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*桜*

JUGEMテーマ:恋愛小説  「もう、こんな季節なんだね」 ひらひらと舞い落ちる花びらを 手のひらにのせた彼女がふわりと笑う。 花びら1枚に負けてしまったオレの左手は確実に嫉妬していた。 樹齢数百年っていう ソメイヨシノってヤツに。 数歩前を歩いていた彼女がふと立ち止まる。 小首を傾げ不思議そうに。「どうしたの? もしかしてサクラ・・スキ・・・じゃない?」 ・・・ねぇ、気づいてる?・・・・・・それって、ある意味反則なんだけど?・・・そう心の中で問いかけつつ。「スキ・・・だよ?」 平然を装い、とりあえず...

*milk tea* | 2009.06.04 Thu 12:36

第二章 2-4 打ち上げ

JUGEMテーマ:恋愛小説  その週末、一色家では内輪の祝勝会が開かれた。ジムの人やその家族、森の友人などが集って飲んで食べて騒ぐ、いわば飲み会のホームパーティー版だ。 壁際に並べられた細長いテーブルの上には大皿が並び、人を招くことに慣れているすみれのご馳走が並んでいる。普段家族が使用している8人掛けのテーブルの片側には、各自が使う皿やグラスやナプキンが積まれ、反対側にはワインやお茶やジュースなど、好みの飲み物が自由に飲めるように揃えられていた。 ほぼ料理も作り終えホスト役に徹しているすみれを...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.04 Thu 09:25

第二章 2-3 控え室

JUGEMテーマ:恋愛小説「さ、蒼衣、いこいこ」 興奮冷めやらぬ会場で、すみれが荷物を持つと通路へせかす。「え、どこへ?」「決まってんじゃない、控え室よ」「あ、そっか」 人波にもまれながら廊下を歩いていくと、報道陣やらすでに挨拶に訪れている関係者や有名人で、控え室の周りは大混雑していた。「混んでるね」 いろんな人が抱き合って喜んでいたり、どこかでフラッシュがたかれていたり。みな、興奮と喜びに満ち溢れている。 部屋の奥へ行くと、肩にタオルをかけたまま訪れる人たちと握手を交わす森の姿が見えた。パンチを...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.03 Wed 08:26

第二章 2-2 大会

JUGEMテーマ:恋愛小説 森の出場する大会は、ドーム型の巨大な会場で行われ、驚くことに会場は満員だった。リングサイドには、蒼衣でも顔を知っている有名人がずらりと並んで観戦しているのが見える。「すごい、人気あるんだね」 横にいる母・すみれにつぶやく。派手な音楽、派手な演出。自分が普段いる世界・・・囲碁の世界とは、対極のように思える。「あったりまえよーう」 格闘技って人気あるんだね、と言ったつもりが、『森が』人気あるんだね、と発言を勘違いしたすみれの鼻息がさらに荒くなる。「今日優勝したら、また人生変わ...

小説 カラスト -Color stories- | 2009.06.02 Tue 08:33

愛の糸 #23 嵯峨誉次郎(さがもとじろう)の後悔

JUGEMテーマ:恋愛小説最初から読まれる方はここから  「玲王、本当に会うのか?」 「うん。」 玲王は車の窓から外を見ていて、誉次郎の方を向こうとしない。  この期に及んで何を言っているんだ。 誉次郎は自分の未練たらしい態度に腹が立った。未練?いや、また自分は桐代の精神状態を案じているのだ。その火の粉から、また逃げようとしているのだ。つまり、自分。誉次郎が案じているのは自分ではないのか。   離婚調停は、最終的にどちらが玲王の親権者になるかが焦点となった。もちろん双方譲らず、佳苗が母...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.06.01 Mon 20:53

第二章 2-1 眼鏡

JUGEMテーマ:恋愛小説 21型の小さなTVから、ニュースキャスターが、『今日からお盆の長期連休、新幹線の乗車率は一部120%のところもあるようです・・・』と毎年恒例のニュースを、今年も飽きもせず読み上げる声が聞こえる。 蒼衣は、北側に面している窓にしては強すぎる日差しを避けるようにカーテンを引くと、ベッドにごろんと横になった。「・・・あえない・・・」 陽が『オレ、ほんと頑張るから。』と言ったとき、自分は何故頷いてしまったのだろう。陽は、がらりと変わってしまった。生活も、態度も、そして見た目も・・・。 一色家で、...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.01 Mon 08:24

第二章 1-25 対等に・・・

JUGEMテーマ:恋愛小説リビングへのドアを開けると、醤油の匂いと共に光三とすみれの笑顔が出迎えた。「お疲れさま〜あ、陽ちゃん♪」「まあまあ、座んなさい。」 二人は、いつも暖かく迎えてくれる。(この家は、光三とすみれによって、守られている。)陽は、蒼衣がこの一色家にいる限り『大丈夫だ』と、理由無き確信のようなものを持った。この家にいる限り、どんな邪悪なものでも蒼衣には手が出せない、と。「どう?飲まないかい?」 光三は、陽の答えを待たずにコップに瓶ビールを注いだ。「・・・いただきます」 笑顔はソフトなの...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.05.31 Sun 08:10

第二章 1-23 一言もなく−2

JUGEMテーマ:恋愛小説 長友は、陽のその一言で、弁解をやめて一気に静かになり、そして黙ってぐっと頭を下げた。 数ある会社のなかから、陽がなぜ今の会社への就職を決めたのか。それは、留学していたとき、ボストンで行われた、企業と学生が面談し内定をもらえる貴重な機会であるキャリアフォーラムに行った際、この長友鉄平と出会い、その仕事に対する熱意とビジョンに共感したからなのだ。そして、第一候補であった会社を蹴って、自分のこの選択にかけた。 しかし、入社してしばらく経っても、社内で一向に長友に会う機会が...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.05.29 Fri 06:52

第二章 1-22 一言もなく−1

JUGEMテーマ:恋愛小説 「蒼衣〜、こんにゃく、湯がいて」「もがく!?」「ゆ・が・く!ああ〜、そうよね、それも知らなかったわよね。そっちの鍋の湯にこんにゃくいれて、さっとかき混ぜたらザルにあげて」「こう!?」ザルを大きく頭の上にあげる。「あ〜お〜い〜。わざとやってるの・・・?」強張ったすみれの怖い声が、蒼衣に突き刺さる。「わざとじゃない!だって、上げてって言うから・・・」「・・・そうよね、ママが教えなかったのが悪いのよね〜え」すみれは観念したように、ザルの上に鍋の中身をあけて、水気を切ってみせた。「...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.05.28 Thu 08:38

第二章 1-21 報告

JUGEMテーマ:恋愛小説 長いこと、穏やかな表情の奥底でくすぶる不満をかかえていた一色森の笑顔も、最近は心なしか軽やかだ。 というのも、大切な妹・蒼衣から、陽との関係に関して何の報告もないことをずっと不満に思っていたのが、親友である陽からそれらしき告白をされたからだった。「蒼衣ちゃんに、ウチの合鍵渡したから。」ジョギングついでに陽の家に寄った朝、どうやら照れくさいのか、ぶすっとした顔で陽が言った。「おまえには言っておこうと思って」「あ、ああ」不意打ちだった。シャワーを借りようと、上半身裸で靴下を...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.05.27 Wed 08:41

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