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JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,7/21 そして、増さんはおっかあの事を決して他人には任せない。 おっかあのどんな親しい者が居て、たまにはあたしが在らってやろうと云っても、増さんはきっぱりと断り、おっかあの体の隅々まで入念に自分の手で洗ってやるのだ、と平次郎は云った。 私は高品さんの炉端でも、増さんの話を持ち出して見た。 高品さんの所ではあまり収穫は無く、  ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.12 Fri 21:58
JUGEMテーマ:日本文学 「季刊文科」にまた連載を始めた。最新の89号は、名作の舞台?石川啄木『雲は天才である』加計呂麻島――?島尾敏雄『出発は遂に訪れず』が載った。 「季刊文科」89号の特集「旅✕文学」の対談で、加計呂麻島が話題に上り、「加計呂麻島に行って、島尾さんの碑の前にある海がものすごくきれいなのが印象に残っています。そうかこういうところでこの人は生きたんだと。僕はミホさんに会うとかでなく、たまたま島を歩いていてるから行ったんですけど、一番浅いところ...
見る 読む 歩く | 2022.08.12 Fri 12:20
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,6/21 「背負っているのはおっかあでね」 と平次郎は云った。 「ああやって背負って行って、着物を脱がして、体をすっかり洗ってやって、綺麗に拭いて、それから着物を着せて、うちまで背負って帰(けえ)るだよ」 私が質問すると、平次郎は大きな眼をそろそろとすぼめ、不思議なことを訊く人間がいるものだ、とでも云いたげな顔つきで私を見た。 「なんでだね...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.11 Thu 16:50
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』全文紹介 vol,5/21 その次に同じような二人と路上で出会った時、女を背負っている彼の後姿を見て、彼の足が涜神的(とくしんてき)にまで蟹股であることと、「天鉄」で魚の頭や尻尾の天ぷらを注文する男であることに気が付いた。 こうして行くたびめかに、私は堀南にある「梅の湯」と言う銭湯をスケッチしていたとき、その女を背負った彼が、「梅の湯」の暖簾をあげ、女湯の方へ入って行くのを見て、ちょっと目をみはった。 ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.10 Wed 19:12
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』全文紹介 vol,4/21 右のように、林房雄は自分の独創性を誇っていたが、それより二十数年以前、既に増(ます)さんという先覚者のあったことを私は知っているのである。 私は吐きだしたが、増さんはうまそうに、頭だの骨だの尻尾だの、一つ一つ丹念に噛み味わいながら、私以上にゆっくりと時間をかけて、燗(かん)をした水割り焼酎をすするのであった。 その次には路上で会った。 堀東の所で私がスケッチを...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.09 Tue 16:50
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』全文紹介 vol,3/21 ここでちょっと記して置くが、数年前、ある出版記念会のあとで、林房雄がこの「くるま海老の頭だけ」の天ぷらを喰わせてくれたことが在った。 彼が自分で思い付き、銀座裏の某天ぷら屋に命じて作らせたのだそうで、それは豊富なカルシウムを含む極めて美味な食品であると、自分の着眼の独創的な点を大いに誇っていた。 これを世間では捨てているんだ、と林房雄は繰り返し強調した。 こう...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.08 Mon 21:31
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』全文紹介 vol,2/21 店は昔風で、土間にテーブルがニ脚ほどあり、鉤の手に畳を置いた座敷が在った。 もちろん土間に面したほうは障子も何もなく、客が在れば薄い座布団を敷くだけ。 膳は四角で脚の無い平膳であった。 増さんは年のころ五十くらいで、背丈が低く、ひどいがに股で、頬やあごの周りに、いつも太い銀色の不精髭を、ブラッシの様に伸ばしていた。 てっぺんの禿げた頭の周りも、短く...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.07 Sun 19:24
JUGEMテーマ:日本文学 「季刊文科」89号が出た。今回の特集は「旅×文学」。冒頭の対談は、旅好きで知られる小説家佐藤洋二郎と、日本、アジア各地を歩き『温泉文学論』も書いた川村湊が、自分たちの歩いた各地を、旅と文学を縦横自在に語っていて面白い。 小説家は作品の舞台を実地に調べ生かそうとするが、文芸評論家は書斎から動こうとしない。川村二郎などは例外だ。作家についても、島尾敏雄、坂口安吾、新田次郎、吉村昭などが話題に上って、面白かった。鉄幹、白秋、吉井勇たちの「五足の靴」...
見る 読む 歩く | 2022.08.07 Sun 14:32
JUGEMテーマ:日本文学 「青べか物語」ブログ紹介動画。 (ブログ【3分読むだけ文学通】にて、 短編2作品紹介中。) https://youtu.be/YcEH1-qHh8Q 『家鴨(あひる)』全文紹介 vol,1/21 私が増さんと初めて会ったのは、堀南にある天ぷら屋「天鉄」の店であった。私はわずかな稿料が入ると、よく天鉄に行って飯を食べた。 てんぷら一人前で酒を一本ゆっくりと飲み、そのあと、その日の特にいい...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.06 Sat 16:40
【テレビ・ドラマの舞台になった街並みを歩く】 【写真−1 ドラマの舞台になった居酒屋は右側の建物の並びに】 終点の波浮港バス停を降りると、目の前に二階建ての建物が細い道を挟んで並び、陽を浴びたバス停から見ると影が濃く感じ時間が止まったような印象を受け、その道を進んでバス停方面を振り返ったのが写真−1で、建物の建材などは新しく換えられているが全体の雰囲気は以前来た時と変わっていない。 以前来た時は風待ちする漁船の寄航も多い時代で、まだ酒を呑ます店が路地裏...
セブ島工房 | 2022.05.13 Fri 20:02
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