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山口誓子『句集 和服』(角川書店)より

  昭和30年 「天狼」主宰 第9句集   蟷螂の眼の中までも枯れ盡す   寒さの中息つめゐしが處刑延ぶ   風邪の妻起きて廚に匙落す   音たてて落つ白銀(しろがね)の木の葉髪   電球の鳴りて更けゆく地蟲の夜   金龜虫月光にとぶ身を鎧ひ   油蟲油の翅でとびまはる   曝書にほふ性に目覚めし頃のにほひ   家の蟻吾が愛するに客は殺す   全長のさだまりて蛇すすむなり   金魚かたまれ...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.26 Thu 18:44

伊藤隆『句集 天恵』(ふらんす堂)より

  2020年 「いには俳句会」同人 第1句集   巌頭に飛沫たかだか初明り   初日の出老いも若きも声を上げ   息災は天の恵みよ明の春   老いてなほ大志を誌す初日記   草の芽やこの日本の底力   仕合せはこんなものかも蜆汁   竜天に登る気配や笙の笛   安曇野の水車ゆつたり山笑ふ   鶯のこゑ全山をときめかす   花冷やゴリラは樹下に只管打坐   変哲のなき晩年や山笑ふ   ...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.26 Thu 18:32

山口誓子『句集 凍港』(素人社書屋)より

  昭和7年 第1句集   氷海や船客すでに橇の客   學問のさびしさに堪へ炭をつぐ   流氷や宗谷の門波荒れやまず   熊ゆきぬ神居(かむゐ)のくにへ贄として   雪挿しに長路のスキー休めあり   肥汲みや凍糞倒す斧持たり   匙なめて童たのしも夏氷   閻王の前に晝寝の床几在り   七月の青嶺まぢかく熔鉱炉   三月堂 天邪鬼夜番の柝にめつぶれる   空蝉を妹が手にせり欲しと思ふ &nb...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.25 Wed 20:04

水原秋櫻子『句集 葛飾』(沙羅書店)より

  昭和11年 「馬酔木」主宰 第1句集   蟇ないて唐招提寺春いづこ   馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ   馬酔木より低き門なり浄瑠璃寺   鋤牛に水田ひかりて際(はて)しらず   鶯や前山いよゝ雨の中   天平のをとめぞ立てる雛かな   とくいでて春月高し湖の上   真菰刈童がねむる舟漕げり   夏帽に湖光はてなくひらけたり   青春のすぎにしこゝろ苺喰ふ   草市へ行きしが雨にあひに...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.23 Mon 18:51

沢木欣一『句集 地聲』(角川書店)より

  昭和48年 「風」主宰 第3句集   子が雪のきざはし降りて玻璃たたく   裸か工員陸橋越えて銭湯へ   豹死んで炎天匂ふ鉄の檻   麦秋の息かけ磨く管楽器   刈り伏せて光うしなふ麦畠   雑草としてたんぽぽを刈り尽す   薪能舞台四隅の今年竹   マラソンの列耳成へ花菜道   土間涼し臼底にある杵の痕   帆柱の白ぎつしりと春の海   菖蒲描く女水より描き始む   風呂敷で...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.19 Thu 19:33

水原秋櫻子『句集 霜林』(目黒書店)より

  昭和25年 「馬酔木」主宰 第10句集   苔ふかく幾世落ちつぐ落椿   廊つたふ汀まばゆき春の水   蟬涼し足らぬねむりをねむりつぐ   颱風に橋奪はれて早瀬あり   灯を待てばすでに闇なり秋の暮   冬菊のまとふはおのがひかりのみ   茶の花にいまありし日が山の端へ   せはしなき人やと言はれ屠蘇を受く   掃き入れて新茶のかをり箕にあふる   三日降れば世を隔つなり秋の雨   ...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.19 Thu 19:22

水原秋櫻子『句集 新樹』(交蘭社)より

  昭和8年 「馬酔木」主宰 第2句集   ひるすぎて薄氷魞をはなれけり   大島を波路の霞へだてけり   白樺を幽かに霧のゆく音か   時計塔日はなごやかに北吹けり   受験生春暁を来て扉に倚れる   窓あけて沈丁の香をいれてやる   渦潮に蝶まひいでておぼつかな   夏蝶に大路かゞやき風吹けり   よきめざめみんみん蟬の聲おこる   拳闘は煌々と蟬鳴きつゞく   拳闘は...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.15 Sun 21:34

嶋田麻紀『句集 冬すみれ』(麻俳句会)より

  昭和58年 「麻」主宰 第1句集   絵心の湧いては消ゆる青嵐   へびの瞳は玻璃の瞳ひとに諂はず   日昃ればただの芒に戻りけり   お茶の花ほかりと思い出づること   雨冷えやさよならを言ふために待つ   把手廻す背後すすきといわし雲   海展く万緑なだれゆくごとし   まぼろしの鬼打つ豆のやはらかし   寒三日月言葉ひとつに身を削り   ひと妻の頭上花栗千垂れて   箒持つ楽しき...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.14 Sat 17:04

北原白秋『句集 竹林清興』(靖文社)より

  昭和22 没後に集められた初句集   向日葵や脂ぎりたる鼻のさき   向日葵のゆさりともせぬ重たさよ   向日葵や大審院の庭のさき   紫蘭咲いていささかは岩もあはれなり   榧の木に榧の實のつくさびしさよ   たまさかに浪の音して夜の雪なり   竹林の冷かに子と坐つてる   色蔦や陽は篁を荘厳す   物の音の冴える夜だ子も目をあいて   筍掘り掘り菫見つけた   菩提樹の新芽だ引越すにき...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.10 Tue 22:07

飯田蛇笏『句集 白嶽』(起山房)より

  昭和18年 「雲母」主宰 第4句集   八重山をうづむる雪に機はじめ   まな妻のまなこあまえて春の風邪   つぶらかな眼に人をみる蜥蜴かな   機影ゆく秋闌のうろこ雲   帰還兵爐にウクレレをよこたへぬ   ふりやみていはほになじむたまあられ   春灯をみるにもあらず病者の眼   夏雲にたちはだかりて水泳着   しなしなと吾子の手くびや夏を病む   派手ゆかた来て重態のいたましさ   ...

《本の出張買取》奈良・全適堂 店主ブログ | 2026.03.08 Sun 22:24

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