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JUGEMテーマ:ファンタジー小説 それは怒りの涙だったのだろう。しかし確かな慈愛に満ちたものだった。エヴィンはまだ見ぬ母への憧憬をその涙に重ねていたことに気付いて、そんな自分に苦笑いをもらしていた。 やっと合流した三人は比較的閑散とした洞穴住居のひとつに潜み、ティルラドの手当てをしている。幸い弾丸はどの臓器も傷つけずに肋骨と脇腹の間を貫通していた。セルティは黙りこくったままに、腰に下げたポシェットから包帯や消毒液を取り出してティルラドの手当をし出した。 止血が終わると、 「……今、ある程度ま...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.23 Thu 09:43
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 そこそこの距離を移動するのだから全力で走っているわけでもない。しかしエヴィンは駿足を誇る。戦闘を生業とするがゆえに瞬発力も常人のそれではない上、持久力についても日々軍部にて相当な訓練を積んでいるのだから、少女じみた見かけに違えて彼の体力は相当なものだ。だがセルティは少女ながら彼の走りに息一つ乱さず着いてくる。エヴィンはそんな彼女を振り返って軽く口笛を吹くと、少しスピードを上げようかと逡巡(しゅんじゅん)した。だが前方に向き直ったエヴィンは、目に入ってきた光景に...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.22 Wed 13:04
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「……やっと来たか」 ティルラドは舌先で乾いた唇を湿し、サーベルの柄に手をかけた。 おそらくこの砂礫都市シルヴァロスタに巣くう夜盗組織の賊達であろう。自分のいるこの建物を目指して多くの気配が近づいてきていることには先ほどから気づいていた。しかしティルラドがあえて外に出なかったのは、広い場所で四方八方から囲まれるより狭い建物の入り口にて進入してくる者を一人ずつ斬り倒した方が安全、かつ確実だと考えたからだ。 ティルラドはサーベルの柄に手をかけたまま、木戸の横に張...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.21 Tue 09:27
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 遠くで風が鳴いている。耳慣れない音色だ。この季節に宮殿(パレス)の窓辺でそよぐはいつも花の香りをまとった瑞々しい風で、彼はいつも親しげに葉擦れの柔らかい音を連れてきたものだ。 しかし、この風は堅い。 そは鋭利な刃のように吹きすさび、岩をも削る猛き風だった。乾燥した国土西南の気候はこの季節砂嵐を呼ぶ。遙か南、アルクミール大海の暖流が渦と昇ってしこり、それは南部の森林都市には恵みの雨雲をもたらすが、西部の枯れた土地に雨水は一滴も届かない。限界まで乾ききった空気...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.20 Mon 09:24
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「エヴィンの女たらし。黒の貴公子を差し置いて、いっつも美味しいところ持っていくんだから! ……なんであの子ってあんなにモテるんだろ」「さあねえ。あたしにはわかんないけど」「でもさあ、ローゼはまだ十四歳でしょ。早くない?」「……遅いくらいだろ。あたしはもっと小さい頃からソアラが好きだったしね」 ローゼは蒼穹の騎士の英雄譚をよく知っていた。タイムズの連載記事として広く出版されていることから、彼の名前はとても有名だ。裁きの天使の再臨と呼ばれる救国の英雄、美しい少年騎士。...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.17 Fri 14:15
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 ハイハイ。今回の穴埋め企画のお題はこちらからお借りしました♪おなじみ。[01] まずはお名前を教えてください。景澤 晶(かげさわあきら)でっす♪ [02] 創作サイトを開こうと思ったきっかけは何ですか?かなり長〜いコト創作してなかったんですが、色んなコトに一段落ついて「やってみるか」と某SNSサイトに登録したのがきっかけかな。ぶっちゃけますとそこでエッチな話を書きすぎて追放され(馬鹿とお呼び下さい)自分のやりたいことやるには個人サイトじゃねえと無理だな、と思い。いやエ...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.10 Fri 17:14
時は近世。近代国家ウィルシードの隠蔽された影の歴史。天から舞い降りし星の民と、殺戮の赤い悪魔の伝説。犠牲者達が闇に叫ぶ月明かりの王国で、蒼きセレスティアルを瞳に秘めし少年の背負いし運命(さだめ)〜闇夜に閉ざされし月明かりの王国ウィルシードを陽射しの袂(たもと)へ導く、空の騎士のセレスティアル・ストーリー。 望んだ未来は、憧憬の空で変わらず煌めく。 誰かのために迸る想いが、空の彼方の未来(あした)を拓く……!作品リスト《本編》※R15■第1話「蒼穹の騎士〜The celestial knight」■第2話「闇の...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.09 Thu 12:04
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 ほいほいコンニチハ。今日明日はまたしてもやってまいりました!な穴埋め企画♪ お題は相変わらずこちらから♪ そいでわお楽しみ下さい〜。[--] こんにちは。本日はよろしくお願いしま…、あれ?(回答者を探す)リエ「はいはーい♪ ここにいるわよっ!……ほら、どこ行くのよエヴィン!」エヴィン「……ううう、こんなお題嫌だ……(暗)」リエ「ちなみに今回は本編バージョンの二人でお送りするわ!よろしくね?」エヴィン「……話中で一番俺の背の低い時期を選びやがってこんにゃろう……(泣)」 [01] 失礼...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.09 Thu 07:19
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 ※※※ その後シュウは、再会した妹のリメイと、大陸東岸の国に帰った。残念どころか、コルド・リメイは五年後がたいそう楽しみな美人ちゃんだった。傭兵稼業をやってるって割にはおとなしい性格で、顔赤くして兄ちゃんの影に隠れちゃうとか、控えめな女の子ってのはほんと、可愛らしくていいもんだな〜。ま、シェーダみたいな活発な女の子も好きだけどね(「も」、とか言うと殴られそうだが。) さすがにリメイは軍部に勤めるには早すぎるので、まずは士官学校できちんと...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.08 Wed 10:14
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 帰宅後。一同はアルスお手製の夜食のシチューをすすりつつ、目覚めたシュウを囲んでいた。よほど腹が減っていたらしいシュウはシチューに夢中、わき目も振らずにがっついている。ま、そうでなくともアルスの料理はやたらと美味いしな。俺もその横でシチューのおかわりをほくほくと堪能する。ああ、うま〜。 あの後、俺んちの客間のベッドで目を覚ましたシュウは、俺やアルスの顔を見て一瞬おびえた様子を見せたが、しかしすぐさまティンクの顔を見たいと言った。兄の子が無事でいること、確認した...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2012.08.07 Tue 12:11
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