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「小説」はなんとなく堅苦しい。
もっと気軽に、じゆうな感性で楽しんでほしい。
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永遠の反響

 あの奇妙で不可思議なトンネルを見つけた日のことを、私は今でも覚えている。  それは大学の図書館からの帰り道、いつもと変わらない水曜日の午後だった。空は深い藍色で、太陽はニューエデンにそびえ立つ高層ビル群の後ろに隠れていた。  5番街に差し掛かったとき、私はそれに気がついた。狭くて目立たないトンネルが、突然何もないところから現れたように見えた。入口は周囲の建物に完全に馴染んでいて、考え事をしていれば見過ごしていたかもしれなかった。  トンネルに近づくと、背筋に寒気が走った。周囲の空気が冷たく...

ひっそりコッソリやるブログ | 2024.07.13 Sat 20:08

時空回廊の秘密

 私は毎日同じ道を通って帰る。いつもと変わらない灰色のコンクリートの壁に囲まれた地下道を抜けて、慣れ親しんだ街並みへと続く道筋だ。  しかし、その日は違った。  暗闇の中に佇む入り口を見つけたのは、ほんの偶然だった。普段なら気にも留めない隙間が、今日に限って妙に目を引く。好奇心に駆られ、私は足を踏み入れた。 「へえ、こんなところに隠し通路があったとはね」  仄かに光る通路を不思議に思いながらも進むと、その奥に予想外の光景が広がっていた。無数の鏡が壁一面を覆い、天井から吊るされた幻想的な照明...

ひっそりコッソリやるブログ | 2024.07.10 Wed 22:20

いたずら妖精と探偵

 夜の町を歩きながら、僕はふと空を見上げた。夜空を舞い踊る蛾に目がいく。  その小さな生き物が、幻想的な光を放っているように見えたからだ。 「はぁ、僕にも羽があれば、あんな風に自由に空を飛べるのにな」  そんな夢のようなことを考えていた時、ふと不可解な存在に気がついた。そこには、ちらちらと路地の陰から顔を覗かせる、翅(はね)があって人の形をした、十センチくらいのとても小さな何かがいた。  それは、大人の目には映らないと言われている妖精のように見えた。その桃色に輝く姿が路地から見え隠れしている...

ひっそりコッソリやるブログ | 2024.07.09 Tue 00:57

たまゆらせつな #α.1.3

JUGEMテーマ:ものがたり   「あなたのお洋服、とても良いわね」  仮面の人物の囁きが、少女の四肢の力を奪った。 「きっとサイズが合わないわ」  少女は微かな声を発した。声量を上げる力さえ奪われていたのだった。血流の流れも奪われているような気がしたし、鼓動の刻みも奪われているような気がした。もっと深い領域の、魂の色彩さえ奪われているようにも思えた。 「あら、大丈夫よ。あたしはあらゆる者と、あらゆる事象とまぐわくことが出来るのよ」  そう言っている内に、仮面の人物の身体が変...

pale asymmetry | 2024.06.29 Sat 21:48

たまゆらせつな #α.1.2

JUGEMテーマ:ものがたり   「ヒナ? ヘリオの縁者はそんな名前ではなかったはずよ」  仮面の人物は、少女の反応を面白がっているようだった。 「私は偽の本当よ。本当の偽はジジとゼゼよ」  少女は少し目を伏せ肩を竦めた。凶暴な笑顔を並べる一卵性双生児の姿が浮かび、思わず溜息が零れた。けれどその息は温く湿っていて恍惚に傾く吐息のようでもあった。そんな息を零してしまった自身を、少女は恥ずかしく思う。それを仮面の人物に悟られまいと、少女はウサギの仮面を睨んだ。 「あなたは、大叔父様...

pale asymmetry | 2024.06.27 Thu 21:35

たまゆらせつな #α.1.1

JUGEMテーマ:ものがたり    黎明の陽光は世界の終わりとよく似ている。黎明の東風は世界の悪意とよく似ている。そんなことを考えながら、少女は螺旋階段を下りていく。赤銅色の螺旋階段は、殉教を強いているのではと思えるくらい長い。楽園と地獄を結んでいるのかしらと、少女はふと思う。けれどすぐに楽園と地獄は同じだから結ばれる必要などないのだったと思い直した。その二つは常に背中合わせの双面体だ。それに実際に結んでいるのは庭と砂浜だった。大叔父様の洋館の簡素な裏庭と、そこから十数メートル下方にあ...

pale asymmetry | 2024.06.25 Tue 21:37

Street tree reading aloud

JUGEMテーマ:ものがたり    ドラッグを噛み砕きながら、彼女は街路を歩く。行き先は定まっているようないないような。車道は大勢の人々で埋め尽くされていて、プラカードを掲げたその人たちは、彼女に馴染みのない言語で口々に叫んでいた。ところどころ聞き取れる単語を無理矢理繋ぎ合わせると、その人たちは高次知性体に自分たちのフォーマットの書き換えを要求しているようだ。だけどそんな要求は彼女にはナンセンスだと思えた。高次知性体はフォーマットという概念を有していない。だからそれについて要求したとこ...

pale asymmetry | 2024.06.19 Wed 19:14

Butterfly Labyrinth

JUGEMテーマ:ものがたり    シャワーがまじないを唱えていることを知る人は意外と少ないのではないでしょうか。噴き出し流れ落ちる滴の一滴一滴がまじないを唱えているのです。それは呪いを解くまじない。呪いとまじないは同じだから、それぞれがそれぞれを反転させることも容易く出来るのです。さて、その水滴の群を浴びるとどうなるか。皮膚に纏わり付く呪いが解かれたりするのか、あるいは呪いは皮膚の面にあるわけではなく宙を漂っていて、それを無効化して皮膚の面を滑らせているのか。皮膚の面を滑らせるこ...

pale asymmetry | 2024.06.18 Tue 18:07

ディメンションの彼方

 私は16歳で名前はリョウ。そう、決して変わった名前ではない。ただ、私の住む世界は、あなたがたの知る地球とはかなり異なる場所なのだ。  太陽の光が血のように濃い朱色をしているのがまず特徴的だ。そしてこの世界の大気組成は、あなたがたの世界とはまるで違う。ひょっとしたら、最初に目にした時は恐ろしく感じるかもしれない。  だが私はもうこの空気に慣れっこだ。口から皮膜が出て呼吸をするシステムが当たり前になっているのだから。 「リョウ、今日の研究室はどうするんだ?」  隣りの友人タクミが、パイプから出た...

ひっそりコッソリやるブログ | 2024.06.15 Sat 18:11

時計の針は知っていた

 僕は16歳の普通の高校生だった。名前は慎也。日常はいつも通りの学校生活、友達との雑談、テストの緊張感に包まれている。しかし、ある日の放課後を境に、僕の日常は突如として変わり始めた。 「慎也、これ見てよ。古い時計だけど、なんか変だよね」  一週間前に転校してきて友達になったばかりの春人が、校舎裏で拾ったという時計を差し出した。それは古びた懐中時計で、針が反対向きに動いていた。 「おかしいな、壊れてるのかな?」  僕は首を傾げながら時計を覗き込んだ。 「時計の針を進めてみようよ」  春人は意味...

ひっそりコッソリやるブログ | 2024.06.15 Sat 18:07

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