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近所に羊を飼っている人がいて、時々散歩をさせているところを見かける。 羊は大きくムクムクとして目付きが悪く、密集したその白い毛は、まだらに灰色にくすみ、あんまり可愛くなかった。 その首には大型犬に付けるような首輪がゆるく巻かれ、土佐犬でも引きそうな紅白の太い組紐のような綱に繋がっていた。その綱を握っているのは、グレーの作業着の上下を着たおじいさんで、こちらも目付きが悪く無表情に羊を連れて歩いている。 散歩はゆっくりで、しょっちゅう立ち止まっては、路上にわずかに生えている雑草を根こそぎ食べて...
白嘘物語‐つくもうそ物語 | 2011.12.25 Sun 18:32
俺は子供の頃から色々視える体質なのだが、慣れてしまったせいか性格か、視える物が怖いと思った事はない。視えるってのは、この世の物ではない何かの事だ。 怖くはないが、関わり合いになるとメンドクサイので、大抵は見て見ぬ振りをしている。だから幽霊屋敷探検なんてした事はない。そういう物を好き好んで探 りたがるオカルト好きと付き合うのもイヤだが、自分の理解出来ないものを矢鱈と怖がってキャーキャー騒ぐ連中も好きじゃない。 俺の友達の中で一人、面白い奴がいた。研究家体質で実証主義な奴だ。 深夜、飲んだ...
白嘘物語‐つくもうそ物語 | 2011.12.23 Fri 22:14
私は骨董市やフリーマーケットを見て回るのが好きだ。 高いものは無理だけれど、千円程度のアクセサリーや小物などを買って帰る事が多い。そういったものが手元に溜まってくると、今度はそれらを自分でフリーマーケットなどに出店して販売するのだ。 売るときは買ったときより、少し値段を上乗せしている。 だって、出店料を支払う事を考えたら、そうでもしないと赤字になってしまうのだもの。そんなに商売っ気があるわけじゃないけど、店を出すからには黒字にしたいじゃない。 さて、今年もお祭りの季節がやってきた...
白嘘物語‐つくもうそ物語 | 2011.12.22 Thu 21:33
結婚が決まった時、どこから噂を聞いたのか少しの間だけお付き合いのあった男性から馴染みの喫茶店に呼び出された。彼は以前よりやつれ、ふわふわした浮世離れした表情で「お祝いを渡したかった」と私に黒い小箱をくれた。そして弱々しく笑うと、またふわふわと漂うように席を立った。あっけに取られてドアを出てゆく彼の後ろ姿を見送っていたが、気を取り直して黒塗りの小箱を開けてみると、黒ビロードの上に丸い輝石が二つ付いた銀の指環が納められていた。石の一つは絹の様な純白の真珠で、もう一つは柘榴色の赤い珠である。どうし...
白嘘物語‐つくもうそ物語 | 2011.12.21 Wed 23:31
子供の頃、近所にお化け屋敷と呼ばれる、無人の洋館が在ったんだ。 誰も住まなくなって何年経っていたのか分からないが、とにかくお化けが出るという噂があり、怖がりの子供などは、その家の前を通るのさえ嫌がるほどオドロオドロシイ建物だった。 僕が五年生の学校が休みの日の事だ。友達三人と、そのお化け屋敷探検を決行した事がある。今、思うと大変な事をしたと思うのだが、かなり荒っぽいやり方で、僕らはその家に侵入したのだ。 その家の正面玄関は、ガッチリした木製のドアだったのだが、裏口はごく普通の日本家屋に有りが...
白嘘物語‐つくもうそ物語 | 2011.12.19 Mon 21:26
マンションの居間に、高さ2メートルほどのクリスマス・ツリーを飾っている。ブルー、レッド、ホワイトの電飾がゆっくりと点滅してキレイ。星や天使や、ガラスのオーナメントが灯りを反射し、キラキラと輝いている。子供が出来ても、歳を取っても、ずっと飾れるようにと、ちょっと奮発して買ったお気に入りのツリーとオーナメントだ。年に一週間くらいしか飾らないけれど、眺めているだけでしっとりと幸せな気持ちになる。悩みも不安もどこかに置いておいて、ただじっと美しいツリーを眺める時間が好きだ。玄関のドアがガチャリと音を...
白嘘物語‐つくもうそ物語(引越し中) | 2011.12.09 Fri 19:23
O町は人口二千人の小さな田舎町だ。昭和四十年代までは炭鉱で栄えていた。 ドミノのように等間隔に建てられた画一的な石炭会社の宿舎には、全盛時、溢れるほどの従業員が住んでいたが、廃坑に伴い人々は町を捨て、人口はあっという間に半分に減った。 住む者がいなくなった途端、玄関や窓に板を打ち付けられた件の官舎は、風雪にさらされ数年で白っ茶けた廃屋に変わる。そして、町は眠ったように静かになった。 こんなゴーストタウンのような町にも駐在所がある。 年配の気のいいお巡りさんが勤務しているが、老人ばかり...
白嘘物語‐つくもうそ物語(引越し中) | 2011.12.06 Tue 20:24
ぼくはクリストファー。ママと二人で古いアパートのニ階に住んでいる。ママはアーティストだから、家の中はすごく変わってて面白いんだ。ぼくにも大人になったらクリエイティブな仕事をしろって言う。でも、ぼくは弁護士になりたいんだよね。今日の夜、家でパーティをやるんだって。気が乗らないけど、早く帰ってお手伝いするんだ。 「家へ帰ろう」【二版】より JUGEMテーマ:陶芸 JUGEMテーマ:短編小説
白嘘物語‐つくもうそ物語(引越し中) | 2011.12.04 Sun 19:05
見知らぬ街を、地図一枚頼りに歩いている。 ははぁ、この真っすぐな広い坂道を一番上まで登ればいいのだな。 だだっ広く乾燥している坂道は、最初は緩やかな傾斜だったのに、進むにつれ段々勾配がきつくなり、しまいには地面にへばりついて歩かざるを得ないような急傾斜になってきた。 もう、へとへとだ。坂の頂上はまるで見えない。ピーカンに晴れた青空が恨めしい。 上から乗用車が転がり落ちるように坂を下ってくる。おいおい、タイヤが宙に浮いてるよ。 もう立っていられない。両手両足を使って、ロッククライミング状態で...
白嘘物語‐つくもうそ物語(引越し中) | 2011.12.03 Sat 22:33
JUGEMテーマ:短編小説赤い煉瓦造りの小ぎれいなビルヂングです。三階建てでね。入口の左側には輸入商会、右側にはテーラーが入っています。ええ、男性服も女性服も取り扱っているようですねぇ。入口のガラスのドアの向こうに階段があります。石造りのね、どっしりした造りです。建てたのは、どこぞの子爵のご子息でして、ああ、まぁそれはどうでも良い事でした。階段を上がった二階には事務所が入っています。普通のね。 三階まで登ると、廊下の右側に曇りガラスの嵌ったドアがあります。そのガラスに書いてあります。「探偵事...
白嘘物語(引越し中) | 2011.11.28 Mon 20:39
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