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7.白き刃、硝子の剣〜天使の恋(1)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「あーもう! ……ほら見ろ、やっぱりだ。ローゼが自分の部屋でおとなしくしててくれればもっとあの爺を追求できたのに。でもいいやもう……今更仕方ないからねえ……」  セルティははああと大きくため息をつき、幾分力なく肩を落として、今まで開いていた扉をカチャリと閉めた。城中にわけの分からない空気の流れを感じる。呼吸するたび、異質な「何か」の気配が体に入り込んでくるのだ。それがセルティの鋭敏な五感に膜をかけ、今や彼女の感覚は完全に鈍く翳っていた。  三人同時に別々の部屋に入...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.09.10 Mon 10:13

6.PRAY(4)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「ア〜ルス! なにやってんの? どこ行くの?」「リエか」  突然慕わしげに飛びついてきた小さな影に、アルスは表情を和らげた。 「お前こそ、今日は食堂の仕込みの担当だったんじゃねえのか? 何してんだよ?」「えへへ。実は、待ち伏せてた」  高くゆいあげた緋色の髪を閃かせ、短いスカートをひるがえした少女がおどけた調子で舌を出す。 「お休みをもらったの! 今日はセントクランネルの授業は……って、ああ。アルスはもう卒業資格持ってるのよね。秋には国立の学生かぁ。 大学で学士号...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.09.06 Thu 12:13

6.PRAY(3)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「痛いわ、エヴィン。力が強いのね」「あ……すまない。少し考え事を」  エヴィンは唇を解いて微笑むと、ローゼの手を優しく握り直した。ローゼはそれに薔薇の頬をして笑み返した。その笑みにまるで心が砕かれるようだった。答えは明日、国軍がやってくるまでに出さねばならない。  ……後でティルラド達と相談しよう。エヴィンはそこで思考を切り、あとは黙して歩んだ。窓から差し込む神秘の月明かりに、ローゼの白い髪が銀色に輝いている。まるで紡ぎ上げた銀糸のようだ……。  シェーダ。 ふと浮か...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.09.05 Wed 14:06

6.PRAY(2)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「ルーヴェンスとか言ったね、爺」「ほっほ、名を覚えてらして下すったのですか。有り難いことです」  セルティの疑心暗鬼に満ちた声音に動じることもなく、ルーヴェンスは歩き続けながらおどけた笑い声を発した。しかしセルティは容赦なく続けた。 「男達を統率しているのはお前だと聞いたよ。お前は首都で男達にあんな事をさせて、いったい何を企んでいるんだい?」  ローゼは全くなんのことかわかっていないようで、 「お姉様は何を話してらっしゃるのかしら?」  と、エヴィンに聞いてく...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.09.04 Tue 08:52

5.The sleeping beauty〜ローゼ〜(4)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「街を……見たことは?」「……エヴィン、あのね。わたしの目は近くしか見えないの。それも、よく輝くものしか。だからこのお部屋はキラキラしたものが集められているでしょう? ……私、黒い王子様やお姉様の姿、ぼやけてしまってよくわからないわ。本当にごめんなさい。駄目な目ね。……でもね、目が弱い分、他の感覚が優れているらしいの。だからみんなの違いは何故だかよくわかるのよ」「男の人達とずいぶん仲良しだもんねぇ、ローゼちゃん。みんなの名前知ってるし」「ええ、黒い王子様。だって皆さんと...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.30 Thu 10:02

5.The sleeping beauty〜ローゼ〜(2)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説  ※※※  滝の飛沫が煌めくのは、月明かりにか、太陽のまぶしさにか。風が鳴くのは、想い乗せてか、心砕いてか。遠くから来た旅人が綴る世界の美しさは、太古より変わらぬ大自然の雄大さか、街を築いて生き続ける人々の猛々しさか。  旋律は全てを織りなした。力強く響く音に、死んだ都にもかつてはまばゆく満ちていた命というぬくもりが駆け爆ぜ、鍵盤の上では白い指が踊る。白鍵を叩けば音は真昼の陽射しのように明るく、黒鍵を叩けば音はより切なげに歌った。そうして高らかに紡がれたピアノの...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.28 Tue 08:42

5.The sleeping beauty〜ローゼ〜(1)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説  賊達が無抵抗のエヴィン達を無言で導いたその先にあったは、崩れかけた王城だった。その城の内部に三人は招かれた。武器を奪われて腕を後ろ手に縛られはしたが、三人はおとなしく従った。賊達の気配から危険は感じなかったし、いざとなればセルティやティルラドには「力」がある。エヴィンも足技を使った体術を得意としているから、腕など使えずともどうとでも出来る自信はあった。 しかしなによりも、目の前に現れた砂礫の城と、そこにいるのであろう「ローゼ」への強い興味が勝っていた。囚われの...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.27 Mon 10:57

6.PRAY(1)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説 繋いだ手はとてもか細かった。力をこめたらすぐに折れてしまいそうな手だった。その小さな手がしっかりと自分の手を握りしめている。そのいたいけな暖かさに、心の隅がほんのりと染まるのを感ずる。時折笑みを浮かべながら、エヴィンの顔を仰ぎ見ているローゼ。その微笑みは切なげな至福に輝いていた。  エヴィンは素直にこの少女を愛おしいと思える。しかしそれは愛らしいものに対して誰もが抱く感情と同じものであり、恋心とはまた別の感情だ。 せめてこの子の前では立派な騎士であろう。エヴィ...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.27 Mon 08:56

4.砂礫都市シルヴァロスタの攻防(4)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説  それは怒りの涙だったのだろう。しかし確かな慈愛に満ちたものだった。エヴィンはまだ見ぬ母への憧憬をその涙に重ねていたことに気付いて、そんな自分に苦笑いをもらしていた。  やっと合流した三人は比較的閑散とした洞穴住居のひとつに潜み、ティルラドの手当てをしている。幸い弾丸はどの臓器も傷つけずに肋骨と脇腹の間を貫通していた。セルティは黙りこくったままに、腰に下げたポシェットから包帯や消毒液を取り出してティルラドの手当をし出した。  止血が終わると、 「……今、ある程度ま...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.23 Thu 09:43

4.砂礫都市シルヴァロスタの攻防(3)

JUGEMテーマ:ファンタジー小説  そこそこの距離を移動するのだから全力で走っているわけでもない。しかしエヴィンは駿足を誇る。戦闘を生業とするがゆえに瞬発力も常人のそれではない上、持久力についても日々軍部にて相当な訓練を積んでいるのだから、少女じみた見かけに違えて彼の体力は相当なものだ。だがセルティは少女ながら彼の走りに息一つ乱さず着いてくる。エヴィンはそんな彼女を振り返って軽く口笛を吹くと、少しスピードを上げようかと逡巡(しゅんじゅん)した。だが前方に向き直ったエヴィンは、目に入ってきた光景に...

三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.22 Wed 13:04

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