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せんせいとせいとのじかん。  『シーラという子』 トリイ・ヘイデン

 先日から漫画『こどものじかん』を読んでいてヒロイン・九重りんにどうしても重なって見えたのが、現実世界に存在する本書の主役シーラだった。そして、少し前からどうしても再読したくなって続編の『タイガーと呼ばれた子』とセットで安い古本を買って積んであったので『こどものじかん』のラストを読み終えてすぐに読み始めた。  この二人のキャラクターの共通点は年齢の近さと髪の長い美しい少女(金髪)であるという外見のイメージだけでなく、大人が怖じ気づくほど大人びた問題児であるところ。野木田先生(ヒロイン九重りんが...

@東京都オタ区 | 2013.08.13 Tue 08:34

金田一耕助って意外となんにもしないんだね

TVドラマの横溝正史シリーズから30年以上を経て初めて読んだ金田一耕助は、意図的に「最後の事件」。ようするに、こういう探偵推理小説は昨今あまり読む気がしなくなっていたからラストの大一番だけ、話のタネに読んでおくつもりだったのだが、予想外に面白かったので、気が向いたらまた読むかも知れない。最初は猟奇殺人事件の様相だが、最後まで読んでみると…なるほど良くできた話である。TVドラマの頃の懐かしい感情がよみがえって、ラストはちょっと泣けてしまった。 JUGEMテーマ:ドクショノカンソウ

@東京都オタ区 | 2013.08.10 Sat 10:38

“小よく大を制す” (たぶん)近代最後の剣豪・武田惣角 伝

『鬼の冠』 津本陽 新潮文庫    (たぶん)近代最後の剣豪・武田惣角。大東流合気柔術の創始者。合気道の源流の一つ。昔の武術家・武道家に関する武勇伝はとかく大袈裟に語られるものも多く正直どこまで信じて良いのか判断に困るが、明治維新のころから全国で生死に関わるような武者修行の旅を繰り返した惣角が、現実に記録に残る事件に幾度も単身立ち向かい84歳まで生き残ったというのは、実際に現代の常識では考えられない神業に等しい能力を持った武術の達人であった証明なのかも知れないと思った。  また、格闘した誰...

@東京都オタ区 | 2013.07.26 Fri 21:30

小人たちの新しい家/作・メアリー・ノートン(1982)

   アリエッティを観て読み始めた映画の原作が物凄い傑作だったことに驚いている。さすがは宮崎駿目の付けどころが違う。  このシリーズに登場する借り暮らしの小人たちの世界は文字通り人間生活を模していた。多くの便利な物が次々と世に生み出され必要不可欠になってゆくことは果して本当に幸せなのかという疑問を、小人たちの波瀾万丈の冒険譚によって表現していた。今時の話題で言うなら原発は本当に必要なのかという議論も入るだろう。自然と人工物のほど良いバランスの中に生きることの大切さを忘れてはいけないと著...

@東京都オタ区 | 2013.05.24 Fri 03:59

空をとぶ小人たち/作・メアリー・ノートン(1961)

   小人の冒険シリーズ当初のラスト第4巻。物語の前半は周囲の人間たちの様子や新たな敵の企みが描かれて話は少々だれるが、中盤からは小人家族三名が天井裏の密室から決死の脱出を計画して、これまでで最大の緊張感と手に汗握るエピソードが展開する。  模型の鉄道と街という趣味の世界はもともとは西洋文化から来たものだということが分かるお話。川を挟んで一方は片足を失った心優しい老人が楽しみで作りあげた小さな町並み、もう一方は商売人根性からそれを真似て客集めに奔走する守銭奴な老夫婦。(まだ観たことがない...

@東京都オタ区 | 2013.05.22 Wed 06:27

川をくだる小人たち/作・メアリー・ノートン(1959)

   同族の大人たちが望むように、安定した人間の家屋の暗がりの中でひっそりと暮らす息苦しい借り暮らし生活より、危険と隣り合わせでも広大な自然の中で自由気ままに生きるアウトドアの生き方に憧れるアリエッティの気持ちはたぶん作者自身の本音だったのだろう。  この3巻では主役のポッド家の三名がさらに強い絆によってまとまってゆく家族愛と "人は見かけに寄らない" スピラーの高い人格にあれほど卑下してみていたアリエッティのお母さんホミリーが恥じ入る姿が印象的。  一日一冊のペースで読むのは5年前のトリ...

@東京都オタ区 | 2013.05.20 Mon 02:22

野に出た小人たち/作・メアリー・ノートン(1955)

   あまりにも面白くてほとんど1日で一気に読んでしまった。  ジブリアニメ「借りぐらしのアリエッティ」原作になった1冊目はあくまでもプロローグで、この2冊目こそがシリーズ名通り本当の意味で "小人の冒険" に相応しいエピソードでわくわくした。  また、アニメの最後に登場してアリエッティの家族を救出した、自然児ジムシー(未来少年コナン)を彷彿させるような小人の少年スピラーがこの本の中で大活躍をしている。  "借り暮らし(会社勤め)" ではない "自足自給" 生活の大変さと共に、大自然の中で創意工...

@東京都オタ区 | 2013.05.13 Mon 17:12

床下の小人たち/作・メアリー・ノートン(1952)

  (イギリスで優秀な児童文学に贈られる世界的に有名なカーネギー賞受賞作)  ジブリアニメ「借りぐらしのアリエッティ」を観たときには手塚治虫の漫画とTVアニメ「ミクロイドS」(1973)を思い出したが、この本を読んでいたら昔の米SF特撮TVドラマ「巨人の惑星」(1968〜1970)やSF映画「ミクロの決死圏」(1968)、アニメより本の方が好きだった「ニルスのふしぎな旅」(スウェーデン児童文学/1906)などなど、1960年代生まれとしては、小人というキーワードに対してちょっと考えただけでもこれくらい出て来た。作者の出自であ...

@東京都オタ区 | 2013.05.06 Mon 20:50

(漫画)千年の夢―文人たちの愛と死(上下巻) 斎藤なずな 小学館文庫

 正直言って上巻の登場人物たちはあまり記憶に残っておらず、面白かったのは下巻の方。  それにしてもかつての文壇の巨匠たちは本当にろくでもない人間ばかりだったということは良く分かった。あるいは天才と狂気の狭間か。名作のほとんどが作者の私小説であり黒歴史の産物だったというのは、いわば現代の暴露本みたいなものか。  一見して才気にあふれ人間味があり孤高で崇高なオモテの顔の反面、異性と性欲にだらしないウラの顔。そして結局は庶民的な生活から逸脱してゆく文人たちの爛れた人生。  ここに登場した作家たち...

@東京都オタ区 | 2013.04.26 Fri 13:44

大人の文芸作品という品格によって現代マンガ文化の影で忘れられた秀作

   先日偶然古本として安く入手した掘り出し物。著者は現在大学の準教授をされているようだが、メジャーにならず少ない著作も廃刊ばかりということを残念に思わざるを得ない希有な才能。この本はタイトルに象徴される生物をイメージにした大人の連作集で、流麗な画風と静かな物語の進行はさながら何かの文芸賞を受賞した作家の短編集を思わせる。しかしまさにその地味な品格が現代のマンガ文化の中では埋もれてしまったのだろう。もったいないとしか言いようがない。ちょっとしたきっかけで見直されて高値がつく前に既刊を全...

@東京都オタ区 | 2013.02.03 Sun 12:35

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