれでも足りないのでしょう。個々の技術的な問題がありますが、それを取り除けたとしても、もどかしさを感じるのではないかと思います。 例えば、全く未知のことを相手に伝えるならば、まず、そこには物理的あるいは時間的限界があって、なんとかやっとというところでしょう。 たとえ、それらの限界を超えられたとしても、そもそも人が人にものを伝える場合、意味の届かない、つまり言葉などの伝達手段が届かない領域がどうしようもなくあって、それに伴う伝える...
\'ものがたり\'散策 | 2016.10.22 Sat 19:08
表題の一部にもなっている”まぼろし”とは、心理的レベルでとらえるなら、それは現実に属するものといってもよいものと思われます。 この物語では、一匹の犬の姿をとった、その”まぼろし”が、一人の少年の愛情の深化を背景に、彼の成長へのトリガーのような役割を担って、リアリスティック描き出されます。このフィリッパ・ピアスの曖昧なものをリアリスティックに描く手法は、『トムは真夜中の庭で』同様、健在です。 そして、人が、思い通りにならない現実を愛することができるようになるには、いかに多くの深い体験を重ねなけ...
\'ものがたり\'散策 | 2016.10.19 Wed 18:50
”時間”という抽象的な概念を扱った作品でありながら、けっして理屈っぽくはなく、作者フィリッパ・ピアスが描く非日常の”永遠”にも似た時間空間が、”日常の時間”を時々挟み込みながら、実に巧みに表現されていくのですが、強引さはなく、あくまで自然で、まるでこれも現実の出来事のように思わされます。いや現実なのかもしれません。あるいはなぜこのような物語装置が組めているのか、なんとも不思議な思いにさせられるのです。児童文学作品ですがファンタジー小説とも言えます。 ちなみに映画監督の宮崎駿さんは、最も影響を受け...
'ものがたり'散策 | 2016.10.18 Tue 19:18
現代人にとって自然科学や経済の考え方は必須です。大人になるためには、それらに合わせて現実認識を、表面上、単層的にしてゆきます。そうしなければ社会の成員として生きてゆくことができないからです。 しかし人間というものは、そんなに単層的な存在ではないので、過剰適応しようものなら、そのギャップに窮屈さを感じてしまいます。 こういうことに我々は、どう対処すべきなのでしょうか。大人であろうとして自らの多層性を抑えこんでしまうと、そこからは、現実に対する悲しみなどの、マイナスの感情を抱きかねません。 ...
'ものがたり'散策 | 2016.10.17 Mon 19:19
まず、ここでトールキンは、芸術の諸分野で、幾世代にも継承されてきた歴史の一番後ろにいる我々の現状を、老いるという言葉を用いて考察しています。 老いとはずいぶん前から言われていたことですが、長い歴史の中で、もう何もかもやり尽くして、独創性を求めるにしろ、この上に、今更何も築けない、もしくは感じ取ることができないという思い込みのことであるとトールキンは定義します。トールキンは、この呪縛からの回復を望んでいます。 回復とは陳腐さや慣れからくるぼやけた視野を再び曇のない状態へと移行させることです...
'ものがたり'散策 | 2016.10.16 Sun 20:38
キリスト教圏での考え方に由来するのでしょうが、トールキンは、この論文でかねてから、、神という存在の創造行為に対して、人間だけが神から授かった力、帰納や抽象の能力の行使の結果としての妖精物語の創作を準創造としています。 そして妖精物語を成功にいたらしめている能力を指して、一般的な想像という言葉を用いず、限定的に用いた場合の言葉で”空想(ファンタジー)”という言葉をあてています。非現実性の概念であり、目で見ることのできる事実をのさばらせない自由な概念であるとも述べています。想像という言葉では、イ...
'ものがたり'散策 | 2016.10.15 Sat 18:51
この章はトールキンがあげている妖精物語を語る上で、重要な三つの問題のうちの三つ目で、最重要事項としています。それは妖精物語の現代における価値と役割の問題です。 妖精物語(ファンタジー)の適性年齢を、一般では、6〜60歳の子どもとしているとの馬鹿げた冗談が、巷に大真面目な話としてまかり通っていることへの批判など、ファンタジーをごくありふれた普通のものとして、差別的に特別視しない者たちへの、胸のすくような始まりとなっています。 そして、子供の体の成長と牛乳の関係のように、妖精物語は、子どもの...
'ものがたり'散策 | 2016.10.14 Fri 18:30
トールキンは妖精物語を語る上で避けられない問題を三つあげています。ひとつ目は先に述べた妖精物語の定義です。 そして彼は、このような物語を成り立たせているのは、人間の抱くどのような興味なのかということを知り、それらの物語を比較することによって、妖精物語の起源とは何かという第二の疑問に自然と導かれるのです。 そしてそれは、妖精物語だけではなく、神話や民話なども含む、物語全般の起源に考えは及びます。 ただしトールキンは、自身の興味を、個々の物語に繰り返し現れる類似性などに焦点を当てる民俗学者...
'ものがたり'散策 | 2016.10.13 Thu 19:02
トールキンの妖精物語(ファンタジー)に関するまとまった論文です。これに関しては、きじにしようと思うと、どうやら長文になりそうなので、章ごとに分けてブログにあげてゆこうと思います。また、わたしにとっては難解な論文なので、記事の中身は、現時点で言及できるところまでに留まるでしょう。よって、本が示す本来の内容からは、かけ離れてしまうかもしれません。 この論文に興味をもったのは、ファンタジーをごくありふれた読物として読む者が、そのことを公言しようものならはばかられる、どこか後ろめたい気持ちのためで...
'ものがたり'散策 | 2016.10.12 Wed 18:26
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