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第二章 2-12 不安5

JUGEMテーマ:恋愛小説(もう自分から陽に会いに行くのはやめよう。) 蒼衣は、また連絡するなんて言いながら、すでに音沙汰なく一週間を経過した日曜日の夜、人気のない離れからの帰り道に月を見上げながらぼんやりとそう思った。 期待しながら会えないときの、この胸の苦しさにもう耐え切れなさそうだと思ったし、陽のほうが寂しがって連絡をくれるかもしれない、という一縷の望みもあの同僚の女子の『妹分なんだって』の一言で吹き飛んだ。『また連絡する』なんて言いながら、何も連絡しないなんて社交辞令も、大嫌いだ。 思い返...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.13 Sat 10:26

第二章 2-11 不安4

JUGEMテーマ:恋愛小説「はっさーん。今日、コーヒーいるぅ?」 朝、5時半。仕事をし始めてからの陽は、早起きだ。はっさんも年の功でだんだんと朝早く起きるようになったため、お互い朝の挨拶を塀越しに交わす。「頂戴な」 毎朝陽はコーヒーを淹れるので、必ずはっさんに一声かけてくれるのだ。「陽、そういえば昨日、蒼衣ちゃんに会った?」「うん、会ったよ。どして?」「夕べうちに寄ってもらったんだけど、ピアスあけて可愛くなってたから知ってるかと思って」 保温ポットに淹れたコーヒーを受け取りながら、昨日気になったこ...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.12 Fri 08:35

第二章 2-10 不安3

JUGEMテーマ:恋愛小説「陽の・・・バカーッ!」 ひどいひどいヒドイ。『彼女』だって、紹介してもくれないんだ・・・。(今日の私、そんなにイケてないのかな・・・。)可愛い格好をしてないと、彼女だ、って紹介しづらい。とクラスの男子が言っていた気がする。おだんごヘアが、失敗だったのだろうか?(それとも、そもそも紹介する気もないとか?) 『いもうとぶん』なんて言うなんて・・・。「うー・・・。」 かつーん、と、落ちている小石を思いっきり蹴り上げる。「あら、蒼衣ちゃん。久しぶり」 後ろから声を掛けられて振り向くと、そこに...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.11 Thu 08:36

第二章 2-9 不安2

JUGEMテーマ:恋愛小説 夏が過ぎ、木の葉も落ち、涼しいというより寒いと形容するのがふさわしい季節になるにつれ、陽と蒼衣の間柄にもクールな風が吹きはじめていた。 陽はますます仕事熱心になり、平日はほぼ家にいない。たまの休日も、普段できない家事や勉強、習い事、はっさんなどのご近所さんへの顔出し、一色家でのディナー、買い物などで予定はめいっぱい埋まっており、とても二人きりで会いたいと言える状況ではなかった。 いや、言えばよいのかもしれない。ただ一言、『二人きりでゆっくり過ごしたい』とか、『デートをし...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.10 Wed 08:36

第二章 2-8 不安1

JUGEMテーマ:恋愛小説「車、ねえ。」紅茶のカップを手で包むように持ちながら森が言う。猫舌なので、すぐには飲めない。 『嫌われてるかも』の一件以来、誤解の解けた森と蒼衣は、蒼衣の要望どおり、恋愛相談もつつがなくできる間柄に戻っていた。「そんなに、彼氏の送り迎えって重要なの?」蒼衣の大学では、彼氏というものは学校帰りや飲み会の後などに彼女を迎えに来るのが常識らしい。「いまどき、そんなヤツばっかじゃないだろ?」エコと叫ばれている時代に、なんつう話だ。「みんながみんなそうじゃないけど・・・“社会人の彼”...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.09 Tue 08:40

愛の糸 #24  森弥拓真(もりや たくま)のためらい

JUGEMテーマ:恋愛小説はじめから読まれる方はここから 森弥拓真はそわそわと落ち着かない様子で、リビングを行ったり来たりしていた。 拓真はつい今しがたまでベランダから下を見ていた。下では妻の佳苗が白い車を迎えていた。そして、その車から初老の男と少年が降りてきて挨拶をし、一言二言言葉を交わしたようだった。まもなく初老の男は車で一人帰って行き、佳苗は少年を促すように、マンションの玄関口に向かった。 少年は佳苗と前夫・嵯峨叔且(さが としかつ)の息子・玲王(れお)だった。   拓真は、ずっと考えて...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.06.08 Mon 16:52

第二章 2-7 嫉妬2

JUGEMテーマ:恋愛小説 しかし、陽にとっては、今夜のウイスキーほど苦い酒は無かった。一色家からの帰り道も、抱き合う森と蒼衣の映像が、頭から離れない。 二人は兄妹なんだから、そんなのたいしたことではないと頭では分かっていながらも、蒼衣が他の誰かと抱き合っていると感じただけで吐き気を覚えた。 森と蒼衣は、顔が似ていないから余計にそう思うのかもしれない。「蒼衣。大丈夫・・・?」 部屋をノックしそのまま戸をあけると、蒼衣はベッドの上で体育座りのような格好をし窓側へ顔を向けていた。「陽・・・。ちょっと、顔ヘン...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.08 Mon 08:37

第二章 2-6 嫉妬1

JUGEMテーマ:恋愛小説「今度は、おまえかよ」 パーティーの後、まだざわつきの面影が残るリビングのソファに腰掛けながら、森が苦笑する。 泣いていた蒼衣を腕に抱きながら、立ち尽くす陽に『下で待ってて』と手で合図したあと妹を落ち着かせ、階下に降りると、陽が憮然とした表情でウイスキーをがぶ飲みしているところだった。しかも、ロックで。「何が。蒼衣、どうしたの?」 ぶっすぅ〜。音にすれば、そんな感じの表情をしたまま、陽がさらにグラスをあけた。「おまえ、何か食いながら飲めよ。胃に悪い」「メシは会社で食ってき...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.06 Sat 08:30

第二章 2-5 嫌い?

JUGEMテーマ:恋愛小説「蒼衣?」 『陽なら、来てないよ』と言った瞬間、蒼衣の顔が激しく歪み、そのまま目の前でバタンとふすまを閉じられてしまった。「蒼衣〜」 ふすま越しに名前を呼ぶが、返事はない。(ったく・・・)そんなに、陽に会えないのが悲しいか? 未だ、蒼衣の口から陽のことについて一言も報告を受けていないのに、いちいち探るように陽のことについて訊かれるのは不愉快だ。だが、悲しそうな妹をそのまま放っておくのは、もっと不本意だった。「蒼衣。入るよ」 蒼衣は、ベッドに突っ伏して、枕に顔をうずめていた。...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.05 Fri 08:34

*桜*

JUGEMテーマ:恋愛小説  「もう、こんな季節なんだね」 ひらひらと舞い落ちる花びらを 手のひらにのせた彼女がふわりと笑う。 花びら1枚に負けてしまったオレの左手は確実に嫉妬していた。 樹齢数百年っていう ソメイヨシノってヤツに。 数歩前を歩いていた彼女がふと立ち止まる。 小首を傾げ不思議そうに。「どうしたの? もしかしてサクラ・・スキ・・・じゃない?」 ・・・ねぇ、気づいてる?・・・・・・それって、ある意味反則なんだけど?・・・そう心の中で問いかけつつ。「スキ・・・だよ?」 平然を装い、とりあえず...

*milk tea* | 2009.06.04 Thu 12:36

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