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JUGEMテーマ:ものがたり 月を眺めていた。滴るように朱く輝く十六夜の月を。夜気は重く冷たく、私はたんまりと着込んで縁側に腰掛けていた。星たちを掻き消すほど月は明るく、もし今風景の端っこで雨が降れば、くっきりとした夜虹を見ることも出来るだろうと思えるほどだった。その虹の赤も、きっと滴るようないやらしい赤なのだろうなと考えたりした。 梟の声が聞こえる。思慮深く呪文を唱えるような声が。風のない今夜、その声は真っ直ぐに天上へと昇っていくように思えた。あとから思えば、いろいろなもの...
pale asymmetry | 2018.11.24 Sat 21:12
JUGEMテーマ:ものがたり 山高帽の紳士は、ダブルのダークスーツで闊歩する。上品なヴァイオレットのタイをセミウインザーノットに締め、美しいディンプルを形づくることも忘れない。ベルトは使わずサスペンダーでズボンをつり、ピカピカのステッキで独特のリズムを刻んでいたりする。急加速したり急減速したり、歩くスピードは目まぐるしく変化する。そして時々立ち止まり、山高帽の鍔を軽くつまんで空を見つめる。その日の空は全体が薄曇りで、聡明な青は見つけられなかった。 「小生は、このような空も気に入...
pale asymmetry | 2018.11.14 Wed 20:17
JUGEMテーマ:ものがたり 未明に雨が降った。私を眠りから揺り戻す雨が。がむしゃらな雨で、雷鳴が響き、稲光が世界に亀裂を走らせる。風は南から疾走していた。裏庭に面した縁側に出て、私は夜にも朝にも距離がある風景を眺める。縁側は北に面していたので、雨に濡れることはなかった。軒先に吊している珊瑚片も沈黙している。雷鳴に共振することもなく。繭に守られているような気分で、時折発光する風を、その光を纏う雨たちを、私はそっと見つめて過ごす。縁側に腰を下ろし、やがてそこに寝転がったりして。 ...
pale asymmetry | 2018.11.13 Tue 21:03
JUGEMテーマ:ものがたり 悪魔のような大樹たちが、何かを食い荒らしたあとだった。それは人工的な何かで、つまり遠い昔に人間が造った何かで、たぶんそれも巨大な何かであっただろうけれど、今は細かな残骸しか残っていない。だから少年には、その人工物がどの様な姿をしていたのかは解らなかったし、想像することも難しかった。ただ大樹と混ざり合っている今の姿は、少年にはとてもグロテスクだと思えた。それ故に、とても綺麗だとも思えた。 大樹たちの足下を擦り抜け少年が進むと、そこに卵があった。大樹...
pale asymmetry | 2018.11.11 Sun 21:41
JUGEMテーマ:ものがたり その椅子の脇にはモニタが沈んでいて、79°Fと表示されている。きっと華氏だろう。どうやって摂氏に換算したらいいのか解らなかったので、水温はよく解らない。水はひんやりとしていたけれど、寒くはなかった。椅子はアルミニウムのような金属に思われ、パーツを接合したような箇所は見当たらない。今にも羽ばたいて飛び立ちそうなデザインだったが、その椅子ももちろん沈んでいた。 水槽は細長い立方体で、四方が全て灰色の壁だった。大量の光で隅々まで照らされたその壁に、無数...
pale asymmetry | 2018.11.07 Wed 20:48
JUGEMテーマ:ものがたり 生命であろうと非生命であろうと、活動すれば自ずと熱を発するものだろう。熱を発することで、この世界に介入し世界の漕ぎ手の一人として振る舞うことが出来るのだろう。反面、熱を発することで知性を消費し、それまでに記述された記号をも蒸発させることになる。それでも、多くの生命も多くの非生命も、熱を発せずにはいられないもののようだ。 最初の目撃談は、馬だった。四肢の図太い大きな馬だったという。全身が淡く緑がかった白色で、鬣の部分が燃え上がっていたとい...
pale asymmetry | 2018.11.06 Tue 21:27
JUGEMテーマ:ものがたり 少年たちは、まずゲンをねる。ゲンとは泥団子の表面に小石を散りばめて紋様を纏わせたものだ。少年たち一人一人でその紋様は異なり、それらは代々、年長の兄さま方から年少の童子たちに受け継がれていく。紋様を持たないものは、仲間に入ることが出来ない。 ゲンがねり上がると、それを地面に円陣のように並べて、少年たちはそこから地面に幾何学模様を描き拡げていく。その模様も受け継がれたものだ。広い空き地の地面が幾何学模様で埋め尽くされると、ようやく遊戯が始まる。 ...
pale asymmetry | 2018.10.17 Wed 20:29
JUGEMテーマ:ものがたり 言の葉とは、その文字が示す通り葉なのだから、光を吸収し水を吸収するものだろう。そしてそれらを内部で咀嚼して、微かな気流として吐き出すものだろう。内部とはすなわち宇宙だろうから、そこには多彩な色が大きな躍動で熱を放っているだろう。しかしながら空間がとても冷えているので、その熱は表面まで伝わることはないのだろう。だから、外からも色を纏おうとするのかもしれない。言の葉の言とは、その色を呼び寄せるための術なのだと思う。 ハンと出会ったのは、秋の...
pale asymmetry | 2018.10.16 Tue 22:06
JUGEMテーマ:ものがたり カラリンカラリンと裏庭の何処かから音が聞こえる。音源は、たぶんとても小さな存在なのだろうと推測できるような音が。私は耳を傾ける。木製のサイコロが二つほど、金属製のカップの中で転がり回っているような音だった。しかしそれが妙に心地よい響きで、しかもやわらかく綺麗な響きだった。 私は縁側から庭に降り、音の方へと近づいてみる。庭の隅で、音源はすぐに見つかった。それは最初ビー玉に見えた。瑠璃色のビー玉で、直径は二センチくらい。しかしその材質はガラスではなく...
pale asymmetry | 2018.10.14 Sun 20:36
JUGEMテーマ:ものがたり 二人の少女が歩いている。しっかりと手を繋いで、クククッと笑い合いながら。周りは一面白詰草の草原。無邪気な白を纏った花が咲き乱れている。少女たちの背中には小さな羽。それは紙の羽。白詰草の花と同じ、無邪気な白の羽だった。 紙の羽は風に吹かれて細かく揺れる。羽が揺れるたびに、少女たちはクククッと笑う。羽が揺れるたびに、少女たちの間を行き来する粒子があって、それが少女たちを笑わせているようだ。その粒子が、少女たちの神経網を疾走して、きっと少女たちを内側か...
pale asymmetry | 2018.10.13 Sat 22:02
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