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愛の糸 #29 森弥露海(もりやろみ)の戸惑い

JUGEMテーマ:恋愛小説はじめから読まれる方はこちらから  「玲王、私ね暖かい家庭に憧れてたの。実はね私の母、あなたのおばあちゃんだけど、父と別れた後、誰か必ず男の人がいたの。その人を父と呼んだ事もあったのよ。でも正式な結婚はしていなかったの。だから、玲王のおとうさんと、両親のいる当たり前の家庭が作りたかった。」 「どうして、別れたの?」 「別れた理由は、夫婦の事だからあまり詳しくは言えない。ごめんなさい。玲王のおとうさんにも悪いしね。ただひとつだけ。」 「ひとつだけ?」 「私は玲王を引き取...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.07.11 Sat 00:47

第二章 3-15 プリプリ−1

「蒼衣。なにプリプリ怒ってんの」 週末。一色家週末恒例ディナーがなく森も出掛けるということで、久しぶりに陽が手料理をふるまってくれることになったものの、蒼衣はどうしようもない苛立ちを陽にぶつけていた。「プリプリなんて、怒ってないもん」 今日は中華にしようという陽の提案で、蒼衣は台所に立ってネギやら豆腐やらを切っていた。まるで、処刑するようにバッサバッサと・・・。「じゃあ、ブリンブリン?」 隣に立って麻婆豆腐用のひき肉を準備しながら、陽がからかう。「なにそれ、ヘンなの」 ぷん、と、口を尖らせると、...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.10 Fri 08:34

第二章 3-14 かなわない写真−2

JUGEMテーマ:恋愛小説 翌日は、いい天気だった。大学1・2年生のころは辺鄙な場所に位置しているこのキャンパスのいいところは、豊かな自然とゆとりある贅沢なスペースだ。 蒼衣は広い中庭を突っ切り、円形の簡易的なテーブルとプラスチックの椅子が並べられているフリースペースの一角に、悠美の姿を見つけた。 逆毛を立ててこってり盛られた悠美のヘアスタイルは、蒼衣の1.3倍のボリュームがあるので遠くからでもすぐ分かる。「悠美」 隣の椅子にカバンを置いて腰掛けると、悠美はマスカラ片手に手鏡を凝視したまま「おっつー」 ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.09 Thu 08:37

第二章 3-13 かなわない写真−1

JUGEMテーマ:恋愛小説 蒼衣は、嬉々としながら封筒を胸に抱え、自分の部屋へ飛び込んだ。「はい、これ」 杉浦が仕上げてくれたこの上なく美しく仕上がった家族写真を、今日家にいたパパ・ママ・そして蒼衣で感激しながらたっぷりと堪能したあと、蒼衣がひとりでソファに腰掛けたときにそれは渡された。「え?」「秘密の写真」 封筒には、『蒼衣様』と書いてある。ということは、これは私だけのものなのだろうか?「あけてみて」 杉浦も蒼衣の隣に座りながら、なにやらニコニコしている。封筒を開けると、数枚のモノクロ写真が入っ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.08 Wed 08:41

第二章 3-12 自制−2

JUGEMテーマ:恋愛小説 杉浦は、顔が凍結したように無言のままの陽をじっと見つめていたが、ふっと笑って視線を外した。「そんな顔、しないでください。」「え」 オレは、いま、どんな顔してたんだ・・・?真っ白になっていた陽の思考は、ゆっくりと現実に戻り、テーブルの上に置かれた食べかけのパスタやサラダ、まだ半分ほどグラスに残っているビールの色彩がゆっくりと目に入ってくる。「陽さん。我慢は、良くないですよ。」 急におどけたような口調になって、杉浦が隣に腰掛けた。「・・・辛くなったら、手伝いますから。」 骨ば...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.07 Tue 08:28

第九話

2学期の始業式。 始業式に美沙と昴の姿はなかった。 昴はいつものように屋上にでも行っているのだろうと思った。 始業式も終え、体育館から教室に戻る。 戻ると、一人席に座る美沙の姿があった。 「葉月。おはよう」 「美沙、今まで保健室にいたの?大丈夫?」 「うん。保健の先生も始業式が終わるから教室に戻った方が良いって」 何事もなかったように次々に教室に入る生徒たち。 静かだった教室はすぐにざわつき始めた。 「それより、昴くんは?」 「あー多分、屋上にいると思う。かったるいからって さぼっ...

君に綴るもの・・・ | 2009.07.06 Mon 19:14

第二章 3-11 自制−1

JUGEMテーマ:恋愛小説 森は、片方の眉毛を上げて陽に目配せしたものの、表情を変えることなく電話口で2,3言葉を交わし、ぱちんと携帯を閉じた。「女の子は、本当にわからないね。」 苦笑している。「来るって?」「ああ。ただ、持ってきてないんだよな・・・。ある?」「オレも、ない」「杉浦君は?」 事の成り行きが分からないままボケッとしていた杉浦に向かって、森が訊いた。「持ってる?」 二人の視線は、自分に注がれている。「え、あの、何を・・・」 主語がまったく分からない。「ゴム。」 表情を変えずに、森が言った。ごむ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.06 Mon 07:02

愛の糸 #28 森弥露海(もりやろみ)の戸惑い

JUGEMテーマ:恋愛小説 はじめから読まれる方はここから マンションの部屋のドアを、拓真はゆっくりと、出来るだけ音の出ないように開けた。露海と拓真の約束は、うちに帰っても、佳苗や玲王に気づかれないように、静かに音も声も立てずに、拓真が良いと言うまで黙って拓真に付いてゆく事だった。露海は約束を守ると指切りした。指切りした限りは、破ったら針千本飲まされる。露海は忠実にそれを守り、口を自分の手でふさぎながら、うちに入っていった。   「ごめんなさい。ごめんなさい・・。」 佳苗の謝る声、泣いてい...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.07.04 Sat 22:33

「スターの恋人」の引用本「高慢と偏見」を読む!

■「スターの恋人」の引用本「高慢と偏見」を読む! 韓国ドラマ「スターの恋人」の5話、6話で話題になるジェーンオースティンの小説「高慢と偏見」。 今まで「高慢と偏見」はタイトル位しか知らなかったので、この「スタ恋」の中休み期間を利用して思い切って読んでみた。 普段小説は読まないし、読む速度も遅いので「高慢と偏見」の上下巻の厚さには読む前から参る。※若きヴェルテルの悩みの4〜5倍の厚みがある。 2〜3日掛けて「高慢と偏見」上下巻を読んだ感想は、5話でイマリが「高慢と偏見何が面白いの、つまんな...

韓国ドラマ「スターの恋人」で韓国語を学ぶ! | 2009.07.04 Sat 17:42

第二章 3-10 撮影−2

JUGEMテーマ:恋愛小説コンコン。「誰?」 慌てて陽がローブを羽織る。「オレ。入っていい?」 森だ。ドアを開けると、するりと入ってきた森は、珍しくスーツを着込んでいた。「すみれさんが、着ろってうるさくてさ」 ネクタイは締めず胸ポケットに突っ込んだまま、森が苦笑する。「あとで、みんなで一緒に写真撮るんだって。陽、おまえも。」「オレも?」「家族写真だから。もう、終わりそうなの?」 森は、カチャッとレンズを替えている杉浦に声を掛ける。「はい、あと少しで。みなさん、何時ごろ来る感じですか?」「うーん、あ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.04 Sat 09:26

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