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第二章 3-12 自制−2

JUGEMテーマ:恋愛小説 杉浦は、顔が凍結したように無言のままの陽をじっと見つめていたが、ふっと笑って視線を外した。「そんな顔、しないでください。」「え」 オレは、いま、どんな顔してたんだ・・・?真っ白になっていた陽の思考は、ゆっくりと現実に戻り、テーブルの上に置かれた食べかけのパスタやサラダ、まだ半分ほどグラスに残っているビールの色彩がゆっくりと目に入ってくる。「陽さん。我慢は、良くないですよ。」 急におどけたような口調になって、杉浦が隣に腰掛けた。「・・・辛くなったら、手伝いますから。」 骨ば...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.07 Tue 08:28

第九話

2学期の始業式。 始業式に美沙と昴の姿はなかった。 昴はいつものように屋上にでも行っているのだろうと思った。 始業式も終え、体育館から教室に戻る。 戻ると、一人席に座る美沙の姿があった。 「葉月。おはよう」 「美沙、今まで保健室にいたの?大丈夫?」 「うん。保健の先生も始業式が終わるから教室に戻った方が良いって」 何事もなかったように次々に教室に入る生徒たち。 静かだった教室はすぐにざわつき始めた。 「それより、昴くんは?」 「あー多分、屋上にいると思う。かったるいからって さぼっ...

君に綴るもの・・・ | 2009.07.06 Mon 19:14

第二章 3-11 自制−1

JUGEMテーマ:恋愛小説 森は、片方の眉毛を上げて陽に目配せしたものの、表情を変えることなく電話口で2,3言葉を交わし、ぱちんと携帯を閉じた。「女の子は、本当にわからないね。」 苦笑している。「来るって?」「ああ。ただ、持ってきてないんだよな・・・。ある?」「オレも、ない」「杉浦君は?」 事の成り行きが分からないままボケッとしていた杉浦に向かって、森が訊いた。「持ってる?」 二人の視線は、自分に注がれている。「え、あの、何を・・・」 主語がまったく分からない。「ゴム。」 表情を変えずに、森が言った。ごむ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.06 Mon 07:02

愛の糸 #28 森弥露海(もりやろみ)の戸惑い

JUGEMテーマ:恋愛小説 はじめから読まれる方はここから マンションの部屋のドアを、拓真はゆっくりと、出来るだけ音の出ないように開けた。露海と拓真の約束は、うちに帰っても、佳苗や玲王に気づかれないように、静かに音も声も立てずに、拓真が良いと言うまで黙って拓真に付いてゆく事だった。露海は約束を守ると指切りした。指切りした限りは、破ったら針千本飲まされる。露海は忠実にそれを守り、口を自分の手でふさぎながら、うちに入っていった。   「ごめんなさい。ごめんなさい・・。」 佳苗の謝る声、泣いてい...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.07.04 Sat 22:33

「スターの恋人」の引用本「高慢と偏見」を読む!

■「スターの恋人」の引用本「高慢と偏見」を読む! 韓国ドラマ「スターの恋人」の5話、6話で話題になるジェーンオースティンの小説「高慢と偏見」。 今まで「高慢と偏見」はタイトル位しか知らなかったので、この「スタ恋」の中休み期間を利用して思い切って読んでみた。 普段小説は読まないし、読む速度も遅いので「高慢と偏見」の上下巻の厚さには読む前から参る。※若きヴェルテルの悩みの4〜5倍の厚みがある。 2〜3日掛けて「高慢と偏見」上下巻を読んだ感想は、5話でイマリが「高慢と偏見何が面白いの、つまんな...

韓国ドラマ「スターの恋人」で韓国語を学ぶ! | 2009.07.04 Sat 17:42

第二章 3-10 撮影−2

JUGEMテーマ:恋愛小説コンコン。「誰?」 慌てて陽がローブを羽織る。「オレ。入っていい?」 森だ。ドアを開けると、するりと入ってきた森は、珍しくスーツを着込んでいた。「すみれさんが、着ろってうるさくてさ」 ネクタイは締めず胸ポケットに突っ込んだまま、森が苦笑する。「あとで、みんなで一緒に写真撮るんだって。陽、おまえも。」「オレも?」「家族写真だから。もう、終わりそうなの?」 森は、カチャッとレンズを替えている杉浦に声を掛ける。「はい、あと少しで。みなさん、何時ごろ来る感じですか?」「うーん、あ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.04 Sat 09:26

第八話

亮の、隣街の高校の転入が決まった。 あの日以来、昴は私を避けているようだった。 私は、夏休みのほとんどを亮と過ごした。 美沙からは毎日のように電話が来ていたが、会う気にはなれなかった。 どうせ、また三人になる。 私の中で、そうなる事を意識的に避けていた。 夏休み最後の日。 亮は昴の家から、隣街へと越して行った。 少しだけ時間よりも早く着いた朝の駅は静かで、明け方に霧がかかったせいか、 ホームのベンチは薄っすらと濡れていた。 「昴くんによろしく」亮は最後にそう私に告げると、始発の電車に乗...

君に綴るもの・・・ | 2009.07.03 Fri 18:50

第二章 3-9 撮影−1

JUGEMテーマ:恋愛小説 杉浦は、体が硬直したまま、動けなかった。「陽さん・・・。いつから・・・?」 いつから、自分が同性愛者だと気づいたのだろう?すると「二回目?一色の家で会ったとき。そうかなって思った。」 やはり、陽の予感は的中していた。自分を見つめる杉浦の目が恋愛対象のそれと同じだ、と気づいたのは、会ってすぐのことだった。「じゃあ、もしかして一色も?」 朱里も、すでに自分がそうだと知っているのだろうか。「いや?朱里は、気づいてないと思うけど。」 陽は、自分で気づいたものの、他言はしないでくれ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.03 Fri 08:38

第二章 3-8 波及−7

JUGEMテーマ:恋愛小説 せっかく、陽と気持ちを確認でき、ラブラブな予感がしたのに・・・! 蒼衣は、先日朱里から言われた『頑張ってね』という一言が、まさかこういう風に頑張ることになるとは思ってもいなかった。  ただでさえ、会社員である陽は仕事納めだ忘年会だと忙しい年末なのに、森のスパーリング相手と撮影に向けてのトレーニングという新たな予定が加わることで、また更に会えない日々が訪れていた。なんと、陽の家へ行っても居候している森に会うほうが多いくらいだ。 陽には一応年末年始の休みがあるが、年内は森のセ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.02 Thu 08:31

第二章 3-7 波及−6

JUGEMテーマ:恋愛小説 杉浦が陽を撮影する日は、年明け、成人の日と決まった。 朱里、蒼衣ふたりの成人式でもあるこの日。朱里の状況を慮って、地元の式には出ず、写真撮影だけをすることになったのだ。「陽ちゃんのついでに、私たちも撮ってもらえばいーじゃん!」 大発見をしたかのようにそう言ったのは、朱里だった。「陽ちゃん、会社休みだし、美人双子姉妹も撮れるし!一石二鳥♪ ね、杉浦?」「おい、朱里。杉浦くん、同い年だろ?人の成人式のコトも考えろよ」 呆れたように陽が言った。「あ、そっか」「いえ、い...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.07.01 Wed 08:26

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