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JUGEMテーマ:ものがたり その湖は真空よりも澄んでいた。そこに液体が満たされているということが、信じがたいほどに。しかしそれは確かに湖なのだ。指先を近づけてみるとそこには水面があり、手を浸してみると清廉な冷ややかさを感じた。湖の底には、樹木がいくつか横たわっている。この湖を取り囲む樹木が没したものなのだろう。しかしその樹木は全て紅玉のような赤い輝きを、赤く妖しい輝きを放っている。その質感も植物のそれではなく、もっと硬質なものに見えた。この湖は、植物を宝石に変えるスキルを持って...
pale asymmetry | 2019.06.14 Fri 20:30
JUGEMテーマ:ものがたり 太陽は丁度真上にあって、降りそそぐ陽光はフラクタルな構造を見せていた。真東から吹く微風は、風だから当然透明だったけれど、どこか浮世絵の波のように躍動していると思わされた。思わされたと言うからにはそれは誰か私以外の他者に思わされたということであるはずだけど、実際のところはそうではなく、私の脳回路にそう思わされたということなのだ。それくらい、私の脳回路は私自身と距離を保っているわけで、ところでこの場合の私自身とは何だろうか。私の肉体か。それとも心かな。心...
pale asymmetry | 2019.06.12 Wed 21:45
JUGEMテーマ:ものがたり 急勾配の下り坂は、真っ直ぐに海へと繋がっている。黒猫とその背にしがみつく錦の輝きが、しなやかなスピードで坂を下っていく。雲一つない空は青い色彩よりも銀色の煌めきの方が強く、波一つない海も青い色彩より銀色の乱反射の方が断然に強い。風景が銀河に満たされていることを私は感じた。湿った風を感じながら、それでも宇宙を旅している気分になる。 黒猫は恒星間天体だろうか。錦の輝きはそこに着陸した探査機か。すると私たちはそれらをモニターする管制室。実際に宇宙に出て...
pale asymmetry | 2019.06.10 Mon 22:26
JUGEMテーマ:ものがたり 「ニャニャーゴ、ニャー」 錦に輝きながら、漂着者は鳴き続ける。けれどタクソンの方は直ぐに鳴かなくなり、何度か首を傾げ、さらにはその仕草さえしなくなって、ただじっと漂着者を見つめるだけになった。漂着者の方はその反応に慌てるように、鳴くことよりも身振り手振りのジェスチャーが多くなり、激しく手足を動かし出した。それでも、タクソンの反応は薄かった。時折首を傾げ、戸惑っているように見えた。 「これ、会話が成立しなくなっているような気がするけど」 撮影を...
pale asymmetry | 2019.06.09 Sun 22:06
JUGEMテーマ:ものがたり 「黒猫のタクソン♪ タクソン、タクソン♪ 僕の恋人は黒い猫♪」 丸丸と太った黒猫を胸に抱き、ウルシハラ君は適当に歌いながら解剖室を覗きこんでいる。銀縁メガネの奥の瞳は、愉しそうに笑っている。 「土偶だ。確かに土偶だね」 呟きながら、硝子扉越しにミクリヤ君はスマートフォンでずっと撮影している。黒縁メガネ奥は、とても真剣な眼差し。 「取りあえず入って捕獲しようぜ」 硝子面におでこを付け、ジョウガサキ君は扉を開きたくてウズウズしている様子。メタ...
pale asymmetry | 2019.06.08 Sat 20:32
JUGEMテーマ:ものがたり 「最初に言っておくが、先程イタチザメと言ったけどあれは実は正確ではない。形態はイタチザメと非常に似ているが、細かな部分に相違点がいくつかある。イタチザメと同定するためにはDNAを解析するしかないから、今のところはイタチザメ近似種と訂正しておく。もっとも解析の結果イタチザメではないとなるかもしれない。つまり新種のサメの可能性もあるということだ」 解剖室の硝子扉の前で、ワタヤ博士は立ち止まる。扉を開くことなく、室内を指差す。 「しかしながら、そんなこと...
pale asymmetry | 2019.06.07 Fri 21:11
JUGEMテーマ:ものがたり セミナー用の資料を取りに、研究棟まで足を運ぶ。本館からは徒歩約十五分。全て昇りの道なので、皆は車かモーターサイクルを使うけれど、私は歩いていくのが好きだった。確かに日差しの強い日はきついけれど、帰りは当然のことながら全て下り坂で、正面に海が広がる風景が、空の青と海の青が鬩ぎ合っている風景が、私は大好きなのだ。熱くゆるい風が時間を沈めるような感じや、空と海の煌めきが妖精のようにはしゃぐ感じを眺めて歩くのが気持ちよかったから。 研究棟に着くと、入口の...
pale asymmetry | 2019.06.06 Thu 21:16
JUGEMテーマ:ものがたり 五感は絡まり合い、最早匂いが見え、音に触れられ、光景を嗅ぎ取り、気流の味を食せるようになっているような気さえしていた。いったいどのくらい歩いたのか、憶えてはいなかった。若き僧侶は僧正から口頭で伝えられた道筋を、長く複雑な道筋を、なくさないように何度も何度も唱えながら、歩みを進めてきたのだった。そうして道が確かになればなるほど、自身の心持ちがどんどん不確かになっていった。自分は大切な何かを踏み外したのではないだろうか。とそんなことを思い始めたときに、よ...
pale asymmetry | 2019.06.05 Wed 22:07
JUGEMテーマ:ものがたり 心が疲れてしまったときには、縁側で昼寝することにしている。ふかふかのクッションに上半身を沈めて、庭をぼんやりと眺めながら。風が南から吹いている。南からの風は、縁側には流れ込まない。庭の端々の葉を揺らすだけだ。それでもその南風が心地よかった。その風は庭と縁側を取り囲んで大きな渦を形成し、おおらかに上昇している。昇華しているのかもしれない。並行世界を跨いで旅をする蝙蝠のようなものに。 スパイシーで甘味もある香が、私を抱きしめるように漂ってくる。南風が...
pale asymmetry | 2019.05.17 Fri 21:10
JUGEMテーマ:ものがたり 椅子を作るのが趣味だ。暇さえあれば作っている。いや、暇がなくても、眠る時間を削ってでも作っている。あるいはある種の依存症かもしれない、と思えるほどに私は椅子を作っている。もうどれくらい作っただろうか。正確に数えたことはないが、100個は越えているだろう。椅子だから100脚と言いたい所だが、脚があるとは限らない。同じ意味で台という数え方も使えない。そういうヘンテコな形の椅子を作り続けている。 形だけではない。大きさも様々だ。小さいものは米粒大位で、大きな...
pale asymmetry | 2019.05.16 Thu 20:27
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