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投射された信頼の網

クリストファー・プリースト『ドリーム・マシン』 村上春樹さんがそうであるように、プリーストもまたドッペルゲンガーに取り憑かれた作家だ。この傑作がディックの亜流として紹介されたのは残念だ。むしろ主流文学として読まれるべきだと思う。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が好きな人には、お奨めだ。 プリーストは異常者を描くのが本当に巧い。実際に被害に遭った経験があるのでは、とさえ思う。例えばこんなくだり。「(…)それは、自分にも、偏執狂のたわごとのように聞こえた。エリオットは努めて優しく接し...

雑文 - インディーズ小説 人格OverDrive - ヘリベマルヲ | 2013.08.15 Thu 14:57

「銀河英雄伝説 風雲篇」 田中 芳樹

「銀河英雄伝説 風雲篇」、旧銀河帝国王朝の貴族と幼い皇帝による旧勢力が自由惑星同盟へ亡命したことに単を発した、ラインハルトとヤン・ウェンリーの直接対決、「バーミリオン会戦」がいよいよ上がろうとしています。 敵対する銀河帝国と自由惑星同盟との戦闘には宇宙空間上、2つの回廊(宇宙空間を安全に航行できるスペースのようなもの)を確保する必要があり、ひとつは数々の激戦の舞台となり、今はヤン・ウェンリーが駐在するイゼルローン回廊、そしてもう一つが中立的立場にある商業国家フェザーン自治領の回廊。 ライ...

日々の書付 | 2013.08.14 Wed 21:42

「銀河英雄伝説 策謀篇」 田中 芳樹

「銀河英雄伝説 策謀篇」では、今後につながる大きな戦い、その序章が始まります。 フェザーン自治領に亡命していた銀河帝国の軍人・貴族たちがひそかに帝国に戻り、テロを計画していることが発覚する。どうやら、(名ばかりではあるものの)幼い皇帝誘拐する計画がたてられ、彼らはそのまま自由惑星同盟への亡命を計画しているらしい。 しかし、ラインハルトはわざと誘拐を成功させ、それを口実に自由惑星同盟へ攻撃を宣言します。 ここでもラインハルトの聡明な秘書官・ヒルダは、ラインハルトの姉アンネローゼを説得し、...

日々の書付 | 2013.08.13 Tue 23:24

ユートピアはいずこに

伊与原新『ルカの方舟』(講談社,2013/06) 南極で採取された火星隕石から見つかった生命の痕跡。その隕石の鑑定を実施した帝都工科大学笹見教授が実験室で亡くなった。そして、笹見研究室のFFPを指摘するメールが届いたことから、"天才"百地教授が調査にとりかかることに。百地は、科学雑誌編集部の小日向、教え子で今は科警研研究員の佐相とともに、笹見研究室にからむFFP(Fabrication:捏造、Falsification:改ざん、Plagiarism:盗用)の実態を解明し、笹見教授の死の真相に迫る。やがて明らかになる復讐譚の陰には哀しき兄弟弟子...

更・ぅれしぃがらし日記 | 2013.08.10 Sat 18:47

「銀河英雄伝説 雌伏篇」 田中 芳樹

「銀河英雄伝説 雌伏篇」では、銀河帝国、自由惑星同盟ともに、前回の内乱のダメージを引きづりつつも、また新たな戦いが始まります。 しかし、同盟側ではヤン・ウェンリーの功績を妬む政治家たちによって、ヤンは査問会に呼ばれイゼルローン要塞を離れることになり、その隙に帝国軍がイゼルローンに迫ります。それも前回占領した要塞ガイエスブルグを移動させイゼルローンと対決するという、強大な要塞対要塞の壮大なバトルが勃発します。 「自由」惑星同盟は、その名とは裏腹に腐敗しきった政治家たちによる保身工作と長引く...

日々の書付 | 2013.08.01 Thu 23:57

「銀河英雄伝説 野望編」 田中 芳樹

銀河帝国と自由惑星同盟との宇宙戦争と、様々な人間ドラマが繰り広げられる「銀河英雄伝説 野望編」。2冊めにして早くも山場がやってきます。 銀河帝国側の主人公ラインハルトと、自由惑星同盟のヤン・ウェンリー、それぞれの大切な人が亡くなってしまいます。帝国ではラインハルトが皇帝にかわり権力を握るため、対向する貴族たちとの戦う間、自由惑星同盟をけん制するべく、自由惑星同盟の反体制勢力にクーデターを計画させるます。 反体制勢力の主要人物には、ヤンの優秀な副官・フレデリカの父もも参加していていて、苦戦をし...

日々の書付 | 2013.07.21 Sun 01:24

現実と現実

宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』(早川書房,2013/05) 収録作品 ヨハネスブルグの天使たち ロワーサイドの幽霊たち ジャララバードの兵士たち ハドラマウトの道化たち 北東京の子供たち 昨年、デビュー作となる『盤上の夜』でゲームSFの極北に達した宮内悠介の第2作は、南アフリカ、アメリカ、アフガニスタン、イエメン、日本をつないで、その近未来の現実をまざまざと切り取るエッジのきいた連作短篇。それぞれの人間はそう異なるものでもないのに、彼我の間はおそろしく遠いという認識のもとに描かれる、どこの土...

更・ぅれしぃがらし日記 | 2013.07.18 Thu 06:02

「銀河英雄伝説 黎明篇」 田中 芳樹

これまで舞台化・アニメ化もされてきた田中芳樹のSF超大作「銀河英雄伝説、黎明篇」を読了。 壮大な宇宙時代の歴史と戦闘を描いた一大叙事詩のような大作。その導入部分であり、帝国側の主人公ラインハルトと同盟側の名将ヤン・ウェンリーが戦場で会合し、戦闘を重ねていく様子と、銀河帝国と自由惑星同盟、フェザーン自治領という銀河における主要勢力と、その歴史が語られていきます。 SFというよりも、軍記物を読んでいるような感覚です。戦いには勢力ごとに掲げる正義はあるものの、それらはもはや支配者たちの都合による出兵...

日々の書付 | 2013.07.11 Thu 00:52

SF若干

日本SF作家クラブ編『SF JACK』(角川書店,2013/02) 収録作品 冲方丁「神星伝」 吉川良太郎「黒猫ラ・モールの歴史観と意見」 上田早夕里「楽園(パラディスス)」 今野敏「チャンナン」 山田正紀「別の世界は可能かもしれない。」 小林泰三「草食の楽園」 瀬名秀明「不死の市」 山本弘「リアリストたち」 新井素子「あの懐かしい蝉の声は」 堀晃「宇宙縫合」 宮部みゆき「さよならの儀式」 夢枕獏「陰態の家」 個々の作品はそれぞれにおもしろいのに、一冊のアンソロジーとしての志向が感じられずスースーする。「...

更・ぅれしぃがらし日記 | 2013.06.10 Mon 06:12

日本SF作家クラブ、最初の10年

日本SF作家クラブ編『日本SF短編50 I』(早川書房・文庫,2013/03) クラブが発足した一九六三年から二〇一二年までの五〇年を、クラブに所属する五〇人の作家、五〇の短編で振り返る。それぞれの年の特徴をとらえた作品を選び、しかも作家を重複させない[巻頭言/瀬名秀明,p.8] という日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー全5巻、その最初の10年をとりあげた第1巻。北原尚彦、日下三蔵、星敬、山岸真それに〈SFマガジン〉清水直樹編集長から成る編集員チームはどんな作品をあげてきたかお手並みを拝見しようではないか。 収...

更・ぅれしぃがらし日記 | 2013.04.16 Tue 05:45

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