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儀式と様式

  さすがに経験を積んだから  「顔を見てやってください」と言われても  さすがに躊躇することはない  はい今回も黄色い  もう生きているのは僅かだから  誰がわたしを埋めるだろう  ハンケチをにぎにぎしながら  未亡人も同じことを考えている  ふと顔を上げると  片手ほどいる参列者が  坊さんの後頭部へ慌てて視線を動かす  彼らのほとんどは視線しか動かせない  白内障の濁った眼球で  脳に繋いだ車椅子を震わせる  読経が途切れた  この型の坊さんはエラ...

bullet proof soul | 2025.11.11 Tue 09:49

K-RYO『非売品』零久舎

 浜松市で開催された再詩丼で購入した。『非売品』だけれど売っていたし、買えた。イベント後に聞いた話では、シンプルな表紙のためテーブルに並んでいた全冊を購入したという来場者もいたらしい。確かに本を買う際に装飾へ金を払うのかそれとも内容へ金を払うのかを客に悩ませる要素がないのはよく考えられたデザインである。 畑に蒔いた肉 何ができるかな 大豆になりますか いいえなりませんでした  「何ができるかな」より。公共広告機構めいたとぼけた感じがあるけれどこの詩集におけることば遊びのあっ...

断食月報 | 2025.08.24 Sun 10:09

広橋山羊「海の湯屋」『観察』パブリック・ブレイン

 『観察』は静岡県三島市のヨット、ことYACHT BOOKSで買った。川口晴美と栫伸太郎の名前を知っていたから手に取ったのだけれど、8月30日に催される本と水辺2025で、波と緯度のひとりとして広橋山羊が出演することをヨットの菅沼さんが教えてくれた。  『観察』は課題詩・自由詩と合評会の2章からできている。「海の湯屋」は自由詩である。 度重なる言葉で口を濯いでも わたしたちの体温同士がまた近くなる いつのまにか日焼けの察知できない跡ができていること  時間の流れが圧縮されて置かれている...

断食月報 | 2025.08.09 Sat 20:06

あなたに似ていく道

JUGEMテーマ:詩   あなたはいつでも 信じてくれた あなたに似ていくことを あなたが下さるすべてのものを 正しく受け入る すなおな心を 私に下さり、 今こそあなたに似ていく 我らの道を 祝福してくださりませ!!   ー2025-8-6、CSW USAで川崎宣子姉の証し、金ドンヨ講師の講義でTMがHTMを私たちに下さったことを講義した内容を話した時

学習帖:いろいろ | 2025.08.07 Thu 13:08

井上尚美「椿をはく人」『穂』第51号

 7月の詩季で酔芙蓉こと鈴木和子さんから詩誌「穂」第51号をいただく。静岡県の女性たちによる詩誌とのこと。田村全子や松本真理子など県の東に住む詩人が多い。  なかでも井上尚美の「椿をはく人」のタイトルと詩の静謐なくくりかたに惹かれた。 この花 空から降ってくるのよ だから 地に着いてもみんな空を仰いでいる 椿についての静かな観察がある。奇を衒うのではなく、椿をじっと写生する視点がある。そして 花をつけ過ぎた椿の古木 はき出したいものもあって 地にかえる花に思いを託すこと...

断食月報 | 2025.08.01 Fri 06:58

風間信子「パンを焼く」静岡新聞2025年7月29日

 静岡新聞7月の読者文芸「詩」の欄は、選者の野村喜和夫によれば自己同一性について、だという。  風間信子の「パンを焼く」は4行目から不穏だ。 おじいさんになってパンを焼く おばあさんになって何もしない 童話風におじいさんとおばあさんを並べながら、わたしの自己同一性が混乱してゆく。 おじいさんとおばあさんが わたしを捜して歩きまわる さらに不穏になる。おじいさんかおばあさんかと思っていたわたしが分裂していた。  そういえばパンは膨らまし粉でふくらむ。そんなパンのように...

断食月報 | 2025.07.29 Tue 20:37

ゆずりはすみれ『花だったころ』田畑書店

 以前に『かんむりをのせる』について「花が多い」と書いたら新しい詩集のタイトルが『花だったころ』である。つららも血も手もレモンも、また花のようにていねいに描く。  「かじつ」にこめられたふたつの意味のあいだを行き来する。  「丘」を読むといつまでも吹く風を、なびきつづける髪をおもう。そういう詩の置き方をしている。でも、やさしく、ただ置くだけではない。 むかし 傷口は光るのだと 書いていた ひとがいた あのひとのことば 膿んだ 光だった  「ひかり」より。刺さる人には寸...

断食月報 | 2025.07.15 Tue 10:24

K-RYO「断食月いろは歌」『断食月』創刊号

 零久舎のK-RYOさんとお会いしたのは2024年8月の詩丼である。詩丼くらいの中小規模の文芸誌販売会やZINE販売会を気に入っておられるようで、再詩丼にも出店登録をいただき、『断食月』にも寄稿してくれた。彼がこなすのはいろは歌である。「いろはにほへとちりぬるを〜」がもっとも流布したいろは歌であろうが、あれを現代でもつくっている人がいるのである。いろは歌については【いろは歌】のレシピやirh48kiz48ページ!を参照して欲しい。  いろは歌も定型詩である。しかも使う文字が48文字、重複なし、と厳格なほどに規定...

断食月報 | 2025.07.15 Tue 08:34

天使が降るとき

  溢れた氷河も噴火して沸騰して  うねる記憶は過去は もういいね  チルったまんまで 再生されるの待ってる  接続される一瞬のラグで酔ったみたいになる  星が降って来るヨ 炎の滝みたいだ  約束の地 約束の痴 約束の血  約束したことだけは覚えてて  やくそくだよ     それは得意なんだバランスが肝心  右手に天国左に地獄そんな綱渡り  みんなサーカスが好き過ぎイカレテル  没入感 だけど身の置き場所が何故か神の眼  途中でマイナーセブンスそういうひ...

bullet proof soul | 2025.07.01 Tue 17:21

岡田かよこ「名知らぬ鳥たち」静岡新聞2025年6月24日

静岡新聞の読者文芸「詩」の欄は野村喜和夫が選者をしている。2025年6月の読者文芸欄に静岡市・葵区の岡田かよこ「名知らぬ鳥たち」が掲載された。 その上を青ざめた鳥が翔ぶ 嘴にひとつ ひとつ 手紙をくわえ いまはXという未知の名に変わってしまったけれどこの青ざめた、青い鳥はTwitterの隠喩ではないかと私は思う。 誰もその鳥たちを糺すことをしないから 平気で海にそれぞれの手紙を落下する 海はTwitterアカウントの、むやみやたらといいねやリツイートをする有象無象のことだろう。Twitterと限...

断食月報 | 2025.06.27 Fri 05:33

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