[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ものがたり 「私、胃の中に砂糖蛙を飼っているんです」 カウンター席で、先輩の向こうに座る蛙女が言う。彼女自身が蛙女と呼んで下さいと自己紹介したのだ。たまたまバーのカウンター席で僕と先輩が飲んでいるところにやって来た蛙女と、何となく親しくなりそんな自己紹介をされたのだった。 「勝負しませんか」 そう言ったのは蛙女からだっただろうか。それとも先輩からだっただろうか。あるいはどちらも明確に言葉にしたわけではなかったけれど、いつの間にかそういう雰囲気になったのか...
pale asymmetry | 2024.09.30 Mon 21:15
JUGEMテーマ:ものがたり 肺呼吸する機械が湖に沈んでから、四半世紀が経っている。その瞬間を僕は見ていない。僕が生まれる前の出来事だからだ。肺呼吸する機械は溺死の夢に取り憑かれて、湖に足を踏み入れたのだという。もっとも、肺呼吸する機械は脚を有してはいなかったからこの表現は正確さに欠けるかもしれない。肺呼吸する機械の下半身にはキャタピラが装備されていて、スラスターによってごく短時間なら飛翔することも出来たのだという。翼を持っていなかったので、その飛翔はとてもよちよちした感じだった...
pale asymmetry | 2024.09.13 Fri 19:10
JUGEMテーマ:ものがたり ・「双子の聖女は運命を入れ替える」の第93回です。 他のページはコチラ→双子の聖女は運命を入れ替える1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/14/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32/33/34/35/36/37/38/39/40/41/42/43/44/45/46/47/48/49/50/51/52/53/54/55/56/57/58/59/60/61/62/63/64/65/66/67/68/69/70/71/72/73/74/75/76/77/78/79/80/81/82/83/84/85/86/87/...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2024.09.09 Mon 21:26
JUGEMテーマ:ものがたり 曾祖母は昔生け贄だったのだそうだ。どういう類いの生け贄だったのか、生け贄であったのにどうして九十五歳まで長生きすることになったのか、その辺りの事情は誰も知らない。もちろん知っている人はかつてはいたのだろうけど、そういう人たちは皆もうこの世にはいないのだった。そして曾祖母はその辺りのいきさつを語ることはなかった。祖母や母や私も何度か尋ねたことがあったけれど、決して語ることはなかった。語りたくないほどに辛い物語なのか、それとも単に忘れてしまったのか解らな...
pale asymmetry | 2024.09.08 Sun 19:10
JUGEMテーマ:ものがたり 「花が開くように、両手を翳すのが重要なのですよ」 先生はそう言いながら両手を天に向かって伸ばしました。両手の指がささやかな風と戯れるようにやわらかく曲がっていて、それは楽園に咲き開く花のようでした。陽光を浴びて七色に輝く花のようでした。そういう花が楽園には咲いているのだと、以前先生が言っていたのでその花が見えたのかもしれません。 「こうして回せば、綺麗な円が描けるのですよ」 先生はその花を、いいえその両手を、陽光を絡め取るように踊らせました。...
pale asymmetry | 2024.08.28 Wed 20:44
JUGEMテーマ:ものがたり 水面のすぐ下を漂うチョウザメは、未来の夢を見ていた。そこに自身はいない。けれどその世界に自身の欠片が、無数の欠片が遍在している。その世界にある全ての事象に欠片は宿り、その全ての事象を踊らせる。そんな夢だった。その夢は黄金だった。満月の月光を浴びていたからかもしれない。そして黄金の夢が、チョウザメの身体を黄金色に輝かせていた。月光は熱を持たない黄金だったけれど、チョウザメは熱を有する黄金だった。大河の流れはゆるやかで、その黄金の輝きはその流れに滲み出て...
pale asymmetry | 2024.08.21 Wed 18:42
JUGEMテーマ:ものがたり 「所謂奇祭と呼べるようなものだと思います」 名も知らぬ男が言う。人懐っこい笑顔で。今夜あったばかりの男。居酒屋のカウンター席で隣に座った男。きっかけは忘れてしまったけれど、何かの拍子に会話が始まり、そしてそんなことを言い始めたのだった。 「私の郷里なんですが、南の方の島なんです。そこにある昔からの祭りです」 男はジョッキを傾けながら話す。私もジョッキと耳を傾ける。 「どんな祭りなんです?」 男は牛すじ肉を咀嚼しながら考えを纏めるように宙...
pale asymmetry | 2024.08.10 Sat 19:15
あの奇妙で不可思議なトンネルを見つけた日のことを、私は今でも覚えている。 それは大学の図書館からの帰り道、いつもと変わらない水曜日の午後だった。空は深い藍色で、太陽はニューエデンにそびえ立つ高層ビル群の後ろに隠れていた。 5番街に差し掛かったとき、私はそれに気がついた。狭くて目立たないトンネルが、突然何もないところから現れたように見えた。入口は周囲の建物に完全に馴染んでいて、考え事をしていれば見過ごしていたかもしれなかった。 トンネルに近づくと、背筋に寒気が走った。周囲の空気が冷たく...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.07.13 Sat 20:08
私は毎日同じ道を通って帰る。いつもと変わらない灰色のコンクリートの壁に囲まれた地下道を抜けて、慣れ親しんだ街並みへと続く道筋だ。 しかし、その日は違った。 暗闇の中に佇む入り口を見つけたのは、ほんの偶然だった。普段なら気にも留めない隙間が、今日に限って妙に目を引く。好奇心に駆られ、私は足を踏み入れた。 「へえ、こんなところに隠し通路があったとはね」 仄かに光る通路を不思議に思いながらも進むと、その奥に予想外の光景が広がっていた。無数の鏡が壁一面を覆い、天井から吊るされた幻想的な照明...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.07.10 Wed 22:20
夜の町を歩きながら、僕はふと空を見上げた。夜空を舞い踊る蛾に目がいく。 その小さな生き物が、幻想的な光を放っているように見えたからだ。 「はぁ、僕にも羽があれば、あんな風に自由に空を飛べるのにな」 そんな夢のようなことを考えていた時、ふと不可解な存在に気がついた。そこには、ちらちらと路地の陰から顔を覗かせる、翅(はね)があって人の形をした、十センチくらいのとても小さな何かがいた。 それは、大人の目には映らないと言われている妖精のように見えた。その桃色に輝く姿が路地から見え隠れしている...
ひっそりコッソリやるブログ | 2024.07.09 Tue 00:57
全1000件中 1 - 10 件表示 (1/100 ページ)