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JUGEMテーマ:気になる本 ☆3−6 「左近。もうよい。火焔に害意があるとは思えない。還してやれ」 「良くはありません。火焔は理由もなく、突飛な行動をする奴ではない。何らかの理由があり、ここにいたとしか思えない。それを、はっきりさせないことには、安心できません。ことにこれは、綾白様の身の危険にも繋がる。俺の役目は、綾白様の身を守ることだ。いくら綾白様の命令であろうとも、聞けないことがあります」 「まったく・・・これほど主人の命令を聞かない随身も珍しい」 綾白は困った様に溜息をつく。 「火焔...
たいむかぷせる。 | 2010.12.06 Mon 10:53
JUGEMテーマ:気になる本 ☆3−5 「さ、よろしいですよ」 仕立屋がそう言ったとたんに、火焔は婚礼衣装を脱ぎ捨てた。いつものように、男子の衣装を身につける。 屋敷にいる事が、たまらなく嫌だった。 馬を引き出すと、屋敷から駆け出した。 馬を駆り、都の外へ出る。 気まぐれに、馬を走らせているつもりでいた。しかし無意識に、北を目指していたらしい。 北山の姿が近づいたところで、その事に気がついた。 苦笑する。 「我ながら、馬鹿みたいだ」 「会いたい」「会えない」と迷い続け、めそめそした気分で馬を...
たいむかぷせる。 | 2010.12.06 Mon 10:52
JUGEMテーマ:気になる本 ☆3−4 だが、その旗印に綾白を担ぎあげるのは止めて欲しかった。 自分は、それほどの器ではない。 鳳悠の所有者であると、胸に印さえつけられている。誰も知らない事とはいえ、そんな印を付けられた者が、国を統べる大皇の座に座ることができるのか。 大皇は高貴で、そして神聖であるべきだ。 しかし、花狩りの日、火焔は言った。 綾白の迷いを両断する様に、「逃げです」と言い切った。 その言葉を思い出したからこそ、今日、錦たちの誘いに乗る気になったのかもしれない。 ・・・この面の...
たいむかぷせる。 | 2010.12.06 Mon 10:50
JUGEMテーマ:気になる本 ☆3−3 「どんな方法でもいい。二似儀之剣が手元に来たという事実が、あの方を動かす要因になってくれればと思う。そして、あの方が蜂起した暁には、二似儀之剣があの方の物だという事実で、あらゆる方面からの助力も得られる」 「二似儀之剣は、大皇様の住まう詳輝殿の奥、似貴利神を祭る小殿に安置されている。そこに近づく事ができるのは、大皇様と側仕えの貴族、そして随身だけ。そういうことね」 大皇の随身。すなわち火焔だ。 「そうだ。お前に、二似儀之剣を盗み出して欲しい」 流石に...
たいむかぷせる。 | 2010.12.06 Mon 10:50
JUGEMテーマ:気になる本 ☆3−2 「座れ、火焔」 左近に促がされ、火焔は円座に座った。ちょうど、錦の正面の位置だった。隣に、左近が座る。 気を引き締め、火焔は官吏たちの顔を見回す。 「律家の惣領娘、火焔だな。私は錦道芳。知っているな。今日お前を呼んだのは私だ」 錦が口を開く。 ここは大内裏の外だ。貴族相手に声を出して良いものかと迷う。すると錦は、 「今日は、大内裏の中と同様の作法でいい」 と言った。 そこで火焔は、口を開く。 「お顔もお名前も存じ上げております。錦様が私に何の御...
たいむかぷせる。 | 2010.12.06 Mon 10:48
JUGEMテーマ:気になる本 ☆3−1 風雅が、含み笑いする。それで火焔は、ハッとした。 「なによ。変な笑い方をして」 濃い緑の葉を透過して、初夏の陽光が降ってくる。 火焔は風雅を馬に乗せ、北山に向かっていた。 七日に一度、火焔は体を休める事を許される。鳳悠の随身を始めてから、五十日余り。休みの日が楽しみで仕方がない。 今日が、そのお休みの日だった。参内せずに済むと思えば目覚めも早い。 しかし、この日は朝から、絹を扱う商人と仕立て屋が、律家の惣領屋敷に呼ばれていた。 火焔の婚礼衣装の準備の...
たいむかぷせる。 | 2010.12.06 Mon 10:47
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 7 準備室を後にして、わたし達はひとまず寮に戻る事にした。 一階の廊下を抜けて、中庭に出る。 礼園女学院の敷地は大学なみに広い。その広さをいかすためか、小等部から高等部までの校舎や体育館、学生寮はどれもこれも互いに離れている。 例えるのなら、遊園地でそれぞれのアトラクションが校舎になっている……というのが、一番嵌まった言い方だろうか。うん、どことなく夢があるこの表現、いつか幹也に話してあげよう。 後頭部の校舎から学生寮までの道のりは長い。 途中、マラ...
たいむかぷせる。 | 2010.11.26 Fri 17:08
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 6 「……他の生徒達の話では、私が二人を止めたという話です。けれど私にはあの日の記憶がない。うん、物忘れしやすい質だとよく言われてきたけど、ほんとうに記憶が抜け落ちるなんていうのは初めてだ。なにか大事な事を聞いていたとしたら、取り返しがつかない。いや、それ以前に原因は私かもしれない。私はあの日、彼女達と同じ教室にいた。それだけでも、責任を追及されるべきだ」 思い詰めた表情で先生は言う。 そこで、わたしはようやく気がついた。忘れた秘密を手紙にして送られている...
たいむかぷせる。 | 2010.11.26 Fri 17:08
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 5 式は仕方なげにため息を漏らして言う。 幹也の話では、式は自分が寝床と定めた場所以外では腰を下ろしもしないのだそうだ。 なのに、まだ見てもいないわたしの部屋に泊まる事を式は我慢する、と言う。 フクザツな理由はこれで、ようするに式はわたしを嫌っていないのだ。わたしは式が嫌いなのに、これじゃあどこかちぐはぐで、やりにくい。 わたしだって―――幹也のことがなければ、両儀式の人となりは好きな部類に入ると思うんだけどなぁ。 今度はわたしがため息を漏らす。 と...
たいむかぷせる。 | 2010.11.26 Fri 17:07
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 4 礼園女学院高等部の職員室を、わたしと彼女は後にした。 ◇ 「オレ、前から思ってた。トウコって実はあったま悪いんじゃないかって」 一月四日、月曜日、曇り模様のお昼すぎ。 わたしの横で、わたしの“目の代わり”が憎々しげにそんな事を呟いた。 わたしはこいつが敵である事を棚の上に置いておいて、嘘偽りない本心で同意する。 「そうね。よりにもよってあんたを学園内に潜り込ませるなんて、正気の沙汰とは思えないわ」 「ひどいな。今回の犠牲者は間違いなくオレ...
たいむかぷせる。 | 2010.11.26 Fri 17:06
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