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JUGEMテーマ:気になる本 ☆ー2 「……道徳?」 呟いて、思った。 そういえば―――どうして僕は食べるなんてコトを考えたんだろう。血を飲む時も嫌悪なんて感じなかった。ぐずぐずに爛れた傷口に唇をあてても気色悪いとも思えなかったなんて、どうしてしまったんだ、僕は。 人を食べる。それは殺人よりやってはいけない事じゃないのか? どんなに凶悪な殺人犯でも、人を食べるなんて事はしない。そんな恐ろしい事、やろうとさえ思わない。 ―――――だって。 人食いは、明らかに異常な行為なんだから。 「でも……そ...
たいむかぷせる。 | 2011.02.13 Sun 09:20
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ー1 とにかく、誰かを殴ってみよう。 相手は誰でもかまわない。できればあまり罪悪感が湧かないヤツがいいだろう。 場所は人目につかないところ。内申に響くことは避けたいし、僕は目立つことには慣れていないから。 一週間ばかり考え抜いたすえ、相手と場所を決定した。 相手は同じ学校の下級生。以前、一度だけ廊下でこっちを睨んできた金髪の男子生徒だ。 場所は彼が出入りしているゲームセンターの近くにした。アイツは週に一度の割合で見知らぬ客をつかまえて暴力を振るう。ゲ...
たいむかぷせる。 | 2011.02.13 Sun 09:19
JUGEMテーマ:気になる本 ☆35 … ―――魔術師は言った。 私でも、言葉だけは殺せないと。 けれど、それでもいつかは死んでしまうだろう。 物事はすべて消え、無くなり、死ぬものだ。 そうでなければ過去と未来の境界が曖昧になってしまう。ものごとは戻らないものだからこそ、無くさないようにと大事にするんだ。 ……そもそも、どうして無くなるぐらいでそれを永遠でないと言うんだろう。 消えてしまっても、忘れさってしまっても、物の存在は変わらない。変わるのはそれを受けとめる私達自身の心の...
たいむかぷせる。 | 2011.02.13 Sun 09:18
JUGEMテーマ:気になる本 ☆34 その日の授業を終えて、玄霧皐月は準備室に戻ってきた。 天気は何日かぶりの曇りで、廊下はモノクロームの写真のように静まり返っていた。 準備室の扉を開けて、中の様子をゆっくりと眺めた。 物であふれている彼の部屋は、けれど生活感というものが排除されていた。 灰色の陽射しに照らされた、時が止まった準備室。 その風景が玄霧皐月の記録してある情報と一致するか確認してから、彼は中に足を踏み入れた。 ぱたん、とドアを閉めた。 「―――――」 同時に、彼は鋭い...
たいむかぷせる。 | 2011.02.13 Sun 09:16
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 33 一月十一日、月曜日。 学校が始まって、わたしはいつも通りの学生生活に戻っていた。 授業を終えて教室を出る。寮に戻って支度を調えてから、シスターに外出届を提出する。 しぶい顔をされながらオーケーをもらって寮を出ると、そこで藤乃とぶつかった。 「出かけるの、鮮花?」 「ちょっとね。もしかすると門限に間に合わないかもしれないから、瀬尾によろしく言っといて」 綺麗な長い黒髪をした同級生にルームメイトへの伝言を頼んでわたしは急ぐ。 早足で森を抜けて...
たいむかぷせる。 | 2011.02.13 Sun 09:15
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 32 子供のころの夢を見た。 まだわたしが黒桐の家で暮らしていた頃の、ずっと昔の思い出を。 月の明るい夜のことだ。その日の昼に、隣の家に住んでいたおじいちゃんが他界した。 その人はただのお隣さんで、若い頃に家族を亡くされて独りきりの、淋しげな老人だった。 痴呆が進んで昨日のこともよく覚えていない人だったけれど、とても優しくて、温かいおじいちゃんだった。 わたしは遠見に、兄は親身になってその老人と日々を過ごしていた。 老人は自らの孤独を埋めるように...
たいむかぷせる。 | 2011.02.13 Sun 09:13
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 31 小降りの雨が黒い制服を濡らす。 冬の雨は、雪のように冷たかった。 吐く息は白くて、うなじのあたりがジンと震える。 そんな凍えた空気の中を駆け抜けて、黒桐鮮花は旧校舎に辿り着いた。 昇降口から中にはいる。 校舎は、もう何十年と放置された廃屋のように寂しげだった。生徒である子供達の声も、学校としての息遣いも死に絶えている。 今ここにあるのはキイキイと小煩い虫の声と、鼻をつく乾いた匂いだけ。 彼女はくん、と匂いをかいで、それがガソリンの香りだと...
たいむかぷせる。 | 2011.02.09 Wed 21:27
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 30 平坦な、とてもつまらなそうな顔をして、彼は言った。 わたしはほんの一瞬だけ、この人物の意志に触れられた。けど、そんなものは、本当に瑣末な事だ。 ここには誰もいない。 ただ人の忘却を採集する本があるだけ。 ……むかし、玄霧皐月は自分の記憶を取り戻す為に魔術を習って、人々の記憶を巡っていった。 けれどそれは無意味だった。結局、記憶を取り戻したところでそれを自分のものと認識できなければ意味がない。彼の行為は徒労だった。 そうして目的は変わってしまっ...
たいむかぷせる。 | 2011.02.09 Wed 21:27
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 29 唐突に訊かれて、わたしは喉をつまらせる。わたし達が物忘れをする理由。それは、きっと――― 「……脳の用量は限られています。わたし達は、必要な情報と不必要な情報を分けなくてはいけません。長く時間を重ねれば重ねるほど、その忘却は大きくなるでしょう。わたし達は日々を混乱する事なく暮らす為に、不必要な記憶を削除していかなければいけないから」 「ええ。それが大半の過程でしょう。ですが、それは忘却ではなく整理というのです。時間によって消え去った記憶と、個人の意志によっ...
たいむかぷせる。 | 2011.02.09 Wed 21:25
JUGEMテーマ:気になる本 ☆ 28 幹也からの電話を切って、わたしは高等部の校舎へ急いだ。 時刻は午後一時を過ぎたばかり。 空模様は今にも泣きだしそうな鉛色で、頭上は厚い雲に覆われている。 「……この分じゃ、今日は雨になるのかな」 冬の冷たい空気を肺にしみ込ませながら、わたしは昏い森を抜けて校舎に辿り着いた。 誰もいない廊下を歩いて、一階の端になる英語教論の準備室に行く。 ノックもせずに扉を開けると、玄霧皐月という教師はすべて解っていたように、椅子に座ってわたしを待ち受けてい...
たいむかぷせる。 | 2011.02.09 Wed 21:25
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