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第二章 2-7 嫉妬2

JUGEMテーマ:恋愛小説 しかし、陽にとっては、今夜のウイスキーほど苦い酒は無かった。一色家からの帰り道も、抱き合う森と蒼衣の映像が、頭から離れない。 二人は兄妹なんだから、そんなのたいしたことではないと頭では分かっていながらも、蒼衣が他の誰かと抱き合っていると感じただけで吐き気を覚えた。 森と蒼衣は、顔が似ていないから余計にそう思うのかもしれない。「蒼衣。大丈夫・・・?」 部屋をノックしそのまま戸をあけると、蒼衣はベッドの上で体育座りのような格好をし窓側へ顔を向けていた。「陽・・・。ちょっと、顔ヘン...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.08 Mon 08:37

第二章 2-6 嫉妬1

JUGEMテーマ:恋愛小説「今度は、おまえかよ」 パーティーの後、まだざわつきの面影が残るリビングのソファに腰掛けながら、森が苦笑する。 泣いていた蒼衣を腕に抱きながら、立ち尽くす陽に『下で待ってて』と手で合図したあと妹を落ち着かせ、階下に降りると、陽が憮然とした表情でウイスキーをがぶ飲みしているところだった。しかも、ロックで。「何が。蒼衣、どうしたの?」 ぶっすぅ〜。音にすれば、そんな感じの表情をしたまま、陽がさらにグラスをあけた。「おまえ、何か食いながら飲めよ。胃に悪い」「メシは会社で食ってき...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.06 Sat 08:30

第二章 2-5 嫌い?

JUGEMテーマ:恋愛小説「蒼衣?」 『陽なら、来てないよ』と言った瞬間、蒼衣の顔が激しく歪み、そのまま目の前でバタンとふすまを閉じられてしまった。「蒼衣〜」 ふすま越しに名前を呼ぶが、返事はない。(ったく・・・)そんなに、陽に会えないのが悲しいか? 未だ、蒼衣の口から陽のことについて一言も報告を受けていないのに、いちいち探るように陽のことについて訊かれるのは不愉快だ。だが、悲しそうな妹をそのまま放っておくのは、もっと不本意だった。「蒼衣。入るよ」 蒼衣は、ベッドに突っ伏して、枕に顔をうずめていた。...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.05 Fri 08:34

*桜*

JUGEMテーマ:恋愛小説  「もう、こんな季節なんだね」 ひらひらと舞い落ちる花びらを 手のひらにのせた彼女がふわりと笑う。 花びら1枚に負けてしまったオレの左手は確実に嫉妬していた。 樹齢数百年っていう ソメイヨシノってヤツに。 数歩前を歩いていた彼女がふと立ち止まる。 小首を傾げ不思議そうに。「どうしたの? もしかしてサクラ・・スキ・・・じゃない?」 ・・・ねぇ、気づいてる?・・・・・・それって、ある意味反則なんだけど?・・・そう心の中で問いかけつつ。「スキ・・・だよ?」 平然を装い、とりあえず...

*milk tea* | 2009.06.04 Thu 12:36

第二章 2-4 打ち上げ

JUGEMテーマ:恋愛小説  その週末、一色家では内輪の祝勝会が開かれた。ジムの人やその家族、森の友人などが集って飲んで食べて騒ぐ、いわば飲み会のホームパーティー版だ。 壁際に並べられた細長いテーブルの上には大皿が並び、人を招くことに慣れているすみれのご馳走が並んでいる。普段家族が使用している8人掛けのテーブルの片側には、各自が使う皿やグラスやナプキンが積まれ、反対側にはワインやお茶やジュースなど、好みの飲み物が自由に飲めるように揃えられていた。 ほぼ料理も作り終えホスト役に徹しているすみれを...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.04 Thu 09:25

第二章 2-3 控え室

JUGEMテーマ:恋愛小説「さ、蒼衣、いこいこ」 興奮冷めやらぬ会場で、すみれが荷物を持つと通路へせかす。「え、どこへ?」「決まってんじゃない、控え室よ」「あ、そっか」 人波にもまれながら廊下を歩いていくと、報道陣やらすでに挨拶に訪れている関係者や有名人で、控え室の周りは大混雑していた。「混んでるね」 いろんな人が抱き合って喜んでいたり、どこかでフラッシュがたかれていたり。みな、興奮と喜びに満ち溢れている。 部屋の奥へ行くと、肩にタオルをかけたまま訪れる人たちと握手を交わす森の姿が見えた。パンチを...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.03 Wed 08:26

第二章 2-2 大会

JUGEMテーマ:恋愛小説 森の出場する大会は、ドーム型の巨大な会場で行われ、驚くことに会場は満員だった。リングサイドには、蒼衣でも顔を知っている有名人がずらりと並んで観戦しているのが見える。「すごい、人気あるんだね」 横にいる母・すみれにつぶやく。派手な音楽、派手な演出。自分が普段いる世界・・・囲碁の世界とは、対極のように思える。「あったりまえよーう」 格闘技って人気あるんだね、と言ったつもりが、『森が』人気あるんだね、と発言を勘違いしたすみれの鼻息がさらに荒くなる。「今日優勝したら、また人生変わ...

小説 カラスト -Color stories- | 2009.06.02 Tue 08:33

愛の糸 #23 嵯峨誉次郎(さがもとじろう)の後悔

JUGEMテーマ:恋愛小説最初から読まれる方はここから  「玲王、本当に会うのか?」 「うん。」 玲王は車の窓から外を見ていて、誉次郎の方を向こうとしない。  この期に及んで何を言っているんだ。 誉次郎は自分の未練たらしい態度に腹が立った。未練?いや、また自分は桐代の精神状態を案じているのだ。その火の粉から、また逃げようとしているのだ。つまり、自分。誉次郎が案じているのは自分ではないのか。   離婚調停は、最終的にどちらが玲王の親権者になるかが焦点となった。もちろん双方譲らず、佳苗が母...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.06.01 Mon 20:53

第二章 2-1 眼鏡

JUGEMテーマ:恋愛小説 21型の小さなTVから、ニュースキャスターが、『今日からお盆の長期連休、新幹線の乗車率は一部120%のところもあるようです・・・』と毎年恒例のニュースを、今年も飽きもせず読み上げる声が聞こえる。 蒼衣は、北側に面している窓にしては強すぎる日差しを避けるようにカーテンを引くと、ベッドにごろんと横になった。「・・・あえない・・・」 陽が『オレ、ほんと頑張るから。』と言ったとき、自分は何故頷いてしまったのだろう。陽は、がらりと変わってしまった。生活も、態度も、そして見た目も・・・。 一色家で、...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.01 Mon 08:24

第二章 1-25 対等に・・・

JUGEMテーマ:恋愛小説リビングへのドアを開けると、醤油の匂いと共に光三とすみれの笑顔が出迎えた。「お疲れさま〜あ、陽ちゃん♪」「まあまあ、座んなさい。」 二人は、いつも暖かく迎えてくれる。(この家は、光三とすみれによって、守られている。)陽は、蒼衣がこの一色家にいる限り『大丈夫だ』と、理由無き確信のようなものを持った。この家にいる限り、どんな邪悪なものでも蒼衣には手が出せない、と。「どう?飲まないかい?」 光三は、陽の答えを待たずにコップに瓶ビールを注いだ。「・・・いただきます」 笑顔はソフトなの...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.05.31 Sun 08:10

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