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日本に生まれた我々が、
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「青べか物語」『繁 (しげ ) あね』 vol,6/19山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,6/19   お繁の父は源太といい、釣り船の船頭であった。 源太は鱸(すずき)釣りの名人で、どんな漁師も鱸釣りでは彼にかなわなかった。   ある年の事、某県の知事が来て、源太の船で鱸釣りをした。   知事はもと某省の大臣であり、魚釣りと俳句が巧いので知られていたが、一度で源太が好きになり、機械船、(発動機を備えた釣り船)を買って与えた。   源太がいかに鱸釣りの名人であったかということを、適切に表す言葉が在っ...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.09.04 Sun 21:47

「青べか物語」『繁 (しげ ) あね』 vol,5/19山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,5/19   それは決して誇張ではなかった。 私もかなり前からお繁を知っていたし、道で会えばたいてい呼びかけたものである。   彼女はいつも垢だらけで、近くへ寄るとひどく臭かった。 それにもかかわらず、彼女の体の一部は信じられないほど美しかったのだ。   両の内股は少女期を抜けようとするふくらみをみせていた。 両股のなめらかな肌が合って、臀部へと続く小さな谷間は、極めて新鮮に色づいていたし、膝がしらから踵(くびす)...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.31 Wed 22:53

「青べか物語」『繁 (しげ ) あね』 vol,4/19山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,4/19     「鼠(えずみ)にかじられるぞ」 「つまんねえ」   お繁は肩をすくめ、それからそこへしゃがんだ。   すると垢じみた継ぎだらけの裾が割れて、 白い内股が臀の方まで露わに見え、私はうろたえて眼をそらした。 私は信じがたいほど美しいものを見たのだ。   繁あねは町じゅうでもっとも汚い少女だと言われていた。 親無しで家無し。   墓場に供えられる飯や団子を食う餓鬼、それがお繁で...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.30 Tue 19:42

「青べか物語」『繁 (しげ ) あね』 vol,3/19山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,3/19     「蒸気河岸(がし)の先生よ」 と云う声がした、   「釣れっかえ」 私は驚いて振り返った。   見渡す限り人影もなかったのに、突然そう呼びかけられたので、 振り換える拍子にタバコを落とし、それがあぐらをかいている膝の間に落ちたので、   取って棄てるまでに、腿と脛を慌てて叩いたりこすったりしなければならなかった。 そこにいるのは繁あねであった。   年は十二か三、多分十三...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.29 Mon 20:55

「青べか物語」『繁 (しげ ) あね』 vol,2/19山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,2/19     この土地では松が育たないそうで、それは「堀の三本松が一本だけにされた報い」だともいわれているが、確かに、芳爺さんの家に近い、堀端にある老松の外に松らしい松は一本も見当たらなかった。   そのひねこびた松並木を挟んで、枯れた芦の茂みがところどころに見える、それらはみな沼か湿地で、川獺(かわうそ)や鼬(いたち)が棲んでいると言われ、私も川獺は幾たびか見かけたし、それを捕獲して毛皮屋へ売ってもうけようとしたこ...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.27 Sat 20:10

「青べか物語」『繁 (しげ ) あね』 vol,1/19山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,1/19     私は青べかを二ついりへ漕ぎ入れ、細い水路を二百メートルほどいった、川柳の茂みのところに繋いで、釣竿をおろした   三月初めの曇った日で、風は無く、浅い水路の水は淀んだように澄んでおり、実際には流れているのだが、殆ど静止したままのように見えた。   私は竿を下ろしてから、青べかの中へゆっくり坐りなおし、タバコを出して火をつけた。 そこは百万坪のほぼ中央に当たっていた。   北の方に遠く、...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.26 Fri 22:11

「青べか物語」『 家鴨 (あひる ) 』最終回 vol,21/21山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   ◆◆最終回◆◆ vol,21/21     増さんは恥ずかしそうに眼をしばしばさせ、右手で、銀色の不精髭の伸びた頤を擦(さす)った。   「どうか殺さないでおくれって」 と増さんは少しまをおいて云った、   「おらを見た眼つきと、そう云うのを聞いた時、おらそれまでに自分のしてきたことを、 洗いざらい一遍に見せられたような気がしただ、   なんもかんも一遍によ、 まさか嘘かと思うかもしれねえが、おらそん...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.25 Thu 22:28

「青べか物語」『 家鴨 (あひる ) 』vol,20/21山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,20/21     「つまらねえ、あんなことっくれえなんでもねえだよ」 と増さんは云った。   「このおらがおっかあにしたことに比べれば、あんなことっくれえ蜂の頭みてえなもんだ」   「先生は知るめえがね」 と増さんは続けて云った。   「おっかあを跛(びっこ)にしたのはこのおらだ、おらがこの手でやったこった、 この手でおっかあの髪の毛をつかんで、うちの中じゅう引き摺りまわし、   殴ったり蹴...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.25 Thu 22:03

「青べか物語」『 家鴨 (あひる ) 』vol,19/21山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,19/21     平治郎老人の話は以上のものであった。   私は「天鉄」で増さんを見かける度に、段々と親しい気分になり、ちょっと懐に余裕があると、ビール一本とか、酒一本位を奢ったりした。   増さんは悪く遠慮をせず、すなおに喜んで受け、自分の更にある天ぷらを 「摘(つ)まんでくれ」 と云ってすすめたりした。   例の鯊やめごちや車海老などの、頭と尻尾(しっぽ)と骨だけの天ぷらである。   その...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.24 Wed 19:51

「青べか物語」『 家鴨 (あひる ) 』vol,18/21山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介 vol,18/21     相変わらず酒は飲むけれども、増さんは決して酒乱にはならなかったし、喧嘩などもしなかった。   大蝶の工場で雑役のような事をやっているうちに、大蝶の若旦那の口利きで、漁業組合へ勤めるようになった。   もちろん妻に乱暴するなどということは無い。きみのは完全な跛(びっこ)になったため、水汲みや薪’(まき)作り、買い物などは増さんが引き受けた。   そればかりか、前に記したように、銭湯へ...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.08.23 Tue 20:38

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