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JUGEMテーマ:気になる本 ☆6−1 火焔は律家を抜け出すと、久見所の風雅を訪ねた。 久見所に寝泊りする事があったので、彼女の所に着替えを一式預けてある。婚礼衣装のまま飛び出したので、出迎えた庭番や風雅は目を丸くした。 「初夜に久見所に遊びに来る花嫁なんているの?」 呆れ顔の風雅に着替えを手伝ってもらいながら火焔は首を振る。 「婚儀を済ませ、高峯の妻になった。けれどそのすぐ後に、私は高峯の手で討たれて死んだ」 ぽつりぽつりと火焔が経緯を語るのに、風雅は一言も差し挟まずに聞いてくれた。 ...
たいむかぷせる。 | 2011.01.17 Mon 09:21
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−9 火焔は、白い小袖に白い打ち掛けという婚礼衣装を着た。化粧をし紅をひいた。 男子の服装ばかりして紅一つひいた事がなかった。そうして着飾ると女らしく見える。 それだけで家臣達は誉めてくれた。 静かに婚儀は進んだ。 正装した高峯の隣に座り、火焔は広間に集まる律家の人々を冷静に見回していた。戦の始まる直前、高台の上から自陣の配置を冷静に見回す様な気持だった。 婚姻の儀式が終わる。 広間に酒や食事が運ばれ、庭に面した引き戸が開かれた。 庭に敷かれていた筵は取り去ら...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:57
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−8 鳳悠は恐れているのだ。追って討ち取ろうとする気概もない。ただ怯えて、甲羅の中に首を縮める亀の様に、都の中で身を守ろうとした。 乱戦の夜から、火焔の心はすっきりと整理されていた。 もう迷いはなかった。 ・・・鳳悠を守るために戦はできない。綾白様の敵にはなれない。 そうと決めると、晴れ晴れとした心持になった。 綾白一党が今後どう動くか解らない。そんな時期に、火焔の婚儀を執り行うべきか否か、律家で問題になった。延期するべきではないか、と言う家臣もいた。 しか...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:56
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−7 律家と笙家に阻まれていたが、彼らの背後にある堅精門が、ゆっくりと扉を開いた。 「門が開いた!」 「斬り込め」 と叫ぶ声と、 「させるな」 「止めろ」 「門を閉めろ」 と怒鳴る声が乱れ飛ぶ。 門は開いた。目前に門がある。 しかし、綾白一党の進行は止まっていた。更に背後、貴族たちで組織する弱い一郭に、律家の別隊が突っ込んできた。崩れた場所を補強するのに、楷家の一団が走る。 「陣立てが乱れている」 綾白は呻いた。 一丸になって内裏に突入し、律家と笙家...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:56
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−6 ・・・苦しい。 胸が圧迫される様な感覚に、何度も寝返りをうった。 そうしていると、遠く馬のいななきが聞こえた。耳を澄ますと複数の馬のいななきが聞こえる。 身を起こし、眉をひそめる。 その時、廊下を掛けてくる足音がした。 「火焔!」 許しもなく引き戸を開いたのは、高峯だった。床から飛び起きた直後らしく、髪が乱れていたし寝間着姿だった。 「火焔!大内裏に向けて軍勢が押し寄せている!綾白親王の旗指物と楷家の旗指物をたてている」 ・・・来た。 火焔は跳...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:55
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−5 「綾白様が内裏にお帰りにならない。こちらにおいでなのでしょう?ご無事かどうか。それだけが知りたい」 「内裏に帰らないこと等、よくある。子供でもあるまいに、それがそんなに心配か」 「ただ帰ってこないのとは、訳が違う」 「お前、何か知ってて来たな」 鋭い左近は、直ぐに気がついたらしい・ 「詳輝殿で何か見たか」 問われて頷く。左近は溜息をついた。 「ご無事だ。あの方は、それほど弱くない。だが痛ましい」 そして屋敷の方へ向かって、顎をしゃくった。 「中...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:55
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−4 綾白の静かな目が怒りに滾る。 火焔は、飛び出して行きたかった。しかし随身の身で、そのような事ができるはずもない。 ・・・お逃げください! 心の中で叫んだ。無様でもいいから逃げて欲しかった。 鳳悠は焼印を手に綾白に駆け寄ると、髪を掴み顔を仰向けにさせる。 「大皇になど、なれぬ様にしてやる!」 熱した赤い先端が、綾白の額に押し付けられた。 ・・・綾白様! じりっと、嫌な音がした。食いしばった歯の隙間から綾白が呻く。 鳳悠が綾白を突き放した。 肌が焼...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:54
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−3 「月と同様、なんだ」 鳳悠が不愉快げに問う。すると鬼はさも哀しそうな顔をした。 「御門の治世を脅かす悪辣な者がいると思えば、満ち足りた治世も月と同様欠けるやもしれないと。私は不安でたまりません」 「悪辣な者とは誰だ」 「御門が最も忌み嫌われているお方です」 すると鳳悠は、ふんと鼻で笑う。 「あれは朕が飼っている、無力な子犬と同じだ。朕の足元で、生涯飼い殺しにする。心配には及ばぬ」 「飼い犬も主人の指を噛みます」 「なに?」 顔の半分に月光を受け...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:53
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−2 「鬼など現れるはずがない。よいな、火焔」 鳳悠が鬼に食い殺されようが知った事ではない。逆に綾白のためには、そのほうが都合がいいかもしれない。 しかし鬼が、それ以上の悪さをする事が心配だった。 内裏には、綾白もいる。 火焔は常磐に礼をとると、大内裏の楷家の兵武府へ走った、折り悪く左近は随身の役目を休む日だった。参内していない。 それを教えてくれたのは、左近の従兄弟、多聞と言う若者だった。 「間が悪い男だ」 火焔は舌打ちした。 「左近は、割と間が悪い人...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:51
JUGEMテーマ:気になる本 ☆5−1 火焔は泣かなかった。 泣くことは、許されない。身から出た錆だ。それに涙することは、自分を哀れむことだ。 自分のあさはかさを悔いるのならば、自らを哀れんではならない。 あの日から火焔は、北山へ行かなくなった。日々参内し、鳳悠の随身を務めている。 内裏で時折、綾白の姿を遠く見ることがあった。その姿を目にすると、胸に針を差し込まれる様な痛みを感じた。そんな時は、視線を逸らしてやりすごした。 火焔は兵武府でも雑用を済ませ、鳳悠の居である詳輝殿へ向かって、渡り廊下を...
たいむかぷせる。 | 2011.01.09 Sun 21:49
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