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JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,17/21 増さんはまた大蝶へ通いだした。 もう若旦那の代になっていて、若旦那と云っても年は四十がらみだったが、亡くなった大旦那から聞いていたのだろう、若旦那も鉄砲打ちが好きで、その季節になって猟に出かける時、増さんにお供を命じたが、増さんはそのたびに断り、どうしても一緒には行かなかった。 それについて増さんは一度だけ 「大旦那の時に大きなしくじりをやらかしたから」 ともらし...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.23 Tue 15:29
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,16/21 きみのは殺されはしなかった。 明くる朝そっと、平次郎の家の勝手口に来て、済まないがお米を少し貸してくれ、と云った。 眼の周りに青あざが出来てい、顔全体が腫(は)れ上がり、片方の足を痛そうに引き摺っていた。 あとでわかったのだが、きみのはその時左の足の骨を折っていたので、隣とはいえよく歩いてこられたものだと、医者が云ったそうである。 足の骨折で、きみのは工場へ勤めに...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.22 Mon 21:53
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,15/21 帰って来て、家へ入るといきなり始めたのであった。 留守の間に男を作った、ちゃんと聞いて来たと云うのが理由で、一度途中で焼酎を買いにやり、それを飲んでから又始めた。 「あんまりひでえんでよ、おら聞いていられなかった」 と平次郎は云った。 「もう夜の十時くれえだったが、おっかあやがきを伴(つ)れて外へ出ちまっただ、うちのおっかあは駐在...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.21 Sun 19:40
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,14/21 帰って来るのも全く突然であった。 まるで朝出かけた者が夕方に帰って来た、といった様子で、家へ入るなり、(きみのがいれば)「めし」とか「酒」とか云う。 君のが工場へ出ている時だと、山崎屋という酒屋で立ち飲みをしていて、きみのに、 「銭を持ってこい」 と使いを出すというぐあいであった。 夫婦には子供が無かった。 増さんが道楽の揚句...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.20 Sat 20:48
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,13/21 「おら隣にいただよ」 と平次郎は云った。 「今でも隣だが、その時分も隣にいたからよく知ってるだ、 幾たびか止めに行ったこともあった、何しろ殴ったり蹴ったりする音が筒抜けに聞こえるだからね」 だが平次郎は止めに行くことを止した。 止めに行くとかえって増さんは逆上し、俺に赤恥を書かせたと云って、もっとひどくきみのに暴力を振るうからで...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.19 Fri 22:30
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,12/21 そこで支配人は旦那にそのことを告げた。 すると旦那は、彼奴は俺の命の恩人だから好きな様にさせて置け、と云った。 命の恩人とはどういう訳なのか、旦那はその理由を云わなかったが、支配人は引き下がるより仕方がなかった。 そんなことのあった前後から、増さんの女房いじめが始まった。 結婚の話が出た時、どうして逃げたのか、というのが手を上げる...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.18 Thu 16:43
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,11/21 きみのはどこかの警察に捉(つか)まって保護され、増さんが行って引き取って来た。 二人の結婚生活はごく平凡に過ぎて行った。結婚してからもきみのは大蝶の工場へかよっていたし、増さんも何となく大蝶へ出入りをして、雑役のようなことをしたり、旦那が猟へ行くときは供をした。 平凡な結婚生活は三年ほど続いた。無論その間にも、増さんの行状は変わらなかった。酒を...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.17 Wed 21:25
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,10/21 増さんは二十三の年に結婚した。 相手は貝の缶詰工場で働いていた娘で、名はきみの、年は十八であった。 東北の生まれであるが、両親に死なれたので、浦粕(うらかす)にいる遠い親類が引き取ったのだと言う。 その親類は漁師をしていて、子供が八人もいたため、きみのも十二の年から働かなければならなかったし、また家族の人たちにもあまり厚遇されず、増さんとの結...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.15 Mon 21:34
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,9/21 増さんが葛飾まで通学するはずはないし、そのまま学校へ行かないことが視学関係に嗅ぎ出された場合でも、浦粕(うらかす)校の責任は問われないだろう、という深い思慮によるものであった。 増さんはそれっきり学校をやめたが、通学の船賃だけは貰った。そこの関係はよく分からないが、とにかく六年の卒業期まで、船賃だけはきちんと取り立てたものだ、と平次郎は自分の事のように証言...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.14 Sun 17:23
JUGEMテーマ:歴史小説 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,8/21 増さんは若い時から乱暴で、信じられないほど力が強かった。 十七歳の時、米俵を左右の手に一俵持ったままで、中堀から蒸気河岸まで、息もつかずに走り通したそうである。 性分は短気で飽きっぽく、酒を飲むと喧嘩せずにはいられないし、喧嘩をすればきまって幾人かに怪我をさせた。 小学校も三年きりしか行かなかったが、それは勉強が出来なかっただけ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.13 Sat 16:41
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