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パトリックの家から徒歩5分くらいのところに、テムズ・トレインのミルヒルブロードウェイ駅があった。 ひっそりと静まり返っており、線路が橋になっており、その橋の下にはバスステーションになっていて二階建てバスが停留していたり、タクシーが一台止まっていたりしていた。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:56
「着いたよ、圭。」 克の声にはっと我に返った圭は、慌てて手荷物を持って車から降りる。「すごく綺麗な街だったもんだから見惚れちゃった。ここがパトリックの家? 可愛い家ねえ。」
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:55
緊張する――――。 ドキドキと高鳴る鼓動は自分の意思では止められず、嫌なほど頭に響いてくる。もうちょっと、である。もうちょっとで愛しい人が自分の目の前に現れる。 その爽やかな笑顔に胸がぎゅーっと締め付けられ、苦しくなって息が出来ないくらいである。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:54
圭――――! 彼女がだんだん遠くなっていく……。しかし僕の体が言う事をちっとも聞いてくれない! 圭! 行くな! 僕の傍に……!
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:53
トゥルルル……と鳴り響く電話に圭はなかなか出る事が出来なかった。この時間であれば十中八九克からだ。 しかし、圭は話す気分ではないので、受話器を取るのをためらった。が、いつまでも鳴り響くので近所迷惑になると思ってようやく受話器を握り、耳にまで持ってくる。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:52
合格も決まり、一段落したところで改めて周りの人を見た圭は、喜んでいられない様子であることに気付く。 受験真っ最中で皆ピリピリと神経を張り詰めていて、不機嫌そうな顔をして教科書や問題集を開いて、なにやらブツブツと呟いている人もいれば問題を解こうと必死に鉛筆を走らせている人もいる。 丁度圭は英会話本を開いて目を通していたところだったので、何とか周りに痛い視線を浴びなくて済んだ。そこで麻奈が寄ってきて、何事もなくおはよう、と声をかけてきた。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:48
その次の年に、ロンドンの音楽学校からの合否の知らせが届く。圭は受かったのだ。 彼女の中にある何かが疼く。それは喜びなのか、それとも不安からなのか、はっきりした感情ではなく、ただ受かったのだという事実をすぐに呑み込む事が出来ないでいた。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:47
冬のロンドンは風がきつく、コートの襟を立てて寒さをしのごうとする人が少なくない。雪は滅多に降らないので幸いだが、冷たい北風は身に堪える。頬を真っ赤にして追い風を受けながらもせっせと歩くロンドンの人達の様子がわかる。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:46
八月下旬、圭はTOEFL筆記試験を受けた。結果は二ヵ月後の十月に届くのだが、圭は待ちきれない、と克にこぼす。「大丈夫ですよ。模擬試験を受けた時は成績良かったですよ。これも僕のお陰でしょ?」 にんまりと笑う克を見て圭は苦笑いするしかない。
:+: notebook :+: | 2010.04.22 Thu 21:30
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