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くまちゃん

JUGEMテーマ:恋愛小説● くまちゃん / 角田光代● 新潮社● 1575円● 評価 ☆☆☆4回ふられても私はまた、恋をした。なんてことだろう。あんなにつらい思いをしたというのに。きっとここにあなたがいる、そんな恋愛小説。 (感想)主人公は最後に必ずふられ、そのふった張本人が次のお話の主人公になる。そして次のお話でも主人公はふられ、ふった人が次の主人公で・・・と続く物語。最初の3つくらいを読むとこのシステムに気づく。つまり、どんなにいい感じでつきあってるカップルでも最後には別れるってわかってしまう。結末が想...

隣り近所のココロ・読書編 | 2009.06.22 Mon 11:30

第二章 2-19 ごめん。1

JUGEMテーマ:恋愛小説 もう、疑いようもないほど、オレの想いで蒼衣を満たしたい。 ほわんと幸せに浸っている蒼衣の頬を両手で挟むと、碧色の瞳で射抜くように見つめその想いを唇に託す。 蒼衣も、熱を帯びたように何度もなんどもキスをしてくる陽がたまらなく嬉しいように、自らも腕を陽の首に絡め、降り続くキスに応えた。 くちびるがヒリヒリするほどのキスを交し、お互いの視線が合わさると思わず笑みがこぼれる。額をこつんとあわせ、鼻を左右からこすりつけノーズキスをすると「とまんないな」と、陽は愛しそうに蒼衣を見、...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.22 Mon 08:36

第二章 2-18 不安11

JUGEMテーマ:恋愛小説「・・・・・・え」 蒼衣の発した言葉は、陽の予想外だったようだ。つきあってるよね、って・・・?「え、どういうこと」 からかうようだった陽の表情が一変し、険しい眼差しになる。「つまり、その、私は陽のことが好きで・・・陽も、わたしのこと・・・そう思ってくれてるのかなって」 沈黙。 かなり、長い・・・。  蒼衣は怖くなり、ますます陽の顔が見られなくなった。(もしかしたら、答えに詰まってる・・・!?)沈黙に耐え切れなくなり「あ、あの、でも、陽がもし私のことそう思ってなくても、私は好きだから・・・」と、無...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.20 Sat 10:03

第二章 2-17 不安10

JUGEMテーマ:恋愛小説「え?」 どうしたの、って・・・?「うちに来て、急に帰っちゃった日」「ああ・・・。もう、なんでもないの。平気」 “もう” 平気、ということは、そのときは平気じゃなかった、というコトだ。「何が平気になったの」 蒼衣の手を自分の頬に押し付けたまま・・・唇がかすかに触れるように訊く。「もう、いいってば。気にしないで」 触れた唇から逃れるように、蒼衣は手をひっこめた。「せっかく、こうして一緒にいられるのに。台無しにしたくない」「台無しって、何が」 陽は、引き下がらない。「だから、つまんない...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.19 Fri 08:35

第二章 2-16 不安9

JUGEMテーマ:恋愛小説(え・・・) 蒼衣の腹にまわされた手に力がこもり、顔が乗せられたらしい肩が重くなり、かすかな汗のにおいが、鼻をくすぐる。 そう。 蒼衣は、つい先ほどまで感嘆して見とれていた美しい胸に、たった今自分がくるまれていることに気づいた。「あおい」 耳元で、陽のテノールが聞こえる。耳たぶに息がかかるほど、陽の顔が近い。「よ、陽・・・」 顔が、かーっと赤くなるのが分かる。息のかかる耳たぶまで・・・・・・・・・(は、恥ずかしいっ) だがそう思えば思うほど、さらに真っ赤になっていく自分。赤面した顔を見...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.18 Thu 08:36

第二章 2-15 不安8

JUGEMテーマ:恋愛小説 はあっと息を吐くと、ふわふわと白い蒸気が浮かんでは、消える。蒼衣は、冬が嫌いではない。むしろ、寒くて暗いからと嫌われがちなそれが、好きだった。すっかり街は冬の様相で、年々早まるクリスマスの飾り付けがビルや家々をピカピカと賑わしている。 駅からの帰り道、いつも通る近道への曲がり角の八百屋にも、月桂樹で作られたクリスマスリースが飾ってあった。蒼衣は、その店先に並んだ碧色の野菜籠を見て、ふと立ち止まる。陽の瞳の色と同じ、碧色。(この間、黙って帰ってきてから、陽と話してない。)...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.17 Wed 08:40

第七話

午後2時を過ぎた頃、天気雨が降った。 転々と模様が出来た砂浜は、すぐに琥珀色から鳶色に変わる。 日差しの中に降る雨は、光を集めた小さなガラス球のように見え、 やがて、固体に見えた雨は、みるみる髪や服を濡らしていった。 私が暫く降り出した雨を見上げていると、亮が私の手を取り、一気に走り出した。 慌ててミュールを持ち、亮に引っ張られるようにして、砂浜から続く階段を上る。 途中で亮にミュールを履くように言われ、私は亮の手を握ったままミュールを履いた。 家に着く頃にはもう、雨はすっかり上がってい...

君に綴るもの・・・ | 2009.06.16 Tue 21:40

第二章 2-14 不安7

JUGEMテーマ:恋愛小説「蒼衣・・・?」(あれ、オレ、声かけられたのに気づかなかった、とか?) 何も言わずに蒼衣が帰るなんてことは、いままで一度もなかった。別れ際は、必ずキスをしてから帰るのに? 時計に目をやると、12時10分すぎ。外はもうとっくに暗い。追いかけて送っていこうかと思ったが、愛に反して働きづめの体はもう動かないと言いたげに、鉛のように重い。 おまけに、今日は部長との飲みだったので気も使い、余計に疲れていた。玄関までかろうじて来たものの、明日の5時起きが頭を掠める。 しかし、蒼衣も心配...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.16 Tue 08:31

愛の糸 #25 森弥拓真(もりやたくま)の ためらい

JUGEMテーマ:恋愛小説はじめから読まれる方は ここから  拓真が八歳の夏休みだった。家族は東京近郊に旅行に行き、一泊した。小さな温泉宿のような所だった気がする。お風呂から上がってから、今なら古いと言われそうだが、家族で卓球をしたようだった。 昔はよく温泉宿に卓球台があった。今でも、あの宿にはあるのだろうか。       「こんにちは、玲王(れお)くん。森弥拓真です。  君のおかあさんの、夫です。」 「こ・・こんにちは。嵯峨・・・玲王です。」 玲王は、はにかんでいるのか、下を...

シリウスの泉  「愛の糸」 | 2009.06.15 Mon 12:13

第二章 2-13 不安6

JUGEMテーマ:恋愛小説「悪い。鍵、あけてもらってもいい?」 家の玄関の前で、陽がどっさりと抱えたクリーニング済みのスーツを掲げながら言う。両手がふさがっているのでヨロシク、ということらしい。蒼衣は、誕生日に両親からもらったパディントンのバッグから、鍵束を出して開けた。 そういえば、この合鍵も“来てほしい”から預かったのではなく、祖父ちゃんに線香を上げてくれると嬉しい、という甘さのかけらもない理由だったような気がするな、と思いながら。 ガラガラガラ、と音を立てて扉を開けると、ひんやりとした空気がす...

小説 カラスト 〜Color stories〜 | 2009.06.15 Mon 08:38

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