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JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,13/21 「おら隣にいただよ」 と平次郎は云った。 「今でも隣だが、その時分も隣にいたからよく知ってるだ、 幾たびか止めに行ったこともあった、何しろ殴ったり蹴ったりする音が筒抜けに聞こえるだからね」 だが平次郎は止めに行くことを止した。 止めに行くとかえって増さんは逆上し、俺に赤恥を書かせたと云って、もっとひどくきみのに暴力を振るうからで...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.19 Fri 22:30
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,12/21 そこで支配人は旦那にそのことを告げた。 すると旦那は、彼奴は俺の命の恩人だから好きな様にさせて置け、と云った。 命の恩人とはどういう訳なのか、旦那はその理由を云わなかったが、支配人は引き下がるより仕方がなかった。 そんなことのあった前後から、増さんの女房いじめが始まった。 結婚の話が出た時、どうして逃げたのか、というのが手を上げる...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.18 Thu 16:43
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,11/21 きみのはどこかの警察に捉(つか)まって保護され、増さんが行って引き取って来た。 二人の結婚生活はごく平凡に過ぎて行った。結婚してからもきみのは大蝶の工場へかよっていたし、増さんも何となく大蝶へ出入りをして、雑役のようなことをしたり、旦那が猟へ行くときは供をした。 平凡な結婚生活は三年ほど続いた。無論その間にも、増さんの行状は変わらなかった。酒を...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.17 Wed 21:25
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,10/21 増さんは二十三の年に結婚した。 相手は貝の缶詰工場で働いていた娘で、名はきみの、年は十八であった。 東北の生まれであるが、両親に死なれたので、浦粕(うらかす)にいる遠い親類が引き取ったのだと言う。 その親類は漁師をしていて、子供が八人もいたため、きみのも十二の年から働かなければならなかったし、また家族の人たちにもあまり厚遇されず、増さんとの結...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.15 Mon 21:34
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,9/21 増さんが葛飾まで通学するはずはないし、そのまま学校へ行かないことが視学関係に嗅ぎ出された場合でも、浦粕(うらかす)校の責任は問われないだろう、という深い思慮によるものであった。 増さんはそれっきり学校をやめたが、通学の船賃だけは貰った。そこの関係はよく分からないが、とにかく六年の卒業期まで、船賃だけはきちんと取り立てたものだ、と平次郎は自分の事のように証言...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.14 Sun 17:23
JUGEMテーマ:歴史小説 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,8/21 増さんは若い時から乱暴で、信じられないほど力が強かった。 十七歳の時、米俵を左右の手に一俵持ったままで、中堀から蒸気河岸まで、息もつかずに走り通したそうである。 性分は短気で飽きっぽく、酒を飲むと喧嘩せずにはいられないし、喧嘩をすればきまって幾人かに怪我をさせた。 小学校も三年きりしか行かなかったが、それは勉強が出来なかっただけ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.13 Sat 16:41
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,7/21 そして、増さんはおっかあの事を決して他人には任せない。 おっかあのどんな親しい者が居て、たまにはあたしが在らってやろうと云っても、増さんはきっぱりと断り、おっかあの体の隅々まで入念に自分の手で洗ってやるのだ、と平次郎は云った。 私は高品さんの炉端でも、増さんの話を持ち出して見た。 高品さんの所ではあまり収穫は無く、  ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.12 Fri 21:58
JUGEMテーマ:日本文学 「季刊文科」にまた連載を始めた。最新の89号は、名作の舞台?石川啄木『雲は天才である』加計呂麻島――?島尾敏雄『出発は遂に訪れず』が載った。 「季刊文科」89号の特集「旅✕文学」の対談で、加計呂麻島が話題に上り、「加計呂麻島に行って、島尾さんの碑の前にある海がものすごくきれいなのが印象に残っています。そうかこういうところでこの人は生きたんだと。僕はミホさんに会うとかでなく、たまたま島を歩いていてるから行ったんですけど、一番浅いところ...
見る 読む 歩く | 2022.08.12 Fri 12:20
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 vol,6/21 「背負っているのはおっかあでね」 と平次郎は云った。 「ああやって背負って行って、着物を脱がして、体をすっかり洗ってやって、綺麗に拭いて、それから着物を着せて、うちまで背負って帰(けえ)るだよ」 私が質問すると、平次郎は大きな眼をそろそろとすぼめ、不思議なことを訊く人間がいるものだ、とでも云いたげな顔つきで私を見た。 「なんでだね...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.11 Thu 16:50
JUGEMテーマ:日本文学 『家鴨(あひる)』全文紹介 vol,5/21 その次に同じような二人と路上で出会った時、女を背負っている彼の後姿を見て、彼の足が涜神的(とくしんてき)にまで蟹股であることと、「天鉄」で魚の頭や尻尾の天ぷらを注文する男であることに気が付いた。 こうして行くたびめかに、私は堀南にある「梅の湯」と言う銭湯をスケッチしていたとき、その女を背負った彼が、「梅の湯」の暖簾をあげ、女湯の方へ入って行くのを見て、ちょっと目をみはった。 ...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.08.10 Wed 19:12
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