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JUGEMテーマ:短編小説 最近は「孤族」という言葉が流行りらしく、独身で兄妹もおらず、故郷を離れて一人暮らしの長い私にとっても他人事ではないな、とテレビの特集番組を見ながら考えていた。 そんな時、同じような身の上の学生時代の友人から、ある日珍しくメールが来た。<故郷に帰る事にした。ついては家具や本など、欲しいものがあったら取りに来ないか?何でも持っていっていいぞ。いつでもいいから都合の良い時にでも寄ってくれ> ああ、あいつ、とうとう引き上げるのかと思いながら、休みにでも行くよ、と返信した...
白嘘物語(引越し中) | 2011.11.28 Mon 12:47
JUGEMテーマ:短編小説日常に軽い絶望と、それさえも形骸化させる惰性を抱えて生きている。 そんな時たまたま、あまり話した事の無い同僚と、帰り道が一緒になった。彼女は、「 ありがとう」を一日千回言うと、運が開けるとか言うけれど、ウチら、毎日仕事で死ぬほど言ってるのに、開運した覚えなんかないよね、とか仕事の愚痴を面白おかしく話した。面白い人だった。こんなに面白い人なら、前からもっと話せば良かった。「カルマなんじゃないのぉ?前世で悪い事したせいとか。あと、魂のステージが低いとか若いとか、前に...
白嘘物語(引越し中) | 2011.11.23 Wed 20:56
JUGEMテーマ:短編小説 古本屋で、絶版になっている文庫本を買った。出版社も、とうの昔に潰れている四十年くらい前の本で、ある古典の解説本のようなものだ。日に焼け、表紙もボロボロだったが、その装丁のシンプルな木版画が気に入って買った。まぁジャケ買いってところだな。帰りの地下鉄の中で、パラパラとめくっていたら、一枚の写真が挟まっていた。買った時は気付かなかったが、セピア色に変色した古い写真だった。 本も古ければ写真も古い。 家に帰って、簡単な晩ご飯を済ませ、缶ビール片手に、再びその写真を...
白嘘物語(引越し中) | 2011.11.22 Tue 23:53
JUGEMテーマ:短編小説 旅客船の甲板に立って海を見ている。 空は墨をぼかしたような斑な灰色で、海は熔けた鉛のようにどろりどろりとうねっている。 行き先が分からない。 風に吹かれて行き先の分からない船に乗っているのに、もう飽き飽きした。 私はくるぶしまでかかる長い白いドレスを着ている。その袖は肘まではぴったりしていて、そこから先はフワリと柔らかに広がっている。 風にドレスがひらひらとなびく。ひらひらひらひら。 小男が一人、私の方へ近づいて来た。 「お嬢さん、帽子をおかぶりな...
白嘘物語(引越し中) | 2011.11.22 Tue 17:49
JUGEMテーマ:小説全般 JUGEMテーマ:短編小説高校生の頃、紅葉を見ようと一人で近場の山へハイキングに出掛けた事がある。山の頂上で昼食を済ませた頃までは見事な秋晴れだったのに、その後天候が一気に悪くなり、バラバラとアラレが降り出し、それは間もなく吹雪に変わった。慌てて下山したが、軽装で出掛けたので、僕は寒さに震え上がり、強い風にろくに目も開けていられない有様だった。慣れた山道なのに、ぼくは完全に道を見失った。凍死してしまう…。片手をひさしにして、降りしきる雪を防ぎながら周りを見回すと、一本...
白嘘物語(引越し中) | 2011.11.21 Mon 18:55
JUGEMテーマ:短編小説山を利用した坂道に家並みが綺麗に見える。 車が到着したのは、そんな住宅地の一角だ。 ここへ来るまで 息子には何も話していない。 話せば必ず ”逃げられる” 私には その危機感だけがあった。 その家に入ると、いわゆるリビングに猫が寝そべっていた。 特に変わりのない 普通の家。 「これから 話すことに おかあさんは 聴いていてね。」 私は 黙ってうなずいた。 「不思議空間に 来たと思ってね。」 その家主が話す言葉は 息子には 物語にしか聞こえなかったかもしれない。 昔 中国の王朝。二人の...
シリウスの泉 | 2011.10.15 Sat 18:28
JUGEMテーマ:短編小説「愛の糸」初めから読まれる方は こちらから息子に 足を引っ張られた。眠っていると私を起こし 「兄が・・・」と、言う。いや、おかしい。この子は 関東に出ていて こちらにはめったに帰ってこないはず。では、やはり夢。兄も家を出ている。また、布団に寝ようとしたら また足を引っ張る。それがリアルで 足が痛いくらいだ。目が覚めて 夢と確信してから、二人の息子にメールした。「無事ですか?今、日本のどこにいますか?」兄の方は、すぐに返信があり「日本の東京です」とまじめに帰って来た。かん...
シリウスの泉 | 2011.05.22 Sun 03:15
JUGEMテーマ:短編小説 男が目覚めると ふとんに白い肌の女がいた。 酔っていたのか 記憶がさだかではない。 男は あわてて服を着る。 女は 「待って」と 起き上った。 「まだ 何も。何も 無いのよ。」 男は ほっとした。 「すまない。酔ったいきおいだ。私には 妻が・・・。」 男は そこまで言うと そそくさと服を着て、女の家を出た。 思えば 不思議な話だ。 酔って 暗闇に飲み込まれたような記憶はある。 だが いつ どこで あの女と・・・。 ・・・確か 暗闇に飲み込まれる時 会社の上司と後...
シリウスの泉 | 2011.01.24 Mon 01:28
JUGEMテーマ:短編小説 『愛の糸』 初めから読まれる方は こちらから 家の固定電話が 鳴り 私は受話器をとる。 「サトーだげど」 「佐藤さん? どちらの佐藤さんですか?」 「んだがら、お宅の長男に子供 生まれたべ?その相手の・・・」 「え?」 私は 振り返って 子供の相手をしている 長男を見る。 「あの・・・おとうさま ですか?」 「そんな たいそうなもんじゃねぇ。子供、男の子だべ」 「はい、そうですが・・・。」 長男が突然女性を連れて帰って来たのは つい数日前。 仕事は?と いう疑問の...
シリウスの泉 | 2010.05.25 Tue 23:02
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