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JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,17/21 「砂ぐれえが何だ、砂が恐ろしくって海へ行けっか」 と父親は云った、 「喪が明けても砂を撒いたのは、おめえが蹴っぱらってへえって来るのを待て待っていたということだ、そのぐれえの察しはつくべえじゃねえかええ」 五郎さんは黙った。 事情を聞いた父親は、すぐに嫁を捜し始めた。 早くあとを貰って、篠崎を見返してやらなければ、五郎さんばかりでなく「みその」の看板にもかかわる、と思った...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.20 Thu 21:49
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,16/21 五郎さんはなかなか気が付かなかった。 父親の方が先にその噂を聞き、怒って五郎さんを問い詰めた。 五郎さんは余りの事に口が利けなかった。 こんなひどいペテンは「あるだろうか、彼は怒りのために涙をこぼし、恥ずかしさのために吃(ども)りながら「砂のバリケード」のことを父に話した。 「おめえにも肝煎(きもい)るだな」 と温厚な父親は云った、 「そんな砂ぐれえ、一丈も積...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.19 Wed 22:32
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,15/21 この種のゴシップは、どこの土地でも広まりやすい者だが、ことに浦粕ではもっとも歓迎される特報で、たちまちち少年少女のあいだにまで伝わってしまった。 このこまっしゃくれた少年少女たちは、五郎さんの店の前を通る時、声をそろえて喚いた。 「みそのでは幟(のぼり)もおっ立たない」 この町筋の商店は、店の脇にみな幟(のぼり)を立てているが、「みその」は店名を染めたがたん(軒に陽除けのようにおろす幕...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.18 Tue 21:32
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,14/21 五郎さんは答えに困った。 「これってことはなかっただ、あの人もまたこれから嫁にゆくだろうしな、ほんとうにこれっていうほどのことはなかっただよ」 友人たちは代わる代わる訊いたし、いろいろと近所の評をさぐってみたが、それほど骨を折る暇もなく、第一級の情報を掴むことが出来た。 それは、篠崎へ貝を売りに行く女が聞いて来たもので、 ゆい子は五郎さんが男で無かったから帰った、...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.17 Mon 17:19
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,13/21 「そんなあべこべな話は請け合えねえだな。」 と五郎さんの父親は云った。 「家風に合わないとはこっちの云うことだべが、嫁の方から家風に合わない何ぞと云われては筋が立たねえべ、そんな話は真っ平御免蒙(こうむ)るだよ」 仲人はもっともだと合点して帰り、それから数回、両家の間を往復した後、五郎さんの方で「家風に合わないから離縁した」 という名目を立て、正式に離婚が決まると、ゆい子の...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.16 Sun 19:58
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,12/21 主人はいかにもコックらしく、白い上っ張りに前掛、頭にも白い茸形のコック帽をかぶっているし、二人に若い女給もきちんとエプロンを羽織っているという風で、客が酔って騒いだりすると、主人のコックが出て来て摘まみだすと言われ、そのためかどうか、若い衆と云われる人たちは殆どよりつかなかった。 五郎さんはその「四丁目」へ飲みに行き、それからは毎晩、店を閉めるとすぐ飲みに行った。 こういう状態が長く続くものでは...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.15 Sat 21:56
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,11/21 『もう昨日で喪が明けたよ。』 そう云おうと思った。 口まで出かかったのであるが、五郎さんはそれを飲みこんでしまった。 急に【男の意地】といったような、かたくなな気分がこみあげて来、 『勝手にしやがれ、』 と肚(はら)の中で怒鳴った。 『そっちがそうするならこっちもこっちだ、知るもんか』 と彼は肚の中で続けて怒鳴った。 七十七日目の夜も同じ、次の夜...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.14 Fri 22:16
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,10/21 ゆい子は毎晩夜具の周りに砂の垣を作った。 だんだん口数が少なくなり、顔色もさえず、いつもひどく疲れ果てたように、動作がぐったりと重たげに見え、また夜も熟睡が出来ないようであった。 時分でも喪が重荷になって来たんだな。 五郎さんはそう推察し、心の中で、カレンダーがあと三枚になった事を確かめた。 そうしてその三枚目も剥がされて、つまり七十六日目の夜になった時...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.11 Tue 23:50
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,9/21 ゆい子は家事になれない様子で、飯の炊き方もうまくないし、拭き掃除や洗濯なども、時間ばかりかかってとんと片付かなかった。 五郎さんの妹は十二歳になるので、もう男よりもそんなことに眼がつくらしく、父や兄に向って、頻りに兄嫁の批判をした。 「うちの事が出来ないんなら、お店へ出ればいいじゃないの」 と妹は云った。 「どうしてお店へ出さないの、兄ちゃん」 ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.10 Mon 18:58
JUGEMテーマ:日本文学 閉館した水月ホテル鷗外荘が、鷗外ゆかりの根津神社に移転、の記事が『東京新聞』に載った。 「鷗外荘」は何度も訪れ、知友との会食の場にもなった。閉館のニュースでその消失が惜しまれたが、保存、移転が決まったことはまことに喜ばしい。
見る 読む 歩く | 2022.10.10 Mon 10:43
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